【ウイグルの真実】中国が与えた名ばかり「自治区」 あらゆる手段で追い込まれ人間以下の扱いも
zakzak 2015.05.08 ★(上)
日本を含む国際社会で2013年以降、ウイグルに関連するニュースが急増している。習近平国家主席が同年3月に就任し、中国政府がウイグル人への弾圧を強化し、それに反発するウイグル人の抵抗が激しくなっているからである。数多くの犠牲者も出ている。
世界的な人権活動家で、亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル総裁は「ウイグル人への弾圧は『人権侵害』といったレベルではない。1つの民族の存亡がかかっている」「『歴史上最も厳しい弾圧』と言っても過言ではない」と訴えてい る。
ウイグル人は、中国・新疆ウイグル自治区に居住するトルコ系ムスリム(イスラム教徒)である。ウイグルとは紀元3世紀からの自称で、ウイグル語で「団結」「連合」を意味する。自治区の面積は日本の約4倍もあり、人口約2000万の半分がウイグル人だ。
現代ウイグル人は、太古から、自治区内にあるタリム盆地のオアシスに定住して農業を営んできた人々と、紀元前4、5世紀ごろから、中国とロシア国境にある天山山脈周辺の草原地帯から南下してきたトルコ系遊牧民が混血した民族の末裔(まつえい)である。
自治区内には多くの仏教遺跡が残っている。インドで始まった仏教が紀元1世紀以降に広がり、高度な仏教文明が花開いていたからだ。西遊記のモデルである玄奘(げんじょう)三蔵法師もウイグルを通ってインドに向かった。仏教は古代シルクロードに沿って、東方の中国や朝鮮半島、日本へと伝わった。紀元5世紀から文字を持ち、8世紀からウイグル文字が使われた。
ウイグル人がイスラム教を受け入れたのは10世紀初め。タリム盆地周辺から中央アジアの一部を支配下に置くカラハン王朝がイスラム教を国教にしてからだ。
中国の王朝時代、ウイグル人は中国やモンゴル遊牧民族の圧力を受けながらも、独立と従属を繰り返していた。1944年には「東トルキスタン共和国」を樹立したが、中国共産党が49年に政権を握ってからは中国に併合され、55年に新疆ウイグル自治区という名称になった。
中国政府は、ウイグル人に「自治権」を与えたはずだが、実際は名ばかりの「自治区」だった。ウイグル語の使用や、宗教の自由などへの厳しい制限が科せられ、漢民族の大量移住が進められている。最大都市ウルムチでは、人口の約8割が漢民族になったという。
政治や経済、教育、外交、軍事など、あらゆる手段を使って、ウイグル人は追い込まれている。漢民族に比べて、さまざまな差別と不利益を受けている。3等市民、4等市民、あるいは人間以下の扱いを受けている。ウイグル人はまるで刑務所の中で、この世の地獄で生きている。
【ウイグルの真実】領土拡張主義の矛先は沖縄にも 「テロとの戦い」口実に少数民族排除する中国
2015.05.09 ★(下)
国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」は4月上旬、2014年の世界の死刑に関する報告書を発表した。これによると、中国が国・地域別では突出しており、「数千人に上る可能性がある」と指摘。新疆ウイグル自治区で頻発する暴力行為に対し、「テロとの戦い」を口実に弾圧手段として死刑を利用していると批判した。
前回の連載で、ウイグル人は「この世の地獄で生きている」と書いたが、漢民族の支配は非常に巧みで、差別と弾圧は広範囲にわたっている。
「国家統合」の名の下、漢民族の生活様式がウイグル人に押し付けられている。中国語教育が強制され、学校ではウイグル語の使用が制限されている。ウイグル人はイスラム教徒なのに、イスラム的な教育や服装、例えば、男性のあごひげや、女性の顔隠しスカーフは取り締まりの対象になっている。就職でも差別を受け、経済発展から取り残されている。
習近平国家主席率いる中国政府は、どうして、ここまで苛烈なのか。
私には、ウイグル人を民族として抹殺しようとしているとしか思えない。歴史を振り返れば、ウイグル人は侵略者に屈服したことがない。武力で制圧されて一時は従属しても、独立を勝ち取ってきた。「中華民族の偉大なる復興が、中国の夢」だと公言する習主席にとって、ウイグル人の「独立」という悲願は障害でしかないのだろう。
チベット自治区への対応もそうだが、中国の「自治区」は決して自治権を与えるものではない。単に、独立の夢を摘み取る「罠」に過ぎない。中国の究極の目的は、ウイグル人やチベット人など、少数民族のアイデンティティーを抹殺して、漢民族に同化させることだ。これを受け入れる者は生かすが、抵抗すれば「テロとの戦い」などを口実に排除する。単純明快である。
中国は壮大な野望を持っている。アジアにおける覇権の樹立だ。軍事費を増大させ、東シナ海や南シナ海で力による領土変更を強行しようとしている。こうした領土拡張主義の矛先は日本にも向かっており、沖縄が狙われている。
中国共産党機関紙・人民日報は13年5月、沖縄を「明・清両朝の時期には中国の藩属国」「(帰属が)未解決の問題」とする論文を掲載。中国メディアは沖縄での「琉球独立論」にエールを送っている。
ところが、沖縄県の翁長雄志知事は4月に訪中し、「アジアの発展が著しいなか、沖縄が注目されていることを、ぜひご認識いただきたい」「琉球王国はアジアの懸け橋となった」などと語ったという。中国に“屈服”するつもりなのか。
沖縄県民の方々には、ウイグルの悲惨な現状を知ってほしい。万が一、沖縄が「琉球自治区」になれば、沖縄の人々は私たちと同じ運命をたどるだろう。漢民族は甘くはない。「日本を裏切る沖縄は、中国をも裏切る」と必ず考えるはずだ。
沖縄の未来は日本にあり、ウイグルの未来は独立にある。 =おわり
<筆者プロフィール>
トゥール ムハメット
農学博士。ウイグル人権活動家。1963年、ウイグル生まれ。85年、中国農業大学卒。99年、九州大学大学院博士課程修了。新疆農業大学講師、九州大学外国人研究員など歴任し、2000年から民間会社勤務。13年、国際ウイグル人権民主財団日本全権代表、15年、世界ウイグル会議日本・東アジア全権代表。月刊誌『WiLL』などに、ウイグル問題で寄稿。
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