小沢氏、やっぱり“孤立” 民主からも…SP不在、影響力低下否めず

2013-01-24 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

小沢氏、やっぱり“孤立” 民主からも…SP不在、影響力低下否めず
zakzak2013.01.24
 生活の党は25日、都内で結党大会を開き、小沢一郎衆院議員が代表に就任することで調整している。小沢氏は今年夏の参院選で、野党各党との共闘を目指すが、橋下徹代表代行(大阪市長)率いる日本維新の会や、渡辺喜美代表率いるみんなの党は、生活との連携に消極的。古巣である民主党の海江田万里代表まで生活との選挙区での競合を避けない考えを表明した。小沢氏の孤立はさらに極まった感がある。
 「選挙区が決まっていない人の選挙区を決めるのは当然の作業だ」
 海江田氏は23日、民主党が参院選で新潟、広島両選挙区への候補者擁立を決めたことについて、こう述べた。視察先の仙台市で記者団に語った。
 新潟は生活の森裕子代表、広島は佐藤公治氏という、小沢氏側近の生活議員が改選を迎えるだけに、永田町では「民主党が生活と選挙協力をしない方針に舵を切った」(関係者)と受け止められている。
 これは生活にとってはあまりにも痛い。
 小沢氏は、昨年12月の民主党代表選で、2011年8月の民主党代表選で自身が担いだ海江田氏が代表に就き、気心が知れた輿石東参院議員会長は相変わらず党を牛耳っていることを好感。参院選を見据えて「(野党第1党の民主党と共闘することは)もちろんだ」と語り、民主党復党も視野に入れていたとされるからだ。
 さらに、第3極結集の展望も芳しくない。
 小沢氏は、12・16衆院選で、第3極が小選挙区で競合した結果、自民、公明両党が漁夫の利をさらって圧勝したことを受け、橋下氏らを念頭に「候補者を1人に絞らないといけないことが、なぜ分からなかったのか。小学生でも分かる」と発言。維新やみんなとの共闘にも自信を示していたが、「維新の石原慎太郎代表の『小沢嫌い』は変わらず、松井一郎幹事長(大阪府知事)もほぼ同じスタンスだ」(維新関係者)。
 独自の道を行く生活は25日の結党大会で新代表を決定する方針。森代表は今年に入り、「小沢一郎(氏や、彼の掲げる)『自立と共生』の理念の下に、みんなが集まっている」と語るなど、小沢新代表を示唆している。
 ただ、昨年末の日本未来の党の分裂劇で、他党の「小沢・生活アレルギー」は強まった感がある。一兵卒のときでもついていたSP(警護官)もいなくなり、小沢氏の影響力低下を印象付けている。
 苦境を脱する一手はあるのか。
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〈来栖の独白2013/01/24 Thu.〉
「候補者を1人に絞らないといけないことが、なぜ分からなかったのか。小学生でも分かる」
 矛盾の極みではないか。候補者を1人に絞らず、刺客を立てたのは誰か(小沢氏自身ではなかったか)。
 小沢氏の地元岩手では、それまでともにやってきた階猛(しな たけし)氏、黄川田徹氏に刺客を立て、野田前総理の千葉でも刺客を立てた。
 地元群馬から鞍替えし、千葉で野田前総理の刺客として立候補した三宅雪子氏は「党が違えば、ましてや政策が違えば、各党が候補者を出すのは当然の話。民主党も離党者のところに出しているし我が党が突出しているわけではありません」と言われるが、岩手の階氏も黄川田氏も小沢氏に付いて離党こそしなかったものの、消費税増税法案採決について階猛氏は反対票を投じ、黄川田氏は棄権している。小沢氏の公約の筆頭は反消費税増税であったはずで、ならば、いかほどの政策の違いというのであろうか。
 また、いま1つの政策「脱原発」であるが、これが選挙に勝つための方便でなかったのなら、なぜ俄かな[日本未来の党]分裂劇は起きたのか。脱原発という悲願を同じくする嘉田氏と斯くも易々と分裂したのか。
 民主党すり寄りなどを見せられれば、刺客擁立も[日本未来の党]分裂も、その論拠を喪うと言わざるを得ない。
 「生活の党」森裕子代表は『自立と共生』という極めて観念的、抽象的な言葉を繰り出している。これでは「生活の党」と名乗ってはいても、政策が掴みにくい。どの党でも、標榜可能だ。意味はどのようにも取れる。
SP(警護官)もいなくなり、小沢氏の影響力低下を印象付けている。
 いわゆる小沢一郎氏裁判は、でっち上げであった。既得権益のすべてが小沢潰しを画策した。有罪で確定させずとも、「刑事被告人」という身分を纏わせるだけで葬ることはできる。小沢一郎氏は、そのように抹殺された。
 12・16衆院選につき、小沢氏の「刺客擁立」手法に心冷えるものを覚えながらも私は小選挙区も比例も[日本未来の党]に投票した。が、今、氏の言う「反消費税増税」(民主党離党)や「脱原発」([日本未来の党]結党)の真意は何だったのか、空虚な感を否めない。
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小沢一郎氏は「このままだと大政翼賛会」と言うが/ ただ単に戦争回避ではなく、「平和」の質が問われている 2012-12-11 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
 小沢一郎氏「このままだと大政翼賛会に」 初の首都演説
 スポニチアネックス2012年12月11日 06:00
 日本未来の党の小沢一郎前衆院議員が10日、4日の公示後初めて東京都内で街頭演説を行った。
 公示日は愛媛県内の山間で遊説をスタートさせ、序盤に郡部を回り都市部へと支持の波を広げる得意の「川上戦術」を今回も展開。この日は中野駅前を皮切りに、墨田区の東京スカイツリー前など6カ所で演説を行い、「聞き慣れない政党名だと思うが、ずっと言い続けてきた“国民の生活が第一”の政治信念はまったく同じだ」と訴えた。
 報道各社の情勢調査などで同党は劣勢で、「報道では自民党が勝利すると言われ、日本維新の会も民主党幹部も選挙後は自民党と連携すると言っている。こんな筋道の通らない話はない。このままだと戦前の大政翼賛会になってしまう」と批判。また、自民党の安倍晋三総裁について「首相の時には(ブレーンらが)核武装論議をすると言っていた」とした上で、自民党時代から“犬猿の仲”の日本維新の会の石原慎太郎代表についても「石原なにがしも核武装の話をしている。危なっかしい多数派が形成されてしまう」とけん制した。
 〈来栖の独白2012/12/11 Tue.
>大政翼賛会
>「石原なにがしも核武装の話をしている。危なっかしい多数派が形成されてしまう」(スポニチアネックス)
 朝日新聞12月10日の記事によれば、「核武装とか、『この国はけしからんからやっつけろ』とか。そんなことで国民の命と暮らしを守れるのか」」「自立することと軍備を拡大し、核武装までする、そして、他の国々と対決するということは、全然別の話だ。ただ単に、口先だけ勇ましいことを言って、本当に国民の命を守れるのか、国土を守れるか」と、ある。
 来たる衆院選挙の主な争点は、[日本未来の党]の主張によれば、消費税増税・卒原発・反TPPの3点で、これに脱官僚政治などが続くようだ。「憲法」については触れていない。これは、如何なものか。
 尖閣諸島周辺には中国の船が出没し、公然と「核心的利益」を表明している。中国の覇権主義の触手は、日本にだけではない。チベットやウイグルは既に中国の圧政下にある。周辺諸国との摩擦が絶えない。北朝鮮はミサイルの打ち上げを表明した。
 小沢氏の「ただ単に、口先だけ勇ましいことを言って、本当に国民の命を守れるのか、国土を守れるか」との言葉を、そのまま氏に問い返したい。
 このまま中国の言いなりになっていれば「戦争」だけは回避できるだろう。しかし、それは、この国がチベットのように、ウイグルのように、中国の属国になるということだ。憲法9条は戦争回避・軍事放棄を掲げてきた。占領国アメリカが押しつけ、望んだ「従順な被占領国ニッポン」であり続ける道筋を謳っている。そのように日本は戦後半世紀以上を生きてきた。米国は憲法改正させぬように、と改正には議会の3分の2以上の賛成を必要とするとした。
 が、そのアメリカが、近年、日本の憲法9条、非武装に頭を悩ませている。アメリカでは、改憲を望む声が日増しに高くなっている。アメリカの国力の衰弱に反比例するように、中国の軍拡が目覚ましいからだ。加えて、中東など世界的規模で反米の波が高まっている。
 このような国際社会のなかで、「平和」の質が問われている。ただ単に戦争が無ければよい、というものではないだろう。国家・国民の主権が尊重され、他国からの支配を受けないことが、真っ当な国としての要件だ。
  「戦争放棄」を謳う憲法によって集団的自衛権を行使しない日本を、世界は決して尊敬していない。ハード・パワーを出さず、ソフト・パワーで体よく利ザヤを稼ぐ日本を、世界は卑怯だとみなしている。これが国際社会の現実である。護憲を声高に主張する人々には、国際社会の動向に疎く、独り善がりが多い。例えば北朝鮮についても、彼の国が世にも貧しい暮らしをしながら技術立国であることを、どの程度認識しているだろうか。
 小沢氏は2009年に団を組織して訪中した。習近平氏を天皇さんに会わせたのも、小沢氏である。民主主義を断固認めず、核心的利益・覇権国家を標榜してやまない彼の国を鳩山内閣(実質・小沢政権)は「正三角形」と称して「日米中が対等に付き合う」と言った。国際社会とは、そのようなものではない。常に、力と力を見せ合い、戦っている。外交のひと言先には戦争がある。戦争を回避したいなら、属国・被支配を国民(未来=子孫)に強いる覚悟が要る。核武装は戦争のためではない。戦争抑止としての核の存在理由がある(核に転用できるという意味での原発の存在理由がある)。
 国とは、国土・領海・主権、固有の文化が守られる「国家」でなければならず、国民は何人からも支配されず、尊厳が守られねばならない。
 附けたりを一つ。
 第2バチカン公会議は現代世界憲章78のなかで次のように言う。平和とは、単なる戦争の不在でもなければ、敵対する力の均衡の保持でもありません
 聖書に示される「平和」(シャローム)の本来の意味は「傷付いた部分のない状態」のことである。戦争がなく一見「平穏」に見える戦後日本は、聖書のメッセージから見れば、必ずしも平和とは言えず、国民は平和ボケ(仮想平和)に陥っていただけなのかもしれない。自分の周りのあちこちに、差別され軽んじられ痛む人がいるとしたら、それは「平和」ではない。国と国との関係においても、戦争はなくとも支配する国と支配される国とに分かれるならば、それは「平和」ではない。平和とは、「小さくされた人」を守るために戦うことだ。支配されたり、見下されたりしてはならない。旧約聖書(エレミア6・13-14)は次のようにいう。
 《身分の低いものから高いものに至るまで、
 皆、利をむさぼり、預言者から祭司に至るまで、皆、あざむく。
 彼らはわが民の破滅を手軽に治療して、
 平和がないのに「平和だ、平和だ」と言う。》
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『世界の変化を知らない日本人』日高義樹著 2011年5月31日第1刷 徳間書店 

       

第5章 民主党は日米関係の歴史を壊した
p134~
 私のいるワシントンのハドソン研究所には、アメリカの情報機関で分析官をやっていた人物がいる。彼の話によると、アメリカ政府は小沢一郎はじめ民主党首脳の対中国政策と動きを綿密に監視してきた。
 「中国からの情報もあれば、アメリカ情報調査局や国家安全保障局(NSA)などからの情報もある。あらゆる情報が担当者の手許に集まっている。日本の民主党と小沢元代表が中国に接近していく動きは手にとるように明らかだった」
 民主党の小沢元代表は、中国を取り込んで日中の協力体制を作り、アメリカを牽制して外交的にアメリカに対する強い立場を作ろうとした。こういった小沢元代表はじめ民主党首脳の動きは、私ですら耳にしていたのだから、多くの人々が知っていたに違いない。
 小沢元代表が「沖縄の海兵隊はいらない」と言ってみたり、日米安保条約に反対したりしているのをアメリカが苦々しく思ったのは、単に反米的な姿勢だからというだけでなく、中国と手を組んでアメリカに対抗しようとしたからである。
p135~
 小沢元代表の師ともいえる田中角栄元首相も、アメリカに対抗するために石油資源を獲得しようとしてアメリカに敗れた。田中元首相は結局、アメリカの石油メジャーと激突してしまい、ニクソン大統領とアメリカのCIAに打ち負かされてしまった。
 小沢元代表と民主党のアメリカに対する反乱は、そういった過去の出来事と比べるとあまりにも矮小である。まず小沢元代表の態度は中国と対等に手を結ぶというよりは、明らかに中国におもねっていた。民主党政権が発足した当時、長年の同盟国であるアメリカのワシントンではなく、まず北京に挨拶に行くべきだと示唆した態度などに、中国に対するあからさまな媚がよく表れている。

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『アメリカに潰された政治家たち』孫崎亨著(小学館刊)2012年9月29日初版第1刷発行
第2章 田中角栄と小沢一郎はなぜ葬られたのか
p93~
 2.最後の対米自主派、小沢一郎
角栄に学んだ小沢の「第七艦隊発言」
 私は情報局が人材のリクルートのために製作したプロモーション映像を見たことがあるのですが、そのなかで「我々は軍事だけでなく、政治的な分野でも諜報活動を行っている」と活動を紹介し、オサマ・ビン・ラディンの映像などを流していました。そういった一連の映像や画像のなかに、小沢一郎氏の写真が混ざっていて、私はハッとしました。
 彼らにとっては、小沢一郎に工作を仕掛けているということなど、隠す必要がないほど当たり前のことなのです。
p94~
 明確にアメリカのターゲットに据えられている小沢一郎とはどんな人物なのか、簡単におさらいしておきましょう。
 小沢一郎は27歳という若さで衆議員議員に初当選した後、田中派に所属し、田中角栄の薫陶を受けて政界を歩んできました。しかし、1985年に田中角栄とは袂を分かち、竹下登、金丸信らと創政会を結成。のちに経世会(竹下派)として独立しました。
 1989年に成立した海部俊樹内閣では、47歳で自民党幹事長に就任しています。おそらく小沢一郎という人物をアメリカが捕択、意識し始めたのはこの頃だと考えられます。1990年にサダム・フセインがクウェートに軍事侵攻し、国連が多国籍軍の派遣を決定して翌年1月に湾岸戦争が始まりました。
 ここでブッシュ(父)大統領は日本に対して、湾岸戦争に対する支援を求めてきます。
 アメリカ側は非武装に近い形でもいいので自衛隊を出すことを求めましたが、日本の憲法の規定では、海外への派兵は認められないとする解釈が一般的で、これを拒否します。アメリカは人を出せないのなら金を出せとばかり、資金提供を要請し、日本は言われるまま、計130億ドル(紛争周辺国に対する20億㌦の経済援助を含む)もの巨額の資金提供を行うことになります。
p95~
 当時の外務次官、栗山尚一の証言(『栗山尚一オーラルヒストリー』)では、この資金要請について「これは橋本大蔵大臣とブレディ財務長官の間で決まった。積算根拠はとくになかった」とされています。何に使うかも限定せず、言われるまま130億㌦ものお金を出しているのです。
 橋本は渡米前に小沢に相談していました。小沢は2001年10月16日の毎日新聞のインタビューでそのときのやりとりを明かしております。
「出し渋ったら日米関係は大変なことになる。いくらでも引き受けてこい。責任は私が持つ」
 この莫大な資金負担を決定したのが、実は小沢一郎でした。当時、小沢はペルシャ湾に自衛隊を派遣する方法を模索し、実際に「国連平和協力法案」も提出しています(審議未了で廃案)。
 “ミスター外圧”との異名をもつ対日強硬派のマイケル・アマコスト駐日大使は、お飾りに近かった海部俊樹首相を飛び越して、小沢一郎と直接協議することも多かったのです。小沢一郎が「剛腕」と呼ばれるようになったのはこの頃からです。
p96~
 この時代の小沢一郎は、はっきり言えば“アメリカの走狗”と呼んでもいい状態で、アメリカ側も小沢を高く評価していたはずです。ニコラス・ブレディ財務長官の130億㌦もの資金要請に、あっさりと応じただけでなく、日米構造協議でも日本の公共投資を10年間で430兆円とすることで妥結させ、その“剛腕”ぶりはアメリカにとっても頼もしく映ったことでしょう。
 田中派の番頭だった小沢は、田中角栄がアメリカに逆らって政治生命を絶たれていく様を目の当たりにしています。ゆえに、田中角栄から離れて、「対米追随」を進んできたものと思われます。
 しかし、田中角栄の「対米自主」の遺伝子は、小沢一郎のなかに埋め込まれていました。
 1993年6月18日、羽田・小沢派らが造反により宮沢内閣不信任案が可決され、宮沢喜一首相は衆議員を解散しました。それを機に、自民党を離党して新生党を結成し、8党派連立の細川護煕内閣を誕生させました。その後は、新進党、自由党と新党を結成しながら、03年に民主党に合流します。(略)
p97~
 外交政策についても、対米従属から、中国、韓国、台湾などアジア諸国との連携を強めるアジア外交への転換を主張するようになりました。「国連中心主義」を基本路線とするのもこのころです。
 小沢一郎は、09年2月24日に奈良県香芝市で「米国もこの時代に前線に部隊を置いておく意味はあまりない。軍事戦略的に米国の極東におけるプレゼンスは第7艦隊で十分だ。あとは日本が自らの安全保障と極東での役割をしっかり担っていくことで話がつくと思う。米国に唯々諾々と従うのではなく、私たちもきちんとした世界戦略を持ち、少なくとも日本に関係する事柄についてはもっと役割を分担すべきだ。そうすれば米国の役割は減る」と記者団に語っています。
 つまり沖縄の在日米軍は不要だと明言したわけです。
 この発言を、朝日、読売、毎日など新聞各紙は一斉に報じます。『共同通信』(09年2月25日)の配信記事「米総領事『分かっていない』と批判 小沢氏発言で」では、米国のケビン・メア駐沖縄総領事が記者会見で、「『極東における安全保障の環境は甘くない。空軍や海兵隊などの必要性を分かっていない』と批判し、陸・空軍や海兵隊も含めた即応態勢維持の必要性を強調した」と伝えています。アメリカ側の主張を無批判に垂れ流しているのです。
p98~
 この発言が決定打になったのでしょう。非常に有能だと高く評価していた政治家が、アメリカから離れを起しつつあることに、アメリカは警戒し、行動を起こします。
 発言から1か月も経っていない2009年3月3日、小沢一郎の資金管理団体「陸山会」の会計責任者で公設秘書も務める大久保隆規と、西松建設社長の國澤幹雄ほかが、政治資金規正法違反で逮捕される事件が起きたのです。小沢の公設秘書が西松建設から02年からの4年間で3500万円の献金を受け取ってきたが、虚偽の記載をしたという容疑です。
 しかし、考えてもみてください。実際の献金は昨日今日行われたわけではなく、3年以上も前の話です。第7艦隊発言の後にたまたま検察が情報をつかんだのでしょうか。私にはとてもそうは思えません。
 アメリカの諜報機関のやり口は、情報をつかんだら、いつでも切れるカードとしてストックしておくというものです。ここぞというときに検察にリークすればいいのです。
 この事件により、小沢一郎は民主党代表を辞任することになります。しかし、小沢は後継代表に鳩山由紀夫を担ぎ出します。選挙にはやたらと強いのが小沢であり、09年9月の総選挙では“政権交代”の風もあり、民主党を圧勝させ、鳩山由紀夫政権を誕生させます。ここで小沢は民主党幹事長に就任しました。
p99~
小沢裁判とロッキード事件の酷似
 ここから小沢はアメリカに対して真っ向から反撃に出ます。
 鳩山と小沢は、政権発足とともに「東アジア共同体構想」を打ち出します。 対米従属から脱却し、成長著しい東アジアに外交の軸足を移すことを堂々と宣言したのです。さらに、小沢は同年12月、民主党議員143名と一般参加者483名という大訪中団を引き連れて、中国の胡錦濤主席を訪問。宮内庁に働きかけて習近平副主席と天皇陛下の会見もセッティングしました。(略)
 しかし、前章で述べたとおり、「在日米軍基地の削減」と「対中関係で先行すること」はアメリカの“虎の尾”です。これで怒らないはずがないのです。
 その後、小沢政治資金問題は異様な経緯を辿っていきます。
p100~
 事件の概要は煩雑で、新聞等でもさんざん報道されてきましたので、ここでは触れませんが、私が異様だと感じたのは、検察側が10年2月に証拠不十分で小沢を不起訴処分にしていることです。結局、起訴できなかったのです。もちろん、法律上は「十分な嫌疑があったので逮捕して、捜査しましたが、結局不起訴になりました」というのは問題ないのかもしれません。
 しかし、検察が民主党の党代表だった小沢の秘書を逮捕したことで、小沢は党代表を辞任せざるをえなくなったのです。この逮捕がなければ、民主党から出た最初の首相が鳩山由紀夫ではなく、小沢一郎になっていた可能性が極めて高かったと言えます。小沢首相の誕生を検察が妨害したということで、政治に対して検察がここまで介入するのは、許されることではありません。
 小沢は当初から「国策捜査だ」「不公正な国家権力、検察権力の行使である」と批判してきましたが、現実にその通りだったのです。
 この事件には、もう1つ不可解な点があります。検察が捜査しても証拠不十分だったため不起訴になった後、東京第5検察審査会が審査員11人の全会一致で「起訴相当」を議決。検察は再度捜査しましたが、起訴できるだけの証拠を集められず、再び不起訴処分とします。それに対して検察審査会は2度目の審査を実施し「起訴相当」と議決し、最終的に「強制起訴」にしているところです。
p101~
 検察は起訴できるだけの決定的な証拠をまったくあげられなかったにもかかわらず、マスコミによる印象操作で、無理やり起訴したとの感が否めないのです。これではまるで、中世の魔女裁判のようなものです。
 ここで思い出されるのは、やはり田中角栄のロッキード事件裁判です。当時、検察は司法取引による嘱託尋問という、日本の法律では規定されていない方法で得た供述を証拠として提出し、裁判所はそれを採用して田中角栄に有罪判決を出しました。超法規的措置によって田中は政界から葬られたのです。(略)
東京地検特捜部とアメリカ
p102~
 実は東京地検特捜部は、歴史的にアメリカと深い関わりをもっています。1947年の米軍による占領時代に発足した「隠匿退蔵物資事件捜査部」という組織が東京地検特捜部の前身です。当時は旧日本軍が貯蔵していた莫大な資材がさまざまな形で横流しされ、行方不明になっていたので、GHQの管理下で隠された物資を探し出す部署として設置されました。つまり、もともと日本のものだった「お宝」を探し出してGHQに献上する捜査機関が前身なのです。
 東京地検特捜部とアメリカお関係は、占領が終わった後も続いていたと考えるのが妥当です。たとえば、過去の東京地検特捜部長には、布施健という検察官がいて、ゾルゲ事件の担当検事を務めたことで有名になりました。
 ゾルゲ事件とは(略)
p103~
 さらに布施は、一部の歴史家が米軍の関与を示唆している下山事件(略)
 他にも、東京地検特捜部のエリートのなかには、アメリカと縁の深い人物がいます。
 ロッキード事件でコーチャンに対する嘱託尋問を担当した堀田勉は、在米日本大使館の一等書記官として勤務していた経験があります。また、西松建設事件・陸山会事件を担当した佐久間達哉・東京地検特捜部長(当時)も同様に、在米大使館の一等書記官として勤務しています。
 この佐久間部長は、西松建設事件の捜査報告書で小沢の関与を疑わせる部分にアンダーラインを引くなど大幅に加筆していたことが明らかになり、問題になっています。
 この一連の小沢事件は、ほぼ確実に首相になっていた政治家を、検察とマスコミが結託して激しい攻撃を加えて失脚させた事件と言えます。
 『文藝春秋』11年2月号で、アーミテージ元国務副長官は、「小沢氏に関しては、今は反米と思わざるを得ない。いうなれば、ペテン師。日本の将来を“中国の善意”に預けようとしている」と激しく非難しています。
p104~
 アメリカにとっては、自主自立を目指す政治家は「日本にいらない」のです。必要なのはしっぽを振って言いなりになる政治家だけです。
 小沢が陥れられた構図は、田中角栄のロッキード事件のときとまったく同じです。アメリカは最初は優秀な政治家として高く評価していても、敵に回ったと判断した瞬間、あらゆる手を尽くして総攻撃を仕掛け、たたき潰すのです。小沢一郎も、結局は田中と同じ轍を踏み、アメリカに潰されたのです。
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中国の奥の手は「敵国条項」中西輝政 月刊WiLL:2013年2月号 2012年12月20日発売

    

p42~
【2】「敵国条項」という最終兵器
 アメリカ上院は11月29日、尖閣諸島に関して「日米安保条約第5条に基づく責任を再確認する」ことを国防権限法案に追加修正する案を全会一致で確認した。これは日本として大変、心強い動きである。
 とりわけ、アメリカの認識においても尖閣諸島が単に日米同盟の重視と言うに留まらず、アジア太平洋における戦略的要衝であることをこの決議は示している。
 仮に中国が尖閣を制圧し、同島に対艦ミサイルを配備すれば、日米は与那国島から石垣・宮古島の線にはもはや近寄ることができなくなる。
 となれば、東・南シナ海の結節点である台湾も落ちたも同然となり、アジアの戦略状況は一変する。また、南シナ海での米中の戦略バランスも一気に中国優勢に傾くとともに、日中対立の最前線として、尖閣だけでなく沖縄、南西諸島自体にまで一気に火が付きかねない。
 中国の狙いは、必ずしも領土や東シナ海の海底資源ばかりではない。中国にはどうしても沖縄全体を政治的に支配しなければならない理由がある。
 沖縄本島と宮古島の間の宮古水道は200キロほどの幅があるが、戦術ミサイルの発達した今日、このような狭いところを通らなければ太平洋に出られないという現状は、中国の海洋戦略にとっては決定的に不利な状況と言える。しかも、本島には強大な米空軍が基地を置いている。まさに沖縄、南西諸島周辺が中国の世界戦略にとって決定的な要地なのである。
p43~
 そのことを考えれば、中国の長期的な展望として、尖閣を陥し、沖縄を政治的に支配して駐留米軍を揺さぶり、自国の海洋戦略の拡大を目論んでいることは間違いない。
 アメリカ上院もこの中国の狙いを理解しているからこそ、この時期に尖閣について先のような決議を行ったのだろう。こうした壮大な構図に全く気が付いていないのは、「尖閣問題で事を荒立てるな」「経済を重視せよ」と叫ぶ日本の経済界のリーダーをはじめとする単なる「平和ボケ」以上に罪深い、国益よりも「経済優先」の日本人である。
■「三戦」ははじまっている
 しかも、中国はいきなり軍艦やミサイルで一気に事を荒立てるのではなく、いわゆる「三戦」、つまり心理戦、世論戦、法律戦を使う「超限戦」をすでに開始している。すでに述べたように、海洋戦略の障害である沖縄基地の米軍を撤退させるべく、日本のマスコミを使って盛んに行っているのは、まさに「対日心理戦」であり「世論戦」であろう。普天間問題に加えて、例の「オスプレイ配備反対」などもこれに当たる。
 また、日本の経済人をいま以上に骨がらみにするため、「依然として中国市場は魅力的である」と思い込ませる「心理戦」がはじまっており、「法外な”手切れ金”を払うのが中国のルールである」と突きつけるのは「法律戦」と言っていい。そして、これが一番恐ろしいことを知るべきだ。
 戦場で軍事兵器を使うだけが戦争ではない。「超限戦」や「三戦」と中国自ら称している。”戦火を交えない戦争”は、すでにはじまっているのである。
 対する日本は、こういった工作にめっぽう弱い。大正時代から、日本は中国による反日デモや暴動、国際連盟での対日宣伝活動、日本国内に手を突っ込んでの与党や世論の切り崩し工作など、軍事によらない、そして遥かに効果的な「対日攻撃」に悩まされ続けた。
 中国は相手の論理を逆用し、巧みに正面衝突を避けながら相手の動きをも利用して自国の優位をもぎ取る「水平思考」に長けており、これは当然、現在も変わらない。
 尖閣問題でも、この「水平思考」は発揮されている。たしかに、アメリカが尖閣で日米安保を発動することは疑いがない。それは、アメリカ自身の国益にとっても決定的に重要であるからだ。
p44~
 にもかかわらず、日本のメディアや識者のなかには、元外務省国際情報局長孫崎享氏のように、端的に「アメリカは尖閣問題で日本を助けることはない」という論者がいるが、こうした主張は大きな認識違いなのだ。
 だが、中国の超限戦的発想においては警戒すべき点が一つだけある。
 日本がそれを見過ごせば、日米安保を一撃で仕留める”必殺兵器”を中国に与えてしまうことになる。中国の「三戦」には、それほどの威力を秘めた「奥の手」がある。
 それは何か。
■中国が巡らせた「伏線」
 手がかりは、9月27日に楊潔篪外相が行った国連総会での一般討論演説である。楊外相は演説で、「日本は尖閣を盗んだ」と発言し、日本中を驚かせた。
 中国がこのような発言をしたときに注意すべきなのは、この発言に注目を集めておいて、他方で後々、重要となる伏線を用意していることが多いことだ。それゆえ、虚心に全体を見て本質的に何を意図しているのかに常に留意しなければならないのである。
 この演説も、一部をみれば「中国が自らの振る舞いも省みず、勝手なことを言っている」と呆れるだけの演説だが、全体を見れば実にポイントを押さえた恐ろしいほどの戦略的布石を打っているのである。
 楊外相演説のポイントは、次の3点だ。
 1、日本による尖閣国有化は、日本が再び中国の主権を侵害せんとする侵略行為である。
 2、日本のこのような行動は、第2次世界大戦後に生まれた国際秩序を破壊する行為である。
 3、日本の行為は、国連憲章の原則と精神に違反する挑戦である。
 もう、おわかりだろう。中国は国連憲章第53条、107条の「敵国条項」を使おうとしているのである。このことに気づいた時、「しまった」と私は思った。と同時に、つくづくこの国の「危うさ」を痛感した。
 過去十数年にわたって、私は敵国条項でけは一刻も早く撤廃すべき、と各種メディアで繰り返し訴えてきたが、その敵国条項がいまこの瞬間、いわば最悪の時に最悪の形で中国に利用されようとしていることが分かったからである。
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 実際、中国の伏線は周到に敷かれている。その後、11月6日にもラオス・ビエンチャンで開催されたアジア欧州首脳会議(ASEM)の場に集まった世界50か国の首脳を前にして、楊外相は再びこう述べている。
「尖閣問題に関する中国政府の立場は私が国連総会で明確にした通りであるが、重ねて次の点を強調しておきたい。(尖閣国有化によって)日本は中国への侵略を行っている」
「日本は反ファシズム戦争の結果を否定してはならない」
「日本の行動は、戦後の国際秩序と原則への重大な挑戦だ」
 中国が敵国条項を使い、日本を追い込もうとする方針を固めたとみていいだろう。
■抵抗許さぬ敵国条項
 すでに周知の人もあろうが、国連憲章の該当の2条にはこう書かれている。
〈第53条
 1、安全保障理事会は、その権威の下における強制行動のために、適当な場合には、前記の地域的機関を利用する。但し、いかなる強制行動も、安全保障理事会の許可がなければ、地域的取極に基いて又は地域的機関によってとられてはならない。
 もっとも、本条2に定める敵国のいずれかに対する措置で、第107条に従って規定されるもの又はこの敵国における侵略政策の再現に備える地域的取極において規定されるものは、関係政府の要請に基いてこの機構がこの敵国による新たな侵略を防止する責任を負うときまで例外とする。
 2、本条1で用いる敵国という語は、第2次世界大戦中にこの憲章のいずれかの署名国の敵国であった国に適用される〉
〈第107条
 この憲章のいかなる規定も、第2次世界大戦中にこの憲章の署名国の敵であった国に関する行動でその行動について責任を有する政府がこの戦争の結果としてとり又は排除するものではない〉
 要するに、第2次世界大戦中、国連加盟国(中国は原加盟国、つまり創設メンバーとされる)の敵国であった日本とドイツに対して、この「敵国条項」が適用される(イタリアなどは大戦末期に連合国に寝返っているので、適用については論争がある)。
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 この2国が「再び侵略戦争の動きを見せた時」、あるいは「第2次世界大戦で出来上がった国際秩序に対して、それを棄損する行為に出た時」には、国連加盟国は安保理の決議や承認がなくても、自国の独自の判断によって日本やドイツに対しては軍事的制裁を行うことができる、とされているのである。
 そして安保理やアメリカを含むいかなる加盟国も、それに対抗したり阻止したりすることはできない、とわざわざ念が押されているのである。
■照準は「日米同盟」瓦解
 この「敵国条項」を以て、中国のいう「超限戦」が貫徹されるシナリオはすでに早くから出来上がっていると見るべきだろう(日本とソ連=ロシアとの間では、91年4月の日ソ首脳会談の共同声明で「敵国条項」を適用しないことを合意しているが、中国との間にはその合意はない)。
 おそらく、中国の描く有力なシナリオはこうだ。中国が尖閣に漁民を装った特殊部隊を上陸させる。取締りのために日本が海保の巡視船を出すが、衝突が起こり、中国海軍の軍艦が沖合に姿を現す。
 これにより、後方から監視していた海上自衛隊も動き、実質、軍事衝突一歩手前までの事態になる。しかし、戦争を意味する「防衛出動」の発令は難しいから、北の工作船を追いかけた時の「海上警備行動」止まりであろう。
 アメリカの存在を頼みにしながら、日本政府が海上自衛隊に「海上警備行動」を発令し、動き出した瞬間、中国当局が次のような声明を発表する。
「中国は、国連憲章の定めを破り、再び侵略行動を開始した日本を制裁するため、国連憲章の『敵国条項』に則って軍事行動に入る」
 これにアメリカはどう反応するだろうか。上院で「尖閣諸島には日米安保が適用されるべき」と決議されたとはいえ、アメリカといえども国連憲章を無視することはできず、憲章に拘束されて、少なくとも初動が鈍るか、もしくは動きを封じられるだろう。こうなると、日本中はパニックに陥るだろう。
 そうでなくても、アメリカは尖閣で日中が揉めることを望んでいない。当然のことだが、他国の領土のためにアメリカ兵士の血が流れることも、アメリカ国民には受け入れがたい。ましてや、敵国条項を突きつけられれば、国際法を重んじるアメリカ世論の風向きは一気に「尖閣に介入すべきでない」との方向に傾く可能性が強い。
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 しかしそうなれば、日本人の日米安保への信頼は根底から揺らぐかもしれない。そして、これこそがまさに中国の真の狙い、つまり日米分断が一挙に達成される瞬間である。
 それは大げさに言えば、「戦後日本が終わる時」と言えよう。いずれにせよ、中国によって敵国条項を持ち出された時点で、日本国内も総崩れになりかねない。そしてその瞬間、「尖閣は中国のもの」となる。
 ここで分かるのは、中国が尖閣を歴史問題化しようとしていたのは、必ずしも韓国の竹島問題やロシアの北方領土問題と足並みを揃えるためだけではなかった、ということだ。日本の尖閣への実効支配の強化を「再侵略」と位置づけ、アメリカを国際法的に抑止し、日本を決定的に孤立させる中国の秘密兵器それが敵国条項なのである。
■何と愚かな日本外交か
 それにしても、なぜいまだに、第2次世界大戦当時の敵国条項が存在しているのか。
 実は1995年、国連創立50周年の年に日本とドイツが共同提案国となり、この条項を憲章から削除すべしという決議案を国連総会に提出している。そして、総会では賛成多数で採択されたが、批准書を寄託した国は定数に達しなかった。
 ここに国際社会の本音と建前を見る思いがするが、いずれにしても、この敵国条項は時代遅れ(obsolete)であり、削除に向けて作業を開始すると謳われていても、総会の決議だけでは何の効力も有しない。つまり、17年が経過した現在でも、この条項はいまだに効力を保っているのである。(略)
 当時、私は「常任理事国入りなど中国が賛成するわけがないから、動くだけ無駄である。その余力を、一刻も早い敵国条項の撤廃に向けるべきだ。そうしないと、この条項の放置は日本の安全保障にとって大きな脅威となるから」と多くの論文に書き、いくつかの論壇誌でも発表したのだが、外務省関係者は「中西さん、知らないんですか。この敵国条項はもう完全に死文化しているんですよ」と安易至極な態度であった。
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 こうした姿勢は、戦後の外務省の体質に深く根ざしている。外務省出身で国連大使にまでなった小和田恆(ひさし)氏が「ハンディキャップ国家論」を説いたが、そのよって立つ思想は憲法前文、9条であるとともに、敵国条項の放置もこの思想と共鳴し合うものだったのである。なぜなら、「諸国民の公正と信義に信頼して」日本の安全保障を委ねるのだから、あの侵略戦争をした日本は敵国条項の非を訴えるべきではない、というわけである。
 この思想の流れが、現在も日本の外務省に通底しているのではないか。「常任理事国入り」にはあれほど熱心に取り組みながら、敵国条項の問題は外務省内ではいまだに「タブー」扱いされているからである。しかし、この条項を放置しての「国連中心主義」の外交など、もともと成り立ちえないものだったのである。何と愚かな日本外交であったことか。
■外交の機先を制すべし
「中国が敵国条項を使って日本を危機に陥れようとしている」---実は、このことを活字にすることにはこの数か月、大いに悩んだ。
 第一に、中国に逆利用されはしないか、と危惧したためである。
 第二に、中国だけでなく、かねてより「尖閣は日本固有の領土ではない」「アメリカは尖閣問題では決して動かない」と言い続けてきた前出の孫崎享氏ら、親中派に論拠の補強材料を与えることにもなりかねないからだ。
 だが11月以降、ここまであからさまに中国が動いてきた以上、もはや一刻の猶予もない。(略)
 外交は機先を制さなければならない。外務省、政府、そして官邸が一体となって、早急に敵国条項の実質的空文化を再確認する決議を国連の場で強力に推進し、あわせてアメリカ政府や国際社会に対し、「敵国条項を中国が持ち出す可能性がある。総会で、撤廃に向けたより強い失効決議に賛成してもらいたい」と働き掛け、「このままでは中国に国連憲章を悪用されることになり、アジアの平和は瓦解する」と広く、そして大きな声で国際世論に訴えるべきだ。多くの欧米紙に一面広告を出してもいい。
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■「国連主義」の虚妄
 事態は一刻を争う。経団連会長のように、経済活動の停滞だけを心配して中国のご機嫌伺いをしている場合ではさらさらないのである。急がなければ、戦後日本が「平和の理想」と崇め奉ってきた国連憲章によって、日本が武力による攻撃を受け、しかも同盟国のアメリカも手が出せないという絶体絶命の危機に追い込まれかねないのである。
 「国連」の名のもとで中国の「軍事制裁」を受け、多くの日本人が血を流し、領土も奪われる事態を迎えることになれば、日本にとってそれは何という悲劇であろうか。「戦後日本」という虚妄を、これほど劇的に示す例はないだろう。
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文藝春秋2010年2月号【独裁者の肖像 小沢一郎「天皇観」の異様】 中西輝政
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『日本の悲劇 怨念の政治家小沢一郎論』 中西輝政著
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