君が代訴訟 最高裁判決 「停職・減給処分」=取り消し/「戒告」=妥当

2012-01-16 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

最高裁判例
事件番号
 平成23(行ツ)263
事件名
懲戒処分取消等請求事件
裁判年月日
 平成24年01月16日
法廷名
 最高裁判所第一小法廷

裁判種別
 判決
結果
 その他
判例集等巻・号・頁
原審裁判所名
 東京高等裁判所
原審事件番号
 平成21(行コ)181
原審裁判年月日
 平成23年03月10日
判示事項
裁判要旨
 1 公立の高等学校又は養護学校の教職員らが卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱すること又は国歌のピアノ伴奏を行うことを命ずる旨の各校長の職務命令に従わなかったことを理由とする戒告処分が,裁量権の範囲を超え又はこれを濫用するものではないとして違法とはいえないとされた事例
 2 公立養護学校の教職員が卒業式において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱することを命ずる旨の校長の職務命令に従わなかったことを理由とする減給処分が,裁量権の範囲を超えるものとして違法とされた事例
全文 

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日の丸訴訟、停職と減給は慎重に 最高裁、一部処分取り消し
 日の丸・君が代訴訟の判決を受け「分断判決弾劾」の垂れ幕を掲げる原告側弁護士=16日午後、最高裁前
 学校行事で校長の職務命令に反して日の丸へ向かっての起立や君が代の斉唱などを拒否し、地方公務員法に基づく停職や減給、戒告の懲戒処分を受けた東京都の公立学校の現・元教職員ら計約170人が処分取り消しなどを求めた訴訟3件の上告審判決が16日、最高裁第1小法廷(金築誠志裁判長)であった。
 判決は「戒告を超える減給以上の処分の選択には慎重な考慮が必要」との考えを示した上で、停職の2人のうち1人と、減給の1人については「処分は裁量権の乱用で違法だ」と処分を取り消した。停職の別の1人と残る原告の戒告は妥当と判断した。
2012/01/16 20:20   【共同通信】
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君が代処分訴訟 最高裁初の判断
NHKニュース 2012/1月16日 16時14分
 卒業式などの式典で、君が代を斉唱する際に起立しなかったなどとして処分を受けた東京都の公立学校の教職員およそ170人が処分の取り消しを求めた裁判で、最高裁判所は、「減給以上の重い処分は慎重な考慮が必要だ」という初めての判断を示し、教員2人の停職処分と減給処分を取り消しました。
 この裁判は、卒業式などの式典で、君が代を斉唱する際に起立しなかったなどとして停職と減給、それに戒告の処分を受けた東京都の公立学校の教職員およそ170人が「処分は重すぎる」と主張して起こしたものです。
 16日の判決で、最高裁判所第1小法廷の金築誠志裁判長は「減給以上の重い処分を選択するときは慎重な考慮が必要だ」という初めての判断を示しました。そのうえで停職処分を受けた教員1人について、「過去2年間に3回、起立しなかったことだけを理由に停職処分にするのは重すぎ、著しく妥当性を欠く」と指摘し、処分を取り消しました。また、別の教員1人の減給処分も取り消しました。
 一方、戒告の処分については、「裁量権の範囲内だ」として取り消しを求めた教職員側の訴えを退けました。
 君が代を巡っては、公立学校の式典で起立や斉唱を教職員に命じる東京都教育委員会の平成15年の通達について、最高裁は去年5月、憲法に違反しないという判断を示していますが、16日の判決で処分については一定の歯止めをかける形となりました。
 一方、大阪市の橋下市長は、府知事だった去年6月、君が代の斉唱を公立学校の教職員に義務づける条例を全国で初めて成立させたのに続き、同じ違反を3回繰り返せば直ちに免職にするという重い処分の規定を盛り込んだ条例案を提出しています。また、大阪市でも条例化を目指す姿勢を明らかにしており、16日の判決はこうした条例の処分の基準にも影響を与えることになります。
 判決について、停職処分が取り消された原告の河原井純子さんは「判断が分かれてしまい残念ですが、処分に一定の歯止めをかけたということで、現場で萎縮する教員に対して少し背中を押すことができると思う」と話していました。
 また弁護団は「最高裁が初めて処分の取り消しを命じたのは非常に重大で評価できる。大阪でも君が代斉唱を巡って議論が行われているので、大きな影響を与えると思われる」と指摘しました。
 一方、東京都教育委員会の大原正行教育長は、教員2人の処分が取り消されたことについて「厳粛に受け止める」という談話を出しました。
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社説:日の丸・君が代判決 行き過ぎ処分には警鐘
 学校の式典で、日の丸に向かって起立せず、君が代を斉唱しなかった教職員を懲戒処分にするのは妥当か。東京都立学校の教職員が処分の取り消しを求めた訴訟で、最高裁が具体的な考え方を初めて示した。
  結論としては、学校の規律や秩序保持などの見地から重すぎない範囲で懲戒処分をするのは、懲戒権者の「裁量権の範囲内」というものだ。
  では、どういう場合が重すぎるのか。最高裁は「戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択するに当たっては、慎重な考慮が必要となる」と指摘して、まず線引きをした。
  さらに、停職処分については「直接の職務上、給与上の不利益があり、昇給にも影響が及ぶ。式典のたびに懲戒処分が積み重なると、不利益が拡大する」と指摘。学校の規律や秩序の保持と処分による不利益の内容を比較し、「停職処分が相当だという具体的な事情が必要だ」とした。具体的な事情は、過去の処分歴や本人の態度などから判断するのだという。そして、最高裁は停職と減給処分を受けた2人の処分は取り消しが妥当と結論づけた。その点を都教委は重く受け止めるべきだ。
  一方で、戒告処分の教職員について、判決は処分を妥当だとした。1度の不起立行為での戒告処分も認めた。要するに「行き過ぎ」はいけないということだろう。
  都教委は03年、「式典の際に教職員は国旗に向かって起立し、国歌を斉唱すること」と通達した。また、校長に職務命令を出すよう指示し、違反者に次々と懲戒処分を科して処分件数は400件を超える。
  だが、そもそも教育現場で、力で抑え込むような指導が妥当なのかは疑問が残るところだ。生徒らの入学や卒業を祝う式典の場ではなおさらではないだろうか。
  学校で君が代斉唱を巡り処分が相次ぐようになったのは、99年に国旗・国歌法が成立した影響も大きいだろう。だが、当時の小渕恵三首相が国会論議で述べたように、個々人に強制するものであってはならない。
  最高裁は昨年、君が代斉唱時に起立を命じた校長の職務命令が合憲だとした判決で「君が代の起立・斉唱行為には、思想・良心の自由に対する間接的な制約となる面があることは否定し難い」と述べた。たとえ戒告処分であっても慎重に判断すべきなのは当然だ。判決を「より軽い処分」のお墨付きにしてはならない。
  大阪府では昨年、公立校教職員に君が代の起立・斉唱を義務づける全国初の条例が成立した。府議会には、「常習的な職務命令違反者」の分限免職も規定した教育基本条例案が提出されている。最高裁の判決の内容も踏まえて議論してもらいたい。
 毎日新聞 2012年1月17日 2時31分
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大阪市:君が代起立条例案、橋下市長が提案へ
 大阪市の橋下徹市長は13日、市立学校の教職員に君が代の起立斉唱を義務づける条例案を、2月市議会に提案する意向を明らかにした。大阪府では昨年6月、同様の条例が全国で初めて成立。府条例は大阪市にも適用されているが、起立斉唱の徹底を図る狙いがあるとみられる。市議会では、橋下市長が代表を務める大阪維新の会市議団が過半数を占めておらず、成立は厳しい見通しだ。【林由紀子】毎日新聞 2012年1月13日 東京夕刊


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