春秋(3/23)
「自然は春に於(おい)てまさしく慈母なり」。明治大正期の作家徳富蘆花は「自然と人生」に収めた小文にそう書き、続けて、この季節には「人は自然と融け合ひ、自然の懐(ふところ)に抱かれて、限りある人生を哀(かなし)み、限りなき永遠を慕ふ」と記した。
▼今日は彼岸明け。暑さ寒さも彼岸までと言い習わす一方「毎年よ彼岸の入(いり)に寒いのは」(正岡子規)もまた実感することがあるが、今年は、九州や四国のあちこちから観測史上1番、2番の早さで桜の咲いた便りがすでに届き、東京でも平年より1週間早く週末に花が開いて、もう「慈母のような春」は来ている。
▼春分・秋分の日にあたる中日(ちゅうにち)と、前後3日ずつの合計7日間を彼岸とするのは、江戸後期1844年に公式の暦になった天保暦(てんぽうれき)からだそうだ。なぜ7日間かについて、俗にこんな説明がされる。「中日に先祖に感謝し、残る6日は、悟りの境地に達するのに必要な6つの徳目『六(ろく)波羅(はら)蜜(みつ)』を1日に1つずつ修める」
▼列記すれば布施(ふせ)・持戒(じかい)・忍辱(にんにく)・精進(しょうじん)・禅定(ぜんじょう)・智慧(ちえ)となる。意味は辞書でお調べいただくとして、われら凡夫にはどれも縁遠い。とりわけ今春は、恐慌の再来まで心配される経済状況と、非常時にひどく頼りない政治にイライラの煩悩は募ってやまない。引用した蘆花の小文の題「春の悲哀」が身にしむ彼岸明けだ。
「自然は春に於(おい)てまさしく慈母なり」。明治大正期の作家徳富蘆花は「自然と人生」に収めた小文にそう書き、続けて、この季節には「人は自然と融け合ひ、自然の懐(ふところ)に抱かれて、限りある人生を哀(かなし)み、限りなき永遠を慕ふ」と記した。
▼今日は彼岸明け。暑さ寒さも彼岸までと言い習わす一方「毎年よ彼岸の入(いり)に寒いのは」(正岡子規)もまた実感することがあるが、今年は、九州や四国のあちこちから観測史上1番、2番の早さで桜の咲いた便りがすでに届き、東京でも平年より1週間早く週末に花が開いて、もう「慈母のような春」は来ている。
▼春分・秋分の日にあたる中日(ちゅうにち)と、前後3日ずつの合計7日間を彼岸とするのは、江戸後期1844年に公式の暦になった天保暦(てんぽうれき)からだそうだ。なぜ7日間かについて、俗にこんな説明がされる。「中日に先祖に感謝し、残る6日は、悟りの境地に達するのに必要な6つの徳目『六(ろく)波羅(はら)蜜(みつ)』を1日に1つずつ修める」
▼列記すれば布施(ふせ)・持戒(じかい)・忍辱(にんにく)・精進(しょうじん)・禅定(ぜんじょう)・智慧(ちえ)となる。意味は辞書でお調べいただくとして、われら凡夫にはどれも縁遠い。とりわけ今春は、恐慌の再来まで心配される経済状況と、非常時にひどく頼りない政治にイライラの煩悩は募ってやまない。引用した蘆花の小文の題「春の悲哀」が身にしむ彼岸明けだ。