危うい原発高齢化時代
脱炭素で「40年超」増加 ■劣化に不安
福井知事再稼働同意 .
中日新聞 2021年4月29日 核 心 .
福井県の杉本達治知事が28日に関西電力の老朽原発再稼働に同意したことで、福島第一原発事故後に「寿命」と決められた40年を超えて運転する原発が出現することとなった。政府は2050年の脱炭素目標を掲げたことで、実現に向けて既存の原発をフル活用する方針。10年後には国内の原発の半数が40年超となる老朽原発時代の幕が開けるが、その実現性や安全性には疑問が付きまとう。(今井智文、中崎裕)
■大義名分
「一番大きいのは、志という意味で、国が原子力発電をどうしていくのか、明言されたことだ」。杉本知事は28日の記者会見で、同意した理由をそう語った。梶山弘志経済産業相が、前日のオンライン会談で語った言葉が念頭にある。
梶山経産相は会談で、政府が今月新たに掲げた30年度までに温室効果ガス46%減との目標に触れ「達成に向けて将来にわたり原子力を持続的に活用していく」と強調。「現在6%の原子力比率を二割程度まで高めることは必要不可欠。再稼働に最優先で取り組んでいきたい」と述べた。脱炭素を、これまで思うように進まなかった原発再稼働の大義名分にした形だ。
原発の発電比率を全体の2割程度にするには、30基程度の原発が稼働している必要がある。福島事故後、これまでに再稼働した原発は5原発9基。事故後に21基が廃炉となったため、既存の33基をほぼすべて動かしている状態になる。福井の3基以外に日本原子力発電東海第2原発(茨城県)も原子力規制委員会から運転延長を認められており、これらを含め30年時点で40年の「寿命」を迎えている原発は半数近い15基となる。
NPO法人「原子力資料情報室」(東京)の伴英幸共同代表は「ほぼすべての再稼働を前提に考えていることになるが古くなれば事故リスクも高まり、順調に進んでいくとは考えられない。2割達成は不可能だろう」と指摘しつつ、今回の知事同意について「他の原発も追随し、『例外』が常態化するのではないか」と懸念する。
■熱衝撃
老朽原発ゆえの危うさもくすぶる。杉本知事は会見で「古くなると不安として感じられることは当然ある。そのために規制委があって検査を行い、許認可を行う」と述べ、「一義的には安全性は国と事業者の責任」と語った。
老朽原発の大きな問題として指摘されるのが、核燃料を入れる原子炉圧力容器の劣化だ。長年運転すると、核分裂で飛び出す中性子を多く浴びて金属が硬くなり、トラブルがあった際などに急激に冷やされると、温度差によって容器に力が加わる「加圧熱衝撃」という現象で割れやすくなる。
配管などは老朽化したら交換されるが、心臓部の圧力容器は交換できない。このため電力会社は運転開始時から監視用の金属片を中に入れ、劣化の度合いを確認している。規制委と県の専門委は、今後の劣化予測も含めて問題ないと判断し、杉本知事もそれを同意の根拠に挙げる。
ただ、井野博満東大名誉教授(金属材料学)は「予測式で今後を評価するが、過去に試験用の金属片で確認した劣化度合いが予測を上回ったこともある。劣化が予測通り進むかは非常に不確実だ」と指摘。「劣化は原子炉ごとに違い、40年運転を前提にしているため金属片の残りが少ないなど問題は山積み。もし圧力容器が割れたら燃料が飛び出し、福島を上回る事故になる」と語る。
(以下略)
◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)
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〈来栖の独白 2021.4.29 Thurs〉
オイルやガス、何一つ資源のない日本。どうすればよいのか。