法的な根拠を示さず市民感覚を押し通し、無罪判決が相次げば、検審自身が制度を壊すことになる

2010-06-12 | 裁判員裁判/被害者参加/強制起訴

記者の目:検察審査会、2件の強制起訴=吉川雄策
 兵庫県明石市の歩道橋事故(01年)と、JR福知山線脱線事故(05年)で、検察審査会(検審)の議決に基づき、元県警明石署副署長とJR西日本の歴代3社長が強制的に起訴された。市民の意見が直接反映され、司法制度の大きな変化を実感した。しかし、審査過程や議決の全文などの詳細は公開されない。検察審査会法改正(09年5月施行)に伴う権限強化で、強制起訴が相次いだのを機に、もっと市民に開かれた組織にすべきだ。
 ◇市民感覚で判断
 歩道橋事故の審査が大詰めを迎えたころ、神戸地裁の会議室を後にする審査員を見かけた。ジーパンやTシャツ姿の人もいた。「本当にごく普通の人がやっているんだ」。改めて思ったが、取材を進めるにつれ、その「密室性」とのギャップを強く感じた。
 検審は、検察の不起訴処分をチェックし、必要に応じて再捜査を求める制度だ。法改正によって、検察が不起訴とした事件も「起訴すべきだ」と2回議決すれば強制的に起訴されることになった。
 検審の議決書は、裁判所の掲示板で公開される。しかし全文ではなく要旨だけだ。有権者から選ばれた11人の審査員は性別を除き、年齢や職業なども明かされない。起訴議決には8人以上の賛成が必要だが、何人がそう判断したのかも公表されない。要旨のほかは「あとは推し量れ」と言わんばかりだ。刑事事件の被害者参加制度で、希望する遺族らに捜査資料などが公開されるのとは対照的に、申立人にも明らかにされない。JR脱線事故で申立人の遺族が「これでは議論の過程がよく分からない」と不満を漏らしたのもうなずける。
 検審の事務局を務める神戸地裁は取材に対し、歩道橋事故の審査員は男性7人、女性4人で平均年齢42歳、JR脱線事故は男性6人、女性5人で平均年齢53歳とだけ明らかにした。しかし、それ以外は「審査員を務めた市民の負担が重くなる」と譲らない。
 JR脱線事故では、判断について検審の説明が必要だと感じた場面があった。検審は09年10月、井手正敬被告(75)ら歴代3社長が委員長を務めた社内の総合安全対策委員会などで、別の脱線事故についてATS(自動列車停止装置)が設置されていれば防げたと指摘されていたなどとして、福知山線の事故は予見できたと判断、「起訴相当」と議決した。その後、神戸地検は再び3人を不起訴とした際、「検審は捜査資料の内容を誤解している可能性がある。再審査では具体的証拠に基づいて判断してほしい」と異例の指摘をした。しかし、検審は今年3月、1回目の議決と同じ根拠で再び過失を認定。さらに「可能な限りの安全対策をとることは市民感覚として当然」とした。
 ◇賛成人数公表や会見などが必要
 歩道橋事故は発生から約9年が経過。検審は「共犯の公判中は時効が停止する」という刑事訴訟法の規定に基づき、業務上過失致死傷罪の公訴時効(5年)は成立していないと判断した。だが、「過失犯での時効停止例はない」と疑問視する専門家もいる。
 両事故の起訴議決は「これほどの大事故で、なぜ幹部の責任が問われないのか」という、率直な気持ちに基づいたものだろう。審査には弁護士1人が審査補助員として参加するので「素人考え」だけによる結論ではない。しかし、JR脱線事故を捜査した検察官は「法的な根拠を示さず『問答無用』で市民感覚を押し通せば、無罪判決が相次いだ場合、検審自身が制度を壊すことになる」と指摘する。
 こうした批判を受けないためにも、まずは賛成者の割合や少数意見、議決全文を公表するなど、起訴議決に相当の理由があることをより詳細に示すことが必要だ。そして、起訴後など一定期間がたてば審査の議事録を公開するなど、審査の過程も検証できるようにすべきだ。
 また、審査員は法律で「審査の秘密」を漏らすことができない。しかし、裁判員裁判の裁判員と同様、判断に迷った心情や不安、制度への疑問などを記者会見などで明かす場があってもいいと思う。そうした積み重ねが、制度への信用や市民の自覚を高め、より的確な審査につながるのだと思う。神戸司法記者クラブは、審査員が半年の任期を終えた段階で会見に応じてもらえるよう、神戸地裁に調整を求めたが、地裁側は「守秘義務に反する発言が出る恐れがある」として応じない。
 「市民感覚」を生かすべく権限が強化された検審が、市民の疑問に応える視点を欠いた不透明な存在であっては意味がない。(神戸支局)毎日新聞 2010年6月11日

「悪役の汚名を着せられ、鳩山首相に引導を渡される形で表舞台から消えるのは惜しい」山口二郎2010-06-05 | 政治/検察/メディア/小沢一郎 
〈来栖の独白〉
 鳩山さんは大きな過ちを犯した。
 「政治とカネ」の問題である。鳩山さんの「カネ」の問題は元秘書も認め、有罪が確定している。が、小沢氏の陸山会に絡む政治資金規正法の件は、小沢氏自身起訴すらされていない。なのに、鳩山さんは小沢氏を有罪と決め付け、「引いてください」と辞任を迫った。検察が起訴もせず(できず)、裁判所の机上にも載っていないものを鳩山さんは有罪と決め付け、辞任を迫った。八方美人の鳩山さんらしく「空気」を読んでの先走りである。
 小林千代美議員に対しても然りである。辞任を迫ったが、北教組事件について小林議員の関与は何ら解明されていない。
 この罪責は重大だ。もしも小沢氏が強制起訴され、審理の末、無罪となったなら、鳩山さんはどう責任をとるのだろう。
 鳩山さんに限らず、事情聴取或は逮捕・起訴だけで、犯罪者・有罪のごとくに受け止め、辞任を迫る国会議員のお気楽、「市民感覚」にもあきれるばかりである。推定無罪もなにも、あったものではない。
 このようにダーティな印象を醸成させる検察の手法自体、罪深い。そのお先棒を担ぎ、実像とはおよそ懸け離れたイメージを蔓延させるのが、巨大メディアである。
 7月には、恐らく石川知裕議員の公判が始まるだろう。真実は、これから明らかにされる。
 議員のセンセイたちも、国民も、メディアも、ほとぼりを冷まし、現象の奥にある真実を見、その先に視野を広げてほしい。
 「悪役」の汚名を着せられ去ってゆく小沢氏の無念を思うとき、胸が痛む。「鳩山さん、最後の最後で、とんでもない事実誤認をされました」。

小沢氏不起訴は相当  類い稀なるポピュリズム「検察審査会」=実にくだらないもの


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