<秤の重み 裁判員制度10年> ⑤普及 守秘義務、足かせに 2019/5/20

2019-05-22 | 裁判員裁判/被害者参加/強制起訴

<秤の重み 裁判員制度10年>⑤普及 守秘義務、足かせに 

2019/5/20 朝刊

 「守秘義務は重すぎる。裁判員の負担になるだけではなく、貴重な経験が社会に伝わらない」。十九日、裁判員経験者らでつくる市民団体などが東京都内で開いたシンポジウム。経験者や弁護士らパネリストから「守秘義務」の緩和を求める声が上がった。背景にあるのは、裁判員を終えた後も評議の内容などを漏らしてはならないとする守秘義務の存在が、制度の理解が一因になっているという思いだ。

 シンポでは、制度への国民の関心を高めるためには、経験者の体験が社会で共有されることが求められるとして、守秘義務の対象範囲の見直しを求める提言を発表した。具体的には、評議の内容について、発言者を特定しない限り、経験者が原則自由に話せるよう裁判員法を改正することを訴えた。シンポでは、提言の実現に向けて、法務省や国会議員に働き掛けるべきだとの意見も出た。

 最高裁が一般市民を対象に、裁判員として刑事裁判に参加したいか尋ねた意識調査では、「義務であっても参加したくない」との回答が10年前から4割前後で変わらない。同じ調査で「参加したい」「参加してもよい」は計15%ほどにとどまった。最高裁は2017年の報告書で、国民の関心の低さが、裁判員の辞退率上昇や、選任手続きへの出席率低下の一因と分析している。

 一方、裁判員経験者への調査では、10年連続で95%以上が「よい経験と感じた」と答え、理由として「裁判が身近になった」「普段できない貴重な経験をした」「やりがいがあった」ことなどを挙げた。

 この隔たりを埋めようと、制度開始から10年の節目を迎える中、中部地方でも各地の地裁が模擬裁判や出前授業、パネル展示などでアピールに力を入れている。

 名古屋地裁では5月上旬、三重県いなべ市の大安中学校の2年生約20人が模擬の裁判員裁判に取り組んだ。題材は架空のコンビニ強盗致傷事件。裁判官、裁判員、検察官、弁護人などに分かれ、用意されたシナリオに沿って演じた。

 「証拠めっちゃ出とるから、有罪だと思う」「店主は被告が犯人だと言うけど、見間違いかもしれない」。さまざまな意見が飛び交った。最後はそれぞれ自分で結論を判断し、挙手。全員が「有罪」で一致した。

 裁判員裁判については小中学校でも学ぶが、模擬裁判に参加した藤田野乃葉さん(13)は、「空気重そうやし、裁判に参加するのは嫌やなと思っていた」。壁に大理石があしらわれた本物の法廷で裁判の雰囲気を味わい、尻込みしていた「未来の裁判員」は、「責任はすごくあるが、裁判員をやってみたい」と前向きになった。

 19日のシンポを主催した団体の一つ、裁判員経験者ネットワークの世話人を務める牧野茂弁護士も「模擬裁判や出前授業を受けると、将来やってみようかという気になる」と法教育の大切さを指摘する。

  その上で、「裁判員制度の良さを知ってもらうには、経験者の声を世の中に伝えるのが一番。せっかく裁判に市民の目を入れたのに、守秘義務で外部に対して目隠ししてしまうのはおかしい」と強調する。

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)

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民主主義を学ぶために 市民裁判員10年  中日新聞 社説 2019/5/20

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