〈来栖の独白2015/10/16 Fri. 〉
本日は名古屋能楽堂。
黄昏時の地下鉄市役所駅からお城の方角へ歩き始めると、見知らぬ御婦人から声を掛けられた。和服姿だったためか「能楽堂へ行かれるのですか」。同道され、「あれ、からたちの実ですよ」と、御堀端の木の実を指差される。目をやれば、お堀に沿ってからたちが植わっており、思いのほか大きな黄色い実が見えた。鋭い棘も。・・・北原白秋の「からたちの花」のメロディが聴こえるようだった。
夜6時半、開演。
狂言『狐塚』も、能『藤戸』も、私の心理状態がよくなかったのか、精彩を欠いて見えた。特に『藤戸』。ワキの衣装(梨打烏帽子・直垂上下)だが、恩賞として児島一国を賜った武将にしては華やかさもなく、古着めいてがっかりした。鶴の模様は、見えたけれども。
ただ、シテ衣斐正宜さんは、前も後も秀逸。小柄でいらっしゃるから、成人した最愛の息子を亡くした(殺された)老婆の頼りなさ、哀れが胸に響いた。その老婆が佐々木盛綱に向かってゆく。ならば、盛綱もこの哀れな母に応えないわけにはゆくまい。良い話である。
この曲は前シテと後シテが別の人物。前シテは母親であり、後シテは殺された漁夫(息子)の亡霊である。もし前も後もシテが同人物であるなら、これは常の夢幻能であるが、別の人物とすることで、曲に膨らみを生んでいる。
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「からたちの花」
からたちの花が咲いたよ。
白い白い花が咲いたよ。
からたちのとげはいたいよ。
青い青い針のとげだよ。
からたちも秋はみのるよ。
まろいまろい金のたまだよ。
からたちのそばで泣いたよ。
みんなみんなやさしかったよ。
からたちの花が咲いたよ。
白い白い花が咲いたよ。
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◇ 能 藤戸
名古屋能楽堂十月定例公演
*公演日時 2015年10月16日 18:00開場 18:30開演
*会場 名古屋能楽堂
*解説(午後6時15分から午後6時30分)
「『藤戸』について」 和久荘太郎
*演目詳細
狂言 和泉流 「狐塚」
シテ 野口隆行
アド 松田高義
アド 奥津健太郎
後見 佐藤融
能 宝生流 「藤戸」
シテ 衣斐正宜
ワキ 高安勝久
ワキツレ 椙元正樹
アイ 鹿島俊裕
笛 大野誠
小鼓 後藤嘉津幸
大鼓 河村眞之介
後見 玉井博祜 他
地謡 亀井保雄 他
◎上記事は[能楽協会]からの引用です
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いいなぁ~♪、素敵ですね・・・。
私の周りでは、ついぞ見かけない世界です・・・U+1F496(笑)。
秋になり、キモノが着られるようになりました。日本の近年の夏は、とてもじゃないけど着物の着られる気温ではないですね。