社説:日米外相会談 普天間5月決着 公約に
岡田克也外相はハワイでのクリントン米国務長官との会談で、日米安全保障条約改定50周年に合わせた「日米同盟深化」への政府間協議開始で合意する一方、米軍普天間飛行場の移設問題の結論を5月までに出すと伝えた。
これで普天間問題の「5月までの結論」は日米政府間の正式の約束事となったわけである。鳩山政権として自ら、「普天間移設は自民党政権下での合意」という逃げ道をふさいだ形だ。同盟協議を前へ進めるためにも5月決着の約束を守りたい。
「日本外交にとって日米同盟がすべての礎だ」(鳩山由紀夫首相)、「(日米同盟は)両国だけでなくアジア太平洋地域の安定と繁栄のための基軸だ」(オバマ大統領)。日米の首脳が同盟関係の重要性を確認し合ったのはちょうど2カ月前の東京での会談だった。
その関係がいまぎくしゃくしている。日本政府が普天間問題の年内決着を断念する方針を固めた際、岡田外相は「日米双方に深刻な信頼関係の喪失が生まれかねない。日米同盟が若干揺らいでいる」と述べた。現職外相が日米同盟の揺らぎを指摘するのは尋常ではない。同様の懸念は米側にもあり、オバマ政権内からは「(普天間問題の迷走が)長期化すれば同盟の信頼性を侵す」(キャンベル国務次官補)などと憂慮の声が出ている。
今回の外相会談開催の背景には双方のこうした危機感があるのは確かだろう。両外相が確認した、今年前半の外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)の開催や、改定安保条約の調印50周年記念日(19日)の外務・防衛担当閣僚による声明発表は、同盟の揺らぎをこれ以上大きくしないための防御措置という側面もあるのだろう。日米双方の“大人の対応”と受け止めたい。
岡田外相は同盟深化の協議に関し、1996年の日米安保共同宣言に代わる合意づくりを目指す考えを示した。96年宣言はアジア太平洋地域の安全保障と米軍基地の負担軽減の双方を同時に目指すものだった。今回の協議をそれに代わるものとして位置づけようというなら、やはり足元の揺らぎをまず止めることが必要だ。
普天間問題について鳩山首相は「米国の意向を無視した与党合意はありえない」と言っている。しかし、政府と社民、国民新両党による沖縄基地問題検討委員会がキャンプ・シュワブ沿岸部という現行計画に代わる新たな移設先を模索しているのに対し、クリントン長官は岡田外相に現行計画が「最善の道だ」とクギを刺した。隔たりを埋める双方の努力が求められる。
毎日新聞 2010年1月14日 2時34分
岡田克也外相はハワイでのクリントン米国務長官との会談で、日米安全保障条約改定50周年に合わせた「日米同盟深化」への政府間協議開始で合意する一方、米軍普天間飛行場の移設問題の結論を5月までに出すと伝えた。
これで普天間問題の「5月までの結論」は日米政府間の正式の約束事となったわけである。鳩山政権として自ら、「普天間移設は自民党政権下での合意」という逃げ道をふさいだ形だ。同盟協議を前へ進めるためにも5月決着の約束を守りたい。
「日本外交にとって日米同盟がすべての礎だ」(鳩山由紀夫首相)、「(日米同盟は)両国だけでなくアジア太平洋地域の安定と繁栄のための基軸だ」(オバマ大統領)。日米の首脳が同盟関係の重要性を確認し合ったのはちょうど2カ月前の東京での会談だった。
その関係がいまぎくしゃくしている。日本政府が普天間問題の年内決着を断念する方針を固めた際、岡田外相は「日米双方に深刻な信頼関係の喪失が生まれかねない。日米同盟が若干揺らいでいる」と述べた。現職外相が日米同盟の揺らぎを指摘するのは尋常ではない。同様の懸念は米側にもあり、オバマ政権内からは「(普天間問題の迷走が)長期化すれば同盟の信頼性を侵す」(キャンベル国務次官補)などと憂慮の声が出ている。
今回の外相会談開催の背景には双方のこうした危機感があるのは確かだろう。両外相が確認した、今年前半の外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)の開催や、改定安保条約の調印50周年記念日(19日)の外務・防衛担当閣僚による声明発表は、同盟の揺らぎをこれ以上大きくしないための防御措置という側面もあるのだろう。日米双方の“大人の対応”と受け止めたい。
岡田外相は同盟深化の協議に関し、1996年の日米安保共同宣言に代わる合意づくりを目指す考えを示した。96年宣言はアジア太平洋地域の安全保障と米軍基地の負担軽減の双方を同時に目指すものだった。今回の協議をそれに代わるものとして位置づけようというなら、やはり足元の揺らぎをまず止めることが必要だ。
普天間問題について鳩山首相は「米国の意向を無視した与党合意はありえない」と言っている。しかし、政府と社民、国民新両党による沖縄基地問題検討委員会がキャンプ・シュワブ沿岸部という現行計画に代わる新たな移設先を模索しているのに対し、クリントン長官は岡田外相に現行計画が「最善の道だ」とクギを刺した。隔たりを埋める双方の努力が求められる。
毎日新聞 2010年1月14日 2時34分