舞鶴高1女子殺害 無罪 最高裁が示した有罪認定基準「被告が犯人でなければ説明がつかない事実」に立脚

2012-12-12 | 死刑/重刑/生命犯

【舞鶴女子高生殺害】状況証拠だけの立証に高いハードル
産経ニュース2012.12.12 18:16
 京都府舞鶴市の高1女子殺害事件で逆転無罪を言い渡した大阪高裁判決は、状況証拠しかない事件を判断する際の最高裁基準を踏襲したもので、「証拠なき事件」の立証のハードルが高いことを改めて示した。
 事件では、中勝美さんの自宅の家宅捜索などの捜査段階で、直接的な証拠を得られなかった。このため検察側は、目撃証言▽防犯カメラ画像▽中さんの「秘密の暴露」-といった状況証拠の3点セットを柱に事件の構図を組み立てた。
 この証拠関係について、大阪高裁は、証言は変遷している▽別人が映っている可能性を否定できない▽捜査機関が誘導した可能性がある-と退けた。
 状況証拠しか存在しない事件の事実認定をめぐっては、最高裁が平成22年4月、大阪市平野区の母子殺害事件の審理を差し戻した上告審判決で、「被告が犯人でなければ説明がつかない事実が含まれていなければならない」という有罪認定の基準を示した。
 今回の判決もこの基準に立脚し、1審判決を「不合理」と指弾した。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則が厳格に適用された結果ともいえる。
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【舞鶴女子高生殺害】64歳被告に逆転無罪 一貫し否認、防犯カメラ画像…犯人性が争点
産経ニュース2012.12.12 10:50
 京都府舞鶴市で平成20年5月、府立高校1年の小杉美穂さん=当時(15)=が殺害された事件で、殺人罪などに問われた無職、中勝美被告(64)の控訴審判決公判が12日、大阪高裁で開かれた。川合(かわあい)昌幸裁判長は無期懲役(求刑死刑)とした1審京都地裁判決を破棄、逆転無罪を言い渡した。
 中さんは捜査段階から一貫して犯行を否認。控訴審でも「私は無実。真犯人は別にいる」などと無罪を主張しており、犯人性が最大の争点だった。
 控訴審で弁護側は、1審が認定した検察側の状況証拠に反論。1審が「被告に似た男が現場周辺で被害者と一緒にいた」との目撃証言を前提に、現場近くの防犯カメラ画像を中さんと判断した点について「被告が犯人という偏見があった。顔の特徴の証言が変遷しており、信用できない」と主張した。
 また、中さんが遺留品のポーチなどの特徴を捜査段階で供述したことを「秘密の暴露」と認定されたのは、「取調官に誘導されたり、迎合したりして作り話を重ねた。犯人性の裏付けにならない」と指摘していた。
 1審判決は中さんが20年5月7日未明、舞鶴市内の雑木林で、帰宅途中に出会った小杉さんにわいせつな行為をし、顔などを多数回殴って殺害した、としていた。
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舞鶴 高1女子殺害事件〈中勝美被告〉 無罪=目撃証言「信用できない」―大阪高裁 2012-12-12 | 社会
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◇ 京都府舞鶴市女子高生殺害事件容疑者逮捕=これは杜撰だ。危うい。和歌山毒カレー事件を想起させる 2009-04-08 | 社会 
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舞鶴 高1女子殺害事件 中勝美被告 改めて無罪主張…控訴審初公判 大阪高裁 2012-06-13 | 社会  
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◇ 舞鶴高1女子殺害事件・・・早くも、すっかり有罪推定だ。2009-04-09 | 社会
 【決断 舞鶴高1女子殺害事件】 (上)乏しい物証 動機も不明 
 4月7日22時25分配信 産経新聞
 「美穂ちゃんも(中勝美容疑者を)よく知っていたはずなのに、何でついて行ってしまったのだろう」
 殺害された小杉美穂さんと親しかった女子高校生(16)はつぶやいた。殺人と死体遺棄容疑で逮捕された中容疑者。「変わった人」。近隣住民からはそうした評判が聞こえた。日ごろから通行人に大声を上げるなどの言動が近辺ではよく知られていたという。
 舞鶴市出身。関係者などによると、地元の高校を中退後、京都や大阪で自動車整備工や警備員、飲食店員などとして働いていた。職を転々としながら、所帯を持った妻や子とも離別。1人暮らしの自宅には、自転車で近辺を回って集めた大型ゴミが山積みになっていた。
 だが、顔見知りなどの前では、別の一面ものぞかせている。
 事件当夜、中容疑者が訪れた2軒の飲食店。先に訪れた行きつけの店の女性店主(68)は「本当にあの人なのか、今でも信じられない。店の隅で静かに座っていたし、こんな事件を起こすなんて…」。後に訪れた店の関係者も「女の子とデュエットするなど、気さくで明るい性格。怒ったり暴れたりすることはなかった」と証言する。
 粗暴にふるまう半面、人とのかかわりを求めるようなそぶりも見せる。複雑な感情を抱えているとみられる中容疑者は40年近く前、ある事件を起こしていた。
 昭和48年9月、当時25歳だった中容疑者は、内縁の女性=当時(26)=との別れ話のもつれから、滋賀県草津市の路上で女性とその兄を刃物で刺して殺害。さらに近くの民家に押し入って住人の女性2人を人質に立てこもった。
 ただ、人質となった女性(61)は意外にも「話している最中もずっと包丁を握りしめてやけっぱちな感じだったが、弱いところのある人だとも思った」と振り返る。最初は興奮していた中容疑者は、落ち着いて対応する女性と話すうち、次第に家族のことなど身の上を語り始めたという。
 殺人罪などで実刑判決を受け、十数年間の服役後に舞鶴へ戻った。行きつけの店の店主は「店ではヤマモトと名乗っていた。前科があったから隠したかったのかな」と話す。
 美穂さん殺害事件では、物証の乏しさのほか、現時点では動機も判然としない。解明は、今後の捜査の大きな焦点の一つでもある。
 中容疑者が逮捕された7日は、美穂さんの11回目の月命日だった。
 【決断 舞鶴高1女子殺害事件】 (下)更生の見極め 地域に重い課題  
 2009.4.9 21:14
 この春、全国の警察本部に、女性や子供が被害者となる殺人や強姦などの凶悪犯罪を未然に防ぐため、前兆となる公然わいせつやつきまといといった事件を集中的に取り締まる部署が設置された。背景には、昨年9月に千葉県東金市で起きた女児殺害事件や、舞鶴高1女子殺害事件などが念頭にあったとされる。
 舞鶴の事件で逮捕された中勝美容疑者は、女性につきまとうなどの行為を繰り返しており、地元では「怖い人」として受け止められていた。「彼が難しい人間としてこの辺りで知られていたのは事実。地域として何とかしなければと思っていた」。地域でボランティア団体を主宰している防犯推進委員の四方筆樹さんは振り返る。
 四方さんは約3年前から、中容疑者に対し、ボランティア活動に加わるよう呼びかけるなど地道に接触を続けた。その結果、最近では草むしり活動に参加するなど、徐々に変化を見せ始めていたという。「心を開き始めているように感じていただけに、もし彼が犯人だとするなら、無念というほかない」。四方さんは唇をかんだ。
 地域社会が直面するさまざまな問題を研究している「地域安全学会」(東京)の守茂昭さんは「地域にとって難しい人物をどう位置づけるか。互いに常に気を配り『心遣いの連鎖』を築くことが必要だ」と話す。
 だが、今回のケースではもう一つ難しい問題が浮かんでいた。重大犯罪で服役後、更生を目指す人とどう向き合うのか。中容疑者は36年前に殺人事件を起こし、十数年の服役後、故郷の舞鶴市に戻った。しかし、平成3年には市内で若い女性に対する傷害事件を引き起こしたこともあった。
 「(再犯者による殺人事件の)遺族は怒り心頭だと思う。更生の余地があるのでしょうか」。京都犯罪被害者支援センター(京都市)の宮井久美子事務局長は厳しい言葉を投げかける。
 36年前の事件で、仮に中容疑者が無期懲役の刑を受けていれば、法的に出所後は軽微な犯罪でも収監されたことになる。「犯罪者にも人権があることは理解できるが、本当に更生しているかどうかを見極めるのは難しい」。宮井さんは指摘する。
 関係者によると、平成3年の傷害事件の被害女性は今も舞鶴市内で暮らしており、昨年ばったり市内で中容疑者と出くわした。女性は「向こうは覚えていないかもしれないが、私は忘れない」と話したという。
 「この事件は絶対に解決しなければならない」。府警は難しい捜査の末に、中容疑者逮捕を決断した。しかし、今回の事件は、容疑者逮捕後もなお、社会に重い課題を突き付けている。
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〈来栖のつぶやき〉2009-04-09
 産経新聞【決断 舞鶴高1女子殺害事件】〈下〉になって、慌てて幕引き、トーンダウンした感じだ。〈上〉では、何とか真相を掘り起こそうとしているのかな、と思ったりしたが。問題の視点もずれてしまっている。人を先入観(色眼鏡)で観る、とりわけ過去のある人に対する偏見に私は強い恐れ・危惧を抱かないではいられない。こんな土壌では人は更生できない。人は、たった一人で更生するのではない。たった一人で生きてゆくのではない。人の中で生きてゆく。人との中で更生する。
“もし彼が犯人だとするなら、無念というほかない」。四方さんは唇をかんだ。”“「地域安全学会」”など、極めて不快だ。
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『芹沢一也・少年犯罪を考える~今でも日本はもっとも安全な国です』
【芹沢】 実際、防犯ボランティアをやっている人たちからは、「いままでバラバラだった地域が治安でまとまった」といった喜びの声が必ず聞かれます。防犯活動は地域住民にやりがいを与えているのです。「子供を犯罪から守るために、こういう効果が実際にある」という科学的な分析のもとになされているわけではありません。治安を守ること自体はもちろん悪くはありません。ただ、不安を打ち消すために防犯活動にいそしみ、治安管理に邁進しているところに問題があるのです。しかも、そのような治安管理の強化こそが、不安をさらに強めてしまっているという悪循環です。
Q.たしかに最近の防犯活動は過剰に感じます。ですが、そうはいっても実際に被害を受ける側となったら、周りにいないでほしいというのが心情だと思うのですが。
【芹沢】 そうした反応は、本書を書いたときにもありました。統計では少年犯罪や精神犯罪は減っているのはわかったけれど、でも「うちの子が殺されたらどうするのか」というロジックは必ず出てきます。
 少年犯罪の領域でも、数値的には少年法を改正するだけの現実はなかった。つまり、少年犯罪は凶悪化もしていないし、急増もしていない。統計的な事実としても根拠はないけれども、「少年に殺された私の息子の命はどうなる」という被害者側のロジックです。統計的な数字の議論は現在、命の危険性の前ではまったく説得力を持っていません。


「大阪母子殺害事件」差し戻し審 判決公判 大阪地裁 水島和男裁判長/森健充被告に無罪 2012-03-15 | 死刑/重刑/生命犯 問題 
 義父の刑務官に逆転無罪 大阪地裁差し戻し審判決
 産経ニュース2012.3.15 13:55
 大阪市平野区で平成14年に起きた母子殺害放火事件で、殺人などの罪に問われ、1審無期懲役、2審死刑の判決をいずれも最高裁が破棄した大阪刑務所刑務官、森健充(たけみつ)被告(54)=休職中=の差し戻し審判決公判が15日、大阪地裁で開かれ、水島和男裁判長は無罪(求刑死刑)を言い渡した。最高裁は事実誤認の疑いがあるとして審理を差し戻しており、その判断に沿う形となった。
 森刑務官は14年4月、平野区のマンションで、義理の娘である主婦=当時(28)=とその長男=同(1)=を殺害した後に放火したとして起訴されたが、一貫して無罪を主張。直接証拠はなく、状況証拠による立証の評価が焦点だった。
 差し戻し前の1、2審はマンション踊り場の灰皿にあったたばこの吸い殻72本中1本から森刑務官のDNA型が検出されたことを最大の根拠に有罪と認定。
 しかし最高裁は22年4月、問題の吸い殻が茶色く変色していたことから、事件以前に捨てられた可能性を指摘。さらに状況証拠による有罪認定について「被告が犯人でなければ説明できない事実が含まれる必要がある」と新たな基準を示し、審理を差し戻した。
 このため検察側は差し戻し審で、さまざまな条件でたばこを吸う実験を行い、「短時間でも変色はあり得る」との結果を提出。森刑務官の靴の中から採取された犬の毛のDNA型が被害者の飼い犬と同型だとする新証拠とも併せ、「被告が事件当日に現場にいたことは明らかだ」とした。
 これに対し、弁護側は喫煙実験を「非科学的」と一蹴するとともに、犬の毛のDNA鑑定についてもその精度や毛の採取・保管過程を問題視。さらに最高裁が差し戻し審で鑑定するよう求めた残る71本の吸い殻を、大阪府警が紛失していたことを「無罪証明の機会が失われた」と批判した。
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「大阪母子殺害事件」森健充被告 差し戻し審結審 判決は2012年3月15日 2011-12-05 | 死刑/重刑/生命犯 問題 
「大阪母子殺害事件」森健充被告 差し戻し審 5日結審/検察=決め手欠く新証拠2011-12-04 | 死刑/重刑/生命犯 問題 
「大阪母子殺害事件」差し戻し審初公判 大阪地裁 水島和男裁判長2011-10-20 | 死刑/重刑/生命犯 問題
「大阪母子殺害事件」事実認定の点で抑制的と言われていた最高裁は変わっても、依然変わらぬ検察2011-01-28| 死刑/重刑/生命犯 問題 
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