誰もがよく利用する喫茶店 その形態もコロナによって変わりつつある 2021/9/6

2021-09-06 | 社会

コロナで赤字転落の「銀座ルノアール」。巻き返し策を幹部に聞いた
 2021/9/6(月) 8:47配信 bizSPA!フレッシュ

  
  今のところ、ビジネスブースも、貸会議室も禁煙

 誰もがよく利用する喫茶店。待ち合わせに使ったり、仕事や勉強に使ったりと用途はさまざまだろう。だがその形態もコロナによって変わりつつある。日本フードサービス協会加盟調査員がまとめた喫茶業態の7月度売上は、前年同月比5.8%増。多くの店が営業を再開したものの、コロナ前の2019年対比では27.9%減と復活にはまだ遠い。
 1964年に創業した老舗の喫茶店チェーン「銀座ルノアール」はテレワーク・リモートワーク支援のための「ビジネスブース」を開設し始めている。ホテルのロビーのような高級感のある店内で、都内だと知名度も高い銀座ルノアールだが2020年の決算では赤字転落した。
 株式会社銀座ルノアール営業部部長・小林総一郎氏に、新しいサービスでもあるビジネスブースや今後の展開について聞いてみた。

■喫茶店内にビジネスブースを設置したワケ

   
 1畳ほどの個室。1人用で仕事や趣味に没頭できるスペース。アルコールスプレーがひと部屋ずつ置いてある

 銀座ルノアールのビジネスブースは2020年12月、巣鴨駅前店(豊島区)に初めて設置された。今回取材に訪れた西日暮里第一店は2021年8月14日にオープンした。既存店舗内の脇に設置しているようだが、どのようにして新たに作ったのだろうか。
「コロナ禍でリモートワークが増えた常連様やビジネスマンから、『こもって仕事ができる場所が欲しい』という声を受けていました。そして、2020年夏くらいから個室スペースを巣鴨駅前店に設置したところ、反響が多く、良い滑り出しができた。西日暮里第一店は、もともと貸会議室が2部屋あったのですが、そのうちのひとつをビジネスブースに改装しました」
 銀座ルノアールは以前から貸会議室サービスを展開。その部屋の一角を改装したのがビジネスブースだという。どのようなお客さんが利用するのかと、小林氏に聞いたところ「店舗によって違うのですが、最初の目論見通りで、パソコンでお仕事されるビジネスマンが多いです」とのこと。

■個室ブースの価格は「ファンに向けて」
 1時間500円。30分ごとに250円で延長が可能。3時間定額パックだと1050円でお得に利用できる。こじんまりとしているが仕事に集中できる空間だ
 テレワーカー向けの個室ブースも増えてきたが、値段設定などは他社とどう差別化しているのか。
「もちろんいろいろな会社の価格帯を参考にしました。弊社には1日に2~3回利用してくださるルノアールファンのお客様がいらっしゃいます。そのような方たちが満足していただけるためにどのような価格帯がよいかなと考えて、今の1時間500円の値段に落ち着きました」
 また防犯やセキュリティについても、当初はスタッフが鍵を閉めに行く状態だったが、「6月からブースごとに個別の鍵を取りつけて、お貸しています。まだ全店舗になく、2021年中の完全鍵の交換を目指しています」と対応中だとか。
「なかには長期で借りたいお客様もいて、2日間部屋を使って荷物を置きっぱなしにし、翌日手ぶらで来たいと言う方もいらっしゃいますが、セキュリティを考えてお断りしています」

■2020年は全社的な休業で赤字だった
 ちなみに、ビジネスブースではポイントカードも配布しているようだ。
「ビジネスブースによく来てくれるお客様に還元したい気持ちから、7月にポイントカード配布を始めたのですが、おかげさまで少しずつビジネスブースの常連のお客様もできました。これまでのお客様は40~60代がメインでしたが、今は20~60代と幅広くなっています」
 これまで好調だった喫茶店チェーンだがコロナ禍での売上の明暗が分かれた。コメダ珈琲は2020年2月期決算短信だと31億2190万の黒字となり、給仕などすべて行うフルサービス型のなかで一人勝ちしている状態だ。一方で、銀座ルノアールは2020年に経常損失を出したが、2022年3月期第1四半期の決算は9400万円と黒字に浮上している。
「2020年は銀座や新宿などの繁華街地区で、全社的な休業となりました。さらに貸会議室も約2か月弱の休業となったのです。浮上した理由としては2021年1~3月に12店舗撤退による固定費の削減が、前年比較で利益の増加に寄与しているのだと思います」

■リモートワーク増「ビジネスブース」に価値が
 ワンドリンク制で金額はホールでの値段と同じ。ドリンクは2杯目以降ブレンドやドリップアイスコーヒーなどがおかわり自由。朝はお得なモーニングがある
 ビジネスブースや貸会議室に関しては、長期的な投資効果を見込んでいるという。
「貸会議室は今後コロナ禍からの時代の流れで、企業として本社を持たずリモートや在宅で業務をこなすスタイルが増加すると思います。そこで大きな貸会議室の価値が出てくるはずです。ビジネスブースも同様でリモートワークもますます増加すると思われ、価値が見込めると思っています」
 フルサービス型の競合・コメダ珈琲や椿屋珈琲との差別化については「継続的な接客の強化」を図っているそうだ。
「エリアマネージャーや本社スーパーバイザー、本社スタッフの店舗巡回にてリアルタイムの店舗運営をチェックしています。その結果を店舗責任者に適時通達し、早急な改善を実施しています。その後、追いチェックもし、徹底改善を図っています。また、接客やホスピタリティを向上させるために、月次でエリアマネージャー主体の会議を実施したり、ミステリーショッパーも活用したりしています」

■お客様の声をもとに「改善をする」
 延長したい場合や注文はカラオケのような備え付けの電話で伝えられる仕組み。注文したらおしぼりとともにスタッフが運んでくれるので、フルサービスとほぼ変わらない
 銀座ルノアールでは接客の強化とともに、お客さんからの声も大切にしている。ビジネスブースを利用するお客さんにアンケートを実施して、「この立地に出店して欲しい」「防音をもう少しして欲しい」などさまざまな声を集めているという。コロナ対策に関してもお客から何か声があったのだろうか?
「衛生面に関してお客様の要望はほとんどありませんでした。換気やアルコールスプレー対策もしていますので、今のままで満足されているのかな? と思っています。それよりも『椅子をもうちょっとこうして欲しい』『ブランケットのようなものが欲しい』などの声がありました。お客様の声を聞きながら、徐々に改善していきたいと思います」
 現在、西日暮里第一店を含めて都内を中心に11店舗展開しているビジネスブース。今後も店舗数を増やすのか。
「できるだけ増やしていきたいです。ただ既存の店舗だと、消防法の制約があり、全店舗にビジネスブースを作ることができません。そのため、消防法にかからない店舗から増やしたいと考えています」

■スクラッチ製法のパン屋をオープン予定
 建築基準法や消防法のため天井から部屋の間が空いており、打ち合わせなど声を出す仕事は控えたほうが良さそうだ
 最後に、銀座ルノアールの今後の展開について聞いてみた。
「実は9月中旬に粉から作るスクラッチ製法のパン屋をオープンします。今後何するのにもコロナがついて回ると思うのですが、ベーカリー事業もそのひとつの方向性として作りました。リモートワークが増え、家から近い飲食の需要が多くなることから、都心部よりも郊外のさいたま市(埼玉県)に出店することになったのです。これからも形を変えつつ、お客様に満足していただけるものを提供していきたいと思います」
 長年変動していく世間を見てきた銀座ルノアール。すでに確固としたファン層ができているのでいろいろな方向性へとチャレンジができるのだろう。
<取材・文・撮影/大川藍>
bizSPA!フレッシュ 編集部

最終更新:bizSPA!フレッシュ

 ◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です
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〈来栖の独白 2021.9.6. Mon〉
 一言だけ。リモートワークで対応できない業種、「介護」。


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