「広島女児殺害事件」永山基準・核心司法・官僚司法がもたらした無期懲役判決

2010-08-12 | 死刑/重刑/生命犯

〈来栖の独白〉
 量刑が争われた裁判で死刑が選択、確定されなかった状況は、よいと思う。ただ、遺族の気持ちを思う。
 いま一つ、今回は核心司法が刑の減軽をもたらしたが、今後そのように作用するとばかりは言えないのでは・・・。
「広島女児殺害事件」司法官僚によって行使される人事権は全国の裁判官たちに絶大な影響力をもつ
広島女児殺害事件 「被告の命にも意味があるのではないか」悩む父
--------------------------------------------------
ペルー人被告、無期懲役確定 広島・女児殺害
 上告期限の12日午前零時で、無期懲役が確定。一審初公判から裁判終結までは約4年3カ月だった。
 検察側は一審から死刑を求めていた。広島高検の津熊寅雄次席検事は「判決内容を検討したが、憲法違反や判例違反が見当たらなかった」と説明。遺族が上告を要請していた点には「無念な気持ちが伝わってきたし、心情に配慮したが、適切な上告理由を見いだすことができなかった」と話した。
 弁護側は公判で殺意やわいせつ目的を否認し、差し戻し控訴審判決の後は「上告を検討している」としていた。久保豊年弁護士は取材に、上告しない理由を「一切話せない」としている。
 広島高裁は7月28日の判決で、死刑適用に関する「永山基準」を引用し、「被害者が1人で前科もなく、矯正不可能とまでは言えない」として、無期懲役だった一審広島地裁判決を支持。検察、弁護側双方の控訴を棄却した。〔2010年8月12日 中日新聞朝刊より抜粋〕
..................................................
広島・小1女児殺害:差し戻し審 ヤギ被告、再び無期 判例踏襲、死刑回避--高裁
 判決は1審と同様、殺意やわいせつ目的、責任能力についても認め、殺害方法を巡る事実認定を「片手で首を強く絞めた」から「手かひもで首を強く絞めた」に変更した以外は1審判決をほぼ全面的に支持した。
 また、差し戻し前の控訴審で証拠採用された被告のペルーでの性犯罪の前歴に関する書面については、ペルーで黙秘権が確立しているか不透明なことや、被告が前歴を否認していることを考慮し、「十分な検討がされておらず、国内前科と同様のものと評価することはできない」とし、量刑の判断材料から排除した。
 ◇頭の中が真っ白になって…あいりちゃん父
 「望んだ死刑が出されず非常に残念。死刑判決が出されるものだと思っていた。頭の中が真っ白になっていて……」。判決後に会見したあいりちゃんの父建一さん(43)は目を潤ませ、言葉を時折詰まらせながら、声を振り絞り語った。
 法廷にあいりちゃんの写真を持ち込んだ。「ひざの上にだっこして一緒に傍聴している気分だった」という。
 「(司法に裏切られた気持ちが)ないと言えばうそになる」とも語った。裁判員裁判のモデルケースとされ、公判前整理手続きで証拠が絞られた経緯に、「真実が解明されないまま、手続きの問題ばかりが取り上げられて長期化したと思う」と唇をかんだ。
 判決は、被告のペルーでの前歴を量刑の判断材料として認めなかった。その瞬間、法廷で建一さんは大きく息を吐き出した。
 「被告の反社会的なところが認められなかった。納得いかない」。死刑適用についても「性犯罪がいかに悪質かを認めてもらいたかった」と訴え、検察に上告するよう依頼したことを明らかにした。
 ◇十字切る仕草--ヤギ被告
 トレス・ヤギ被告は灰色のTシャツにジーパン姿。顔の前に手を合わせて入廷し、椅子に座ってからも手を合わせ続けた。
 建一さんは、あいりちゃんが好きだったヒマワリと同じ黄色のフレームに入った遺影を手に入廷した。一礼し、喪服姿の妻と並んで傍聴席の最後列に座った。ピースサインの遺影をひざの上に置き、静かに判決の言い渡しを待った。
 「各控訴をいずれも棄却する」。竹田隆裁判長が短い主文を読み上げると建一さんは目を閉じて息をついた。判決理由の朗読が続く間、裁判長を見据えてメモを取り、閉廷後は足早に法廷を去った。
 トレス・ヤギ被告は途中、十字を切るような仕草をしたが、判決の言い渡し後は静かに退廷した。
 弁護人によると、トレス・ヤギ被告は「控訴棄却」の意味が十分に理解できなかったという。判決前の接見では「木下さんには『心からごめんなさい』と言いたい」などと語ったという。
 ◇上告含め検討--広島高検
 広島高検の津熊寅雄・次席検事は判決後、「死刑が相当であるとして控訴していたが、主張が認められず残念」とコメントし、「上告も含めて対応を決めたい」などと話した。
 弁護人も記者会見し、トレス・ヤギ被告のペルーでの前歴が、証拠から実質的に排除されたことを評価した。殺意や強制わいせつ目的など計画性の判断には「上告して争いたい」とし、被告と接見して決定する方針。【中里顕、井上梢】毎日新聞2010年7月29日 東京朝刊より抜粋

判決文


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。