『戦士の休息』を読んだ。落合博満氏は十分休息をしたはずである。監督としての姿が見たい。梅原武

2013-10-07 | 相撲・野球・・・など

 落合氏の映画評論  休息の時は終わった
 中日新聞夕刊 月曜日連載 文化欄「思うままに 梅原武」
 2013/10/7 Mon.
 私はプロ野球の大ファンであるが、野球人の書いた書物を読んだことはない。しかし最近、人の勧めで落合博満氏著『戦士の休息』を読んでみた。
 驚いたことに、そこに書かれているのは野球の話ではなく、映画の話であった。落合氏によれば、秋田工業高校野球部に在籍していた彼は1年生からエースで4番打者であったが、先輩から受けた鉄拳制裁に嫌気がさし、野球部の練習をさぼり映画館に入り浸って映画を観たのが映画ファンになったきっかけであるという。以来、彼が観てきたハリウッド映画、ヨーロッパ映画、日本映画などの感想がこの書で語られている。
 彼らしく、すごいものはすごい、おもしろいものはおもしろい、くだらないものはくだらないと率直に述べる。彼は私より数千倍もの数の映画を観ているが、その批評眼も一流であると思う。
 彼がすごいと評するのは「モダン・タイムス」のチャップリン、黒澤映画「7人の侍」で主演の三船敏郎、それに歌手の美空ひばりである。その点、私も同感であり、私は、洋画ではチャップリン、日本映画では黒澤明の大ファンであり、美空ひばりの歌「川の流れのように」などは後世に残る名曲であると思っている。
 彼はまた「私は貝になりたい」のような戦争映画、「男はつらいよ」などのやや通俗的な映画、及び「宮廷女官チャングムの誓い」などの韓国王朝劇ドラマをも高く評価している。
 そして彼の野球観もところどころに述べられている。彼の野球は「オレ流野球」とよばれるが、それは、多くの選手や監督についての深い理解の上に成り立っている落合独自の野球であるというのである。
 〈どんな世界にも、「ナンバーワン」とよばれる人はいる。例えばプロ野球界なら通算本塁打のナンバーワンは868本の王さんだ。三冠王を獲得した回数なら、3回の私がナンバーワンである。(中略)しかしナンバーワンでありかつオンリーワンである人はそうはいない。映画界におけるチャップリンはまさにナンバーワンでありオンリーワンという存在だと感じる〉(『戦士の休息』)
 落合氏は、映画界のみならず野球界においても長嶋、王のようなスーパースターが現れなくなり、よき時代は終わったという。彼がいうナンバーワンとは、後世まで名を残す強烈な個性をもったスーパースターを指すのであろう。落合氏は内心、ナンバーワンであるのみではなくオンリーワンになることを志向していると思われる。 この書のタイトルは「戦士の休息」である。落合氏は十分休息をしたはずである。中日の次期監督として落合氏が有力候補の一人になっているという。目まぐるしく打順を変えたりする現監督によってガタガタになったドラゴンズをどう立て直すか。名作映画の主演俳優のような落合監督の姿が見たいものである。(哲学者)
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2 コメント

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Unknown (かまちゃん)
2013-12-01 11:46:06
「戦士の休息」読みました。

意外でしたね。あの80年代を彩った球界の雄、落合博満氏がこんなにも熱烈な映画ファンであったとは。
しかも、よく評論されており、もしかしたら、映画監督しても大成されたかも知れませんね。

私は70歳にもう少しで手の届く世代ですが、おっしゃる通り、「チャップリン」、「三船敏郎」、「美空ひばり」はそれぞれの分野で異彩を放つ達人だったと思います。
しかも、人生後半でそれに気づいたのも同様です。

最後に、「戦士の休息」はブリジット・バルドー主演の1963年のフランス映画で、良いタイトルをつけたな、と思いましたよ。
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Unknown (ゆうこ)
2013-12-01 21:36:17
「かまちゃん」様
 愉しいコメント、ありがとうございます。
>よく評論されており、もしかしたら、映画監督しても大成されたかも知れませんね。
 ほんとにそう。既に完成された評論家ですね。
>「戦士の休息」はブリジット・バルドー主演の1963年のフランス映画
 なんてステキ♪ この本を知ってまず最初に、タイトルの素晴らしさに感じ入りました。
 中日の監督時代、そしてそれを退いてからも眠れず睡眠剤を服用し続けた、という落合さんの話を思い出しました。
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