匿名性と凶悪犯罪 名古屋女性拉致殺害事件

2007-08-29 | 社会
中日新聞【社説】
女性拉致殺害 凶悪犯罪招いた匿名性
2007年8月29日
 犯罪は時代を映す鏡だという。凶悪な名古屋の女性拉致殺害事件が映し出したのは、暴走する闇サイトの匿名性だ。情報化社会のマイナス面を直視し、早急に対策を考える必要がある。
 逮捕された三人の男は、通称「闇の職業安定所」と呼ばれる携帯電話の匿名サイトで犯行のわずか一週間前に知り合った。互いに本名を名乗らず、偽名で呼び合って犯行に及んでいたという。
 「金を奪うなら弱い女性がいい」「誰でもよかった」。実際に、通りすがりの女性を拉致し二時間後に殺害して金を奪い、遺体を岐阜県内の山中に遺棄した。被害者や遺族の無念はいかばかりか。
 ネットでは、匿名で誰もが書き込める掲示板が大流行だ。通常は趣味や生活情報の交換で、それ自体、犯罪性はない。
 だが、匿名性は反社会的行為にも利用されやすい。犯罪の温床とされる出会い系サイトは代表例だ。今回の事件は容疑者の一人の通報で発覚したが、これがなければ匿名が壁になって捜査も難航しただろう。
 「闇の職安」は、振り込め詐欺に利用する架空口座を作らせたり、携帯電話を契約させるため金に困った人を集めようとして始まった犯罪目的の掲示板の総称だ。就職氷河期と呼ばれたころから増え始めた。
 容疑者らはいずれも、三十-四十代だ。この世代には、思うような就職先が見つからず、派遣など非正規雇用に流れ込んだ若者が少なくない。不安定な非正規雇用を転々として生活してきたが、中年になって非正規雇用からも締め出されようとしている現実もある。
 容疑者らの犯行は、あまりに悪質かつ短絡的で、弁護の余地はない。しかし、背景に努力しても不利な待遇から抜け出せず格差が広がる日本の現状を指摘する識者もいる。生活基盤が崩れ、将来を絶望した世代の犯罪続発への懸念である。
 犯罪を助長する「裏求人」「裏募集」などと呼ばれる類似のサイトは名前を変えつつ、目的を達すると短期間で閉鎖してしまう。警察もいたちごっこで追い切れないのが実情だ。
 ネット犯罪を防ぐには業者に通信記録の保存を義務づけるなど法規制の強化が必要である。
 しかし、法規制は言論の自由や個人のプライバシーを侵しかねない側面を持っている。監視社会を招かぬと同時に凶悪犯罪を防ぐには、どのような方法が可能なのか。司法、行政、有識者らでプロジェクトチームを作り、具体的な対策を練る時期にきているのではないか。
-----------------------
<来栖のつぶやき>
 上記記事に同感する。私事だが、或る一人の人(匿名)から膨大な量の「メール」・ブログへの「コメント・TB」が集中した。脅迫強要がその内容であった。刑事的措置を講ぜざるを得ない場合を勘案し(証拠として)、3点セット(メール・コメント・TB)を全て保存した。ブログのコメント及びTBについて、「ブログ作成者の承認後反映」から「受け付けない」に設定を替えた。
 数日を経て、上記3点セットの送信は止んだ。けれども、集中した量も然ることながら執拗な脅迫強要に加え、私に対する呼称も醜悪を極めたもので、言葉による暴力にも痛く傷ついた。無論、全てを閲覧した(できた)わけではない。
 ネット社会の匿名性をおぞましいものに観じないわけにはいかない。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。