大の里ら若手の時代だ 尊富士が歴史の扉を開けた 2024.03.26

2024-03-26 | 相撲・野球・・・など
大の里ら若手の時代だ
 九重龍二の千代魂
 中日新聞 朝刊 2024.03.26
 夏目漱石が小説「こころ」の連載を始め、サラエボ事件が起こり、第39代横綱前田山が生まれた。1914年はそんな年だったという。
 尊富士が歴史の扉を開けた。110年ぶりの新入幕優勝。新十両で優勝した翌場所でのこの偉業を、歴史に名を刻む瞬間を、目の当たりにできたことを一相撲人として、うれしく思う。私の師匠千代の富士関も北の湖関も大鵬関でさえなし得なかった。まさにミラクル。神懸かっていた。
新入幕優勝から一夜明け、記者会見で笑顔を見せる尊富士=大阪市東成区で
新入幕優勝から一夜明け、記者会見で笑顔を見せる尊富士=大阪市東成区で
 
 番付を上がっていく者は、怖いものがない。特に新入幕力士は、対戦者の取り口をテレビで見ているから長所や短所は頭の中に入っている。同部屋の兄弟子からも情報収集できる。一方、受けて立つ側はそうはいかない。ましてや横綱・大関陣は新入幕など気にも留めていない。関脇・小結でさえ対戦するとは思っていなかったはずだ。
 それにあの馬力。場所中も指摘したが、二の矢、三の矢を継ぐのも早い。千秋楽は右足首を負傷しても真っ向勝負で相撲を取った。根性、負けん気の強さも将来を楽しみにさせる。
 まだ自らの長所を自分でも全て理解できていないのではないか。懸命に相撲を取っているが、常に全力でやみくもにも映る。そのさじ加減をコントロールできるようになればさらに成長できる。
 横綱が途中休場し混戦となったことも影響しただろう。大関霧島もけがをしていたようだ。さまざまな要因が重なったことは間違いない。だが、尊富士は強かった。嫉妬してしまうほどの能力を秘めている。右足首のけがが後を引かないことを祈っている。
 研究される側に回る来場所は、初日から上位と当たることが予想される。その中で、安定して好成績を残せるかどうか。そうでないと三役に定着できない。その点、幕内2場所目の大の里は、連続の11勝で実力を示し、夏場所での三役が見えてきた。
 前に出る力に秀でた尊富士と大の里。春場所は、この2人の時代が到来することを予感させた。
 (元大関千代大海)
 
 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)
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