オウム死刑執行 「宗教が多くの人を不幸にした」松本サリン被害者 河野義行さん記者会見 詳細 2018/7/28

2018-08-12 | オウム真理教事件

オウム13人死刑で豊橋の河野さん会見 
2018/07月27日(金)00:01掲載
 地下鉄サリン事件などを引き起こした一連のオウム真理教事件をめぐり、法務省は26日、死刑が確定した教団元幹部6人の刑を執行した。今月6日には、教団元代表ら7人の死刑を執行しており、13人全員の執行を終えた。松本サリン事件で被害者となり、捜査対象にもされた豊橋市の河野義行さん(68)は同日、市内で記者会見し「宗教はもともと人を幸せにするものだが、結果的に自分自身や自分の家族、市民の多くを不幸にしてしまった。非常に残念。死刑執行は悲しい出来事。そんな思いがします」と心境を述べた。
  1994(平成6)年、長野県松本市内で発生したサリンの散布で、当時、河野さんは被害を受けるだけでなく、容疑者扱いされ、報道被害を受けた。
  河野さんは「人の命はかけがえのないもの。人の手によって失われるのは反対」と死刑制度に対する基本的な考えを説明。「執行は法律だから責めることはできない」とした上で、オウム死刑囚13人全員の死刑執行に「真意は分からなくなった。法律的には刑が確定しているが、『本当にやったの』と聞きたかった」との思いを明かした。
  サリン被害を受けた妻も亡くした河野さん。「突然苦しみ、心肺停止になり、14年経って亡くなった。オウム真理教がやったと言っても分からない。体を動かせず、しゃべることもできなかったから、亡くなった時、言ったのは『やっと自由になれたね』」と振り返り、死刑執行に「「(妻に)あえて言わなくても見えているし、伝えていない」と話した。
  今後、一連の事件の風化が懸念されるが「風化していくことを止めることはできない。私にとっては、人生で不幸な出来事だが、現実であって受け入れるしかない。人生のひとコマであってよしとしている」と心情を吐露。ただ、松本サリン事件などを通じ、報道や警察の捜査など複数の反省点を挙げ「教訓があったと思う。それぞれの仕事をわきまえ、やっていくことではないか」と指摘した。
  豊橋に戻って2年余り。今後の生活に関しては「穏やかな生活で暮らしていきたい」と話した。(中村晋也)
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地下鉄サリン被害者 河野さん記者会見詳細 
 2018/07月28日(土)00:00掲載
 地下鉄サリン事件など一連のオウム真理教事件で、教団元幹部の死刑囚13人全員の刑執行が終わった。1994(平成6)年、長野県松本市で起きた松本サリン事件で被害者となり、捜査対象にもされた豊橋市の河野義行さん(68)が26日、豊橋市内で記者会見し、胸中を明かした。会見の詳細を掲載する。
ー-今の心境は?
  死刑執行は朝、高知県にいて電話で聞いた。オウム真理教の人たちのスタートは、言ってみれば「最終解脱」と「民衆の救済」ということで始まった。修業する中で突然方向が変わり、事件を起こしてしまったということ。もともと、宗教は人を幸せにしなければいけないものだが、結果的には自分自身あるいは自分の家族、大勢の市民を不幸にしてしまった。そのことが非常に残念だなと思う。動機が良くても結果が良くなった。死刑執行が行われたことは、悲しい出来事、そんな思いがする。
ー-悲しいという思いを詳しく。
  平成10年前後、東京拘置所で、死刑執行された井上(嘉浩)さん、新実(智光)さん、遠藤(誠一)さん、中川(智正)さんの4人と会っている。彼らのオーラはとても清らかで、話してみると、やはり真面目だった。会うことで友達ではないが、なんとなく親しみのある人になる。そういう人がいなくなってしまったということなので、寂しいとか悲しいという感情は、そこからきていると思う。
ー-13人が死刑執行され、かなり異例なケースだと思うが。
  執行時期や執行人数とか、異例の繰り返しだと思う。法律では6カ月以内に執行しなければいけないのに、なぜ今までされなかったのか。また、再審請求を出した井上さんが執行されたのはなぜか、法務省には説明してほしい。
ー-これで関係者全員が死刑執行され、本当の真相が聞けない状況になったが。
  事件の真相というのは、その人に聞かないと心の内は分からない。本当の真実は分からなくなったと思う。必要なことは再発防止。法務省や警察庁がどのような再発防止策をとり、現在は万全なのか。テロが二度と起こらないための方策は終わっているのか、ぜひ明らかにしてもらいたい。
ー-誰に何を聞きたかった?
  全員に「本当にやったの?」と聞きたい。裁判で刑は確定しているが、麻原彰晃さんに会えたら「否認していたが、本当は嘘なの?」と確認したい気持ちはある。
ー-刑の執行前と後で気持ちの変化は?
  すべての人を許している。もういいじゃないかと思っている。やったことに対しての相応の罰を執行したということ。執行直前の(死刑囚の)心境については気になる。やっと自由になれるという気持ちか、恐怖か。それを聞いてみたい気持ちはあるが、いずれにしても、私自身に気持ちの変化はない。
ー-今も死刑制度について反対の考えを持っている?
  人の命はかけがえのない大切なもの、それが人の手によって失われるのは反対。冤罪もある。自分自身の松本サリン事件のときは、九分九厘、犯人はあいつだと言われ、退院する時、記者の皆さんも予定稿を書いていた。人は間違えることがある。例えば100万人に1人なら冤罪で死刑になってもいいのかという話。確率の問題ではなく、あってはならないことだと思う。人は間違うという前提の中で(死刑)制度が維持し続けているのは命軽視ではないか。ただ、執行に関しては今の法律に基づき行われたので、執行した人を責めるべきではないと思う。
ー-亡くなった妻澄子さんに報告は?
  死刑執行については言っていない。妻は、家にいて突然苦しくなって心肺停止になり、意識は戻らず14年たち亡くなっていった。オウム真理教がやったと言ってもおそらく分からないと思う。体を動かすこともしゃべることもできない、刑務所や拘置所よりももっと窮屈な状態で14年間いた。妻が亡くなるときに「やっと自由になれたね」と言葉をかけた。
  13人の死刑囚たちは20年近く自由を奪われ、窮屈な思いをしてきた。そんな中で刑が執行された。ある意味では彼らはやっと自由になれたんだなという思いがある。本当に彼らにとっての極刑が死刑とは思っていない。今回の執行により、過去の罪の償いも終わったと思う。彼らは普通の人になった。深追いして彼らを傷つけるようなこと、あるいは執行された(死刑囚の)遺族の方は非常につらい思いをしている。世の中としてそういう人をケアしなきゃいけない状況。しかし、場合によっては遺族もバッシングされる、そんな世の中は早くなくなってもらいたい。
ー-きょう高知にいたのは?
  講演のため。朝、チェックアウトの前に電話がかかってきて(執行を)聞いた。死刑執行を受け、コメントを出したり、取材に応じたりしたくなく、7人の刑が執行された6日は一律に拒否したが、家に(報道陣が)大勢集まり、家族もいずらくなり避難した。そういう意味では、松本サリン事件の当時と変わらないではないか。皆さんには、ぜひ配慮していただきたい。
ー-事件から20年以上たち、事件の風化が危惧されるが、どのようにしていくべきか。
  基本的に事件はどうしても風化していく。止めることはできないと思う。私にとって、人生の中であった不幸な出来事、現実だから受け入れていくしかない。自分の中の人生の不幸な一コマ、あったことは避けようがないので、それはそれでよしとしている。
  だが、事件の中でいろいろな教訓があったと思う。松本サリン事件では、非公式な情報が一人歩きした。事件発生後たった2日間で、なぜ私が世間から殺人鬼と呼ばれないといけなかったのか。報道も反省、教訓にしてほしい。長野県警の捜査に関しては、おおむね法に沿って適切に行われていたと思っている。ただ、退院後、2日間の事情聴取は無理し過ぎたという感じがある。いきなり自白の強要が行われたり、医師の診断書を無視して長時間の事情聴取を行ったり、子どもに対して嘘を言ったり、警察にも教訓があると思う。山梨にあったサティアンに不法な建築物がどんどん建っていったのも、どう考えてもおかしい。役所がやるべき仕事を怠ったと言われても仕方がない。それぞれが教訓を持ち生かしてもらう、事件は風化してもしょうがないと思っている。

 ◎上記事は[東愛知新聞]からの転載・引用です
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2018年7月26日 21時12分
「宗教が多くの人を不幸にした」 松本サリン被害者の河野さん
 オウム真理教による一連の事件で死刑囚13人全員の刑が執行されたことを受け、松本サリン事件で被害を受けた河野義行さん(68)が26日、愛知県豊橋市役所で記者会見し「宗教は本来、人を幸せにしなければならないのに、死刑囚自身やその家族、市民を不幸にした。残念だ」と話した。
 河野さんは死刑囚13人のうち新実智光元死刑囚=執行時(54)=ら4人と過去に面会したことに触れ「清らかな印象を受けた。会ったことによって親しみが湧いた人が亡くなったのは悲しい」と心情を吐露した。(共同)

 ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用です
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中日新聞 2018/8/12 日曜日朝刊
 こ の 人   松本サリン事件で被害 死刑制度反対を訴える 河野義行さん
 長野県松本市の「松本サリン事件」で、被害者にもかかわらず警察やマスコミから犯人視されてから24年。一連のオウム真理教事件に関与した13人の死刑囚は7月、全員死刑に処せられたが、「命は何物にも代えがたい大切なもの」と死刑制度反対を訴える。
 反対を貫くのは自分自身が濡れ衣を着せられたからだ。「人が裁くものに間違いゼロなどありえない。自分も真面目に生きてきたのに『9分9厘、河野が犯人』と言われた。(間違いで)命を取られることを容認してよいのか」
 松本サリン事件がきっかけで意識不明となっていた妻を2008年に亡くした。しかし、「憎むのはエネルギーがいるが、得るものは何もない」と、加害者への憎しみを絶った。
 元信者が刑期を終え、謝罪に訪れた際には「あんたは罪を償ったんだから普通に生きればよい」と伝えた。「一緒に魚釣りに行き、友人として迎えている」と話す。
 松本サリン事件以降も、報道の過熱や世間の「炎上」は続いていると憂う。「社会は依然として同じで、一方的な情報を信じがち。若いうちからの教育が必要」。愛知県豊橋市在住。(高橋雪花)

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)
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<松本サリン事件から20年> 被害を受けながら容疑者扱いされた河野義行さん ヘイトスピーチ危惧
<松本サリン事件から15年>河野義行さんの長男 仁志さん、15歳で事件直面  裁判員制度には疑問(毎日新聞2009/6/25)
◇ 「死刑で遺族 変わらぬ」松本サリン事件河野義行さん「麻原さんの死刑には反対」
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オウム死刑囚 刑執行 「朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり」 命よりも大切なものがある 〈来栖の独白〉 
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