オランド新大統領/最初の試練は金融市場の反応/メルコジ後の仏独関係/G8・NATOサミット、議会総選挙・・・

2012-05-08 | 国際

外交・政治力を試されるオランド新大統領
重要日程が目白押し、ハネムーンなしで試練に直面
JBpress2012.05.08(火)(2012年5月7日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
 フランソワ・オランド氏にとって、エリゼ宮の奪取はとてつもなく大きい個人的な勝利だ。社会党にとっては、大統領を輩出していなかった17年間を経てのエリゼ宮奪還となる。そしてフランスにとっては、折しも同国と欧州が深刻な経済問題を抱えている時に起きる重大な政変だ。
 ニコラ・サルコジ氏を下しての勝利を満喫する時間はほとんどない。オランド氏自身、大統領就任からのハネムーン期間を楽しむことはないだろうと警告していた。
■最初の試練は金融市場の反応
 目先の試練は金融市場が示す反応だ。
 何しろ市場は、中道右派の現職大統領でドイツのアンゲラ・メルケル首相とともに欧州連合(EU)の財政規律条約を立案したサルコジ氏から、「メルコジ」の緊縮主義を公然と批判してきた中道左派の新大統領への権力移譲を警戒していた。
 選挙期間中に自身の「真の敵」は金融界だと断言したオランド氏にとって、市場がフランス売りを仕掛けないことが極めて肝要だ。フランスの債務残高は国内総生産(GDP)比86%に達してなお増加しており、市場が攻撃に回ったら、債務を賄うコストが上昇してしまうからだ。
 オランド氏は間違いなく、財政協定に成長促進策を加えることを求める自身の要求や、国内で雇用を創出するという公約が、フランスの財政赤字を来年GDP比3%に削減し、2017年までに赤字を解消する計画を損ねることはないという選挙前の発言を繰り返すだろう。
 だが、同氏は今後、いかにしてそれを実現するか、これまで曖昧にしてきた具体策を示すことを迫られる。
■ベルリン訪問、G8・NATOサミット、議会総選挙・・・
 一方、政権の樹立、難しいベルリン初訪問、緊迫する可能性のある米国での先進8カ国(G8)と北大西洋条約機構(NATO)のサミット、極めて重要なフランス議会総選挙がすべて、新政権発足から4週間以内に待ち受けている。
 オランド氏にとって、大統領就任は驚くべき成果だ。同氏はフランスの政治エリートを養成する国立行政学院(ENA)で教育を受け、この30年間、党書記および国会議員として国政の中心に身を置いてきたものの、閣僚ポストを経験したことは1度もない。
 昨年10月に社会党の予備選挙で勝利を収め、世論調査で大きなリードを固めた時でさえ、多くの人は、一般に好ましい人柄だが甘いと見られているオランド氏が、選挙運動に長けたサルコジ氏の手腕を前に崩れ落ちると思っていた。
■粘り強さを発揮して支持を獲得
 結局、オランド氏は粘り強い候補者であることを立証した。同氏は対立が絶えないことで知られる社会党を結束させたし、支持者の大きな熱意を駆り立てることはなかったものの、重大なミスは1度も犯さず、自身の最大の資産である対立候補の不人気を徹底的に利用した。
 オランド氏は、戦後唯一の社会党出身の大統領で1995年に2期目を満了して退任した故フランソワ・ミッテラン氏を頻繁に引き合いに出し、例えば75%の限界税率を課す公約など、左派の支持を維持できるだけの甘言を弄した。
 しかし、オランド氏は一方で、幅広い中道派に向けては、サルコジ氏の不安定な統治の後にフランス大統領の地位に尊厳と公正さを取り戻す穏健派として自身を描いてきた。
 オランド氏は今後、最も厳しい状況の中で効果的に国を統治できることを証明しなければならない。まず、この先1週間で、政権移行チームを発足させ、政権を率いる首相を選ばなければならない。オランド陣営はこれまでに、新大統領が差し迫った問題に取り組めるよう、政権交代の日程を予定されている5月15~16日から前倒しすることを模索すると語っていた。
 市場を安心させることを別とすれば、オランド氏にとって最も喫緊の課題は、公然とサルコジ氏の再選支持を表明していたメルケル首相を訪問することだ。
■メルコジ後の仏独関係
 オランド氏は、ユーロ圏を動かす仏独同盟を乱すことは望んでいないが、成長促進に関する自身の提案についてメルケル首相から譲歩を引き出す決意を固めている。それ以上に論議を呼びそうなのは、オランド氏が、ユーロ圏の危機との戦いで欧州中央銀行(ECB)により積極的な役割を果たすことを求めていくことだ。
 オランド氏は次に、5月19~20日に渡米し、G8とNATOのサミットに出席する。サミットでは、NATOの予定より少なくとも1年早い今年末までに、フランスの戦闘部隊をアフガニスタンから全面撤退させる決断について説明することになっている。
 翻ってフランス国内では、オランド氏の最優先事項は、邪魔されずに指揮を執れるよう、6月10日、17日の2回にわたって実施されるフランス議会選挙で、左派陣営の過半数を勝ち取ることだ。これは迅速に行動し、8月までに重要な選挙公約のいくつかを実施することを意味する(オランド氏は既に日程表を固めている)。
■オランド氏が早急に示さねばならない手腕
 こうした公約には、年金支給開始年齢を60歳から62歳に引き上げたサルコジ氏の年金改革を一部覆すほか、増税を行い、個人向けの銀行業を「投機的な」投資銀行業から切り離す措置などが含まれる。
 これらの措置は金融市場を動揺させるかもしれない。だが、オランド氏は、独立組織による予算の審査が終わるまで公共支出を凍結することも約束している。こうした微妙なバランスを取る綱渡りこそ、オランド氏が早急にやってのけられることを示さなければならないことだ。  By Hugh Carnegy


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