産経ニュース 2016.3.10 05:03更新
【主張】高浜原発差し止め 常軌を逸した地裁判断だ
またも驚くべき司法の判断である。これでは日本のエネルギー・環境政策が崩壊してしまう。
関西電力高浜原子力発電所3、4号機(福井県)に対し、滋賀県の住民が求めていた運転差し止めの仮処分を大津地裁が認めた。
高浜3、4号機は福島事故を踏まえて策定された新規制基準に合格して今年、再稼働を果たしたばかりである。
にもかかわらず、運転を差し止めるということは新規制基準と原子力規制委員会の審査を真っ向から否定したことに他ならない。
仮処分は即効力を持ち、関電は運転を停止する。司法判断での稼働中の原発停止は前例がない。
関電は「到底承服できない」として、速やかに不服申し立ての手続きを行う。一日も早く取り消される必要があろう。
決定の影響は甚大だ。4月からの電力小売り自由化を目前に、関電の供給計画は全面見直しを余儀なくされ、予定された電気料金の値下げも困難になる。近畿圏での企業活動や生活にマイナスの影響が出るのは避けられない。
原発の安全性をめぐっては、平成4年の最高裁判決で、その適否について、科学的、専門的な知見に基づく行政の合理的判断に委ねるとしている。
これに対し、今回の決定は、政府の新規制基準による安全性確保が合理的かどうかの説明を関電に求め、「主張および疎明を尽くしていない」と断じた。具体的には耐震性能や津波対策、避難計画などに疑問があると指摘した。
これが理にかなっているといえるのか。高浜原発の強制停止がもたらす電力不足や電気料金上昇など社会的なリスクの増大にも、目をつむるべきではない。
司法判断の不可解さには前例がある。27年には福井地裁が今回と同じ高浜3、4号機に運転差し止めの決定を下したが、8カ月後に取り消した。大津地裁も26年に高浜3、4号機を含む運転差し止めの仮処分申請を却下している。
高度に専門的な科学技術の集合体である原子力発電の理工学体系に対し、司法が理解しきったかのごとく判断するのは、大いに疑問である。
乱訴が続き、基本計画に基づく国のエネルギー政策や温暖化対策が揺らぐ事態を危惧する。原発政策に対する政府の明確な姿勢を今こそ求めたい。
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2016.3.9 17:08更新
【高浜3、4号機差し止め】運転差し止め命じた裁判長、前回は差し止め申請却下
関西電力高浜原発3、4号機の運転差し止めを命じた山本善彦裁判長(61)は民事裁判を主に担当し、平成26年4月に大津地裁に着任した。同年11月には今回とは反対に、再稼働前の高浜3、4号機をめぐる同様の仮処分申請を「再稼働は迫っておらず、差し止めの必要性はない」と却下していた。
京都府出身。昭和63年に大阪地裁で判事補になり、福岡、鹿児島両地裁や大阪高裁などを経て、平成23年4月から26年3月まで山口地裁で判事を務めた。
山口地裁では24年12月、中国電力の上関原発(山口県上関町)予定地をめぐり、住民側が山林の入会権確認を求めた訴訟の差し戻し審判決で請求を退けた。大津地裁に異動後は、いじめを苦に自殺した中学生の遺族が大津市に損害賠償を求めた訴訟も担当し、昨年3月に市が和解金1300万円を支払うなどの内容で和解が成立した。
◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です *強調(太字・着色)は来栖
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◇この裁判官はヒーローじゃない=元福井地裁 樋口英明裁判長(高浜再稼働差し止めを命じる仮処分決定) 2015-04-24
◇ 高浜原発めぐる「司法の暴走」独断と偏見で素人判断…樋口裁判長は4月1日付で名古屋家裁に異動したが
◇ へんな判決 脱原発の政治的信条に基づいた「確信犯」的な判断 樋口英明裁判長
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