死刑執行:3人殺害の川崎死刑囚 政権交代後9人目
毎日新聞 2014年06月26日11時10分(最終更新 06月26日 12時30分)
谷垣禎一法相は26日午前、2007年に香川県坂出市でパート従業員の女性とその孫娘2人が殺害された事件で、殺人や死体遺棄などの罪により死刑が確定していた川崎政則死刑囚(68)=大阪拘置所=の死刑を執行したと発表した。死刑執行は昨年12月以来。12年12月の政権交代で谷垣法相が就任して以降、5回で計9人が執行されたことになる。
確定判決によると、川崎死刑囚は07年11月、金銭トラブルなどで恨みを抱いていた義理の姉の女性(当時58歳)を殺害しようと女性宅に侵入。女性と、たまたま隣家から泊まりに来ていた女性の孫で、当時5歳と3歳だった姉妹を刺殺し、遺体を坂出港近くの資材置き場に埋めて遺棄した。
川崎死刑囚は公判で起訴内容を認めていたが、1、2審で弁護側は「被告は心神耗弱状態にあり、死刑に処するのは酷に過ぎる」などと主張。上告審でも「計画性は高くない」などとして死刑回避を求めたが、最高裁が12年7月に上告を棄却し、同8月に死刑が正式に確定した。確定から執行までの期間は約1年10カ月。
今回の執行は、静岡市(旧静岡県清水市)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして強盗殺人罪などで死刑が確定した元プロボクサー、袴田巌元被告(78)が今年3月に再審開始決定を受けて釈放されて以降、初めて。袴田さんを除くと、確定死刑囚は128人となった。
谷垣法相は26日午前の記者会見で「誠に身勝手な理由で3人の命を奪った残忍な事件で被害者、遺族の無念はこの上ない。慎重な検討を加えて判断した」と述べた。【和田武士、伊藤一郎】
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抗議声明 2014.06.26
死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90
本日(6月26日)、川崎政則さん(68歳:大阪拘置所)に死刑が執行されたことに対し、強く抗議する。
谷垣禎一法務大臣による死刑執行は、昨年12月12日に次ぐ、5度目であり、被執行者は9人にのぼる。本日の死刑執行は、通常国会の閉会を待ち、7月に予定されている法務省幹部人事の前に周到に準備されたものであるといえる。
これで安倍晋三政権は、第一次政権で10人、第二次政権で9人、合計19人の死刑を執行したことになる。5年5か月に及んだ小泉政権での被執行者の数は8人であるから、安倍政権がいかに死刑執行に血道を挙げ、死刑制度存置に執着しているのかがわかろうというものである。
2007年に発生した「坂出3人殺害事件」の被告人とされた川崎さんには、知的障がいや発達障がいがあり、当初から刑事責任能力や訴訟能力についての疑念がもたれていた。
しかし、川崎さんの第一審は、2008年7月の初公判後の精神鑑定と期日間整理手続を経た2009年3月9日から12日までのわずか4日間の集中審理によって結審し、同年3月16日に死刑判決が言い渡されている。
この裁判は、2009年5月から施行された裁判員裁判を見据えた「モデルケース」とされているが、法律のプロでも判断の分かれる責任能力の有無の判断が裁判員裁判や短期間の集中審理に馴染むかという問題は、裁判員制度が導入された現在でも未解決となっている。
一審の裁判を傍聴していた記者によると、川崎さんは「自分は頭がおかしいのです。冷蔵庫にあるバナナが気になるので、早く帰りたい」などと証言をしており、弁護人も知的障がいや広汎性発達障がい等を理由に心神耗弱を訴えていたが、裁判所は詐病と判断した。
加えて、2012年7月の最高裁での死刑の確定以降わずか1年11か月でのスピード執行となったことについては、誤った拙速裁判を糊塗するものであり、裁判員裁判での死刑確定者の執行に道を開くものとなることが懸念される。
また、本日6月26日は、国連拷問等禁止条約が発効した日であり、国連総会において「拷問被害者支援の日」と定められている。
日本も締約国である同条約の対日審査の場においては、日本が存置している死刑制度と死刑確定者の処遇が再三問題とされてきた。
それにもかかわらず、「拷問被害者支援の日」にあえて死刑を執行することは、国際世論に対する重大な挑戦といわざるをえない。
現在、「死刑大国」といわれる米国においても死刑執行や死刑制度そのものを見直そうという動きが全土で広がりつつある。
日本においても3月の静岡地裁による袴田巖さん対する再審開始決定以来、死刑の在り方を見直そうという雰囲気は醸成されつつあった。
しかるに今回の死刑執行はこうした動きに水を注すものであり、日本政府が死刑という究極の刑罰を手放そうとはしないことを世界に表明し、国際社会からさらに孤立する道を選択する機会となった。
死刑は、国家による殺人を肯定するものであり、応報感情を社会に蔓延させる極めて有害かつ危険なものである。死刑には犯罪抑止の効果はなく、また、被害者の救済や社会の平穏にも資するものではない。さらに、死刑は人道と民主主義に反する。
日本政府および法務省は、死刑廃止の国際世論に真摯に向き合い、死刑が恥ずべき誤った刑罰であることを認め、ただちに死刑執行を停止すべきである。
私たちは、死刑の廃止を願う多くの人たちとともに、また、谷垣法務大臣に処刑された川崎政則さんに代わり、そして、死刑執行という苦役を課せられている拘置所の職員に代わって、谷垣法務大臣に対し、強く、強く抗議する。
2014年6月26日
死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90
(※ 表記上の制限:「川崎」の「崎」のつくりの上部は、本来、「大」ではなく「立」になります)
この投稿は 2014年6月26日 木曜日 2:33 PM に お知らせ, 死刑執行抗議 カテゴリーに公開されました。 この投稿へのコメントは RSS 2.0 フィードで購読することができます。 現在コメントは受け付けておりませんが、ご自分のサイトからトラックバックを送ることはできます。
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