<アキバの傷痕>無差別殺傷から10年 <5>復讐 連鎖する「誰でもいい」 中日新聞2018/6/7

2018-06-09 | 秋葉原無差別殺傷事件

<アキバの傷痕>無差別殺傷から10年 <5>復讐 連鎖する「誰でもいい」 
2018/6/7 朝刊
  画像;無差別殺傷事件の発生直後、救急車などが駆け付けて騒然とする現場=2008年6月8日、東京・秋葉原で
 右の脇腹から鼓動に合わせてゴボッと血が噴き出し、ワイシャツを突き上げてきた。次の瞬間、湯浅洋(64)は「とてつもない痛み」を感じて意識を失った。
 タクシー運転手だった湯浅は客を拾おうと秋葉原を流していた。無差別殺傷事件の犯人、加藤智宏(35)のトラックと偶然、擦れ違った。直後に「きゃー」「わー」と姫井が聞こえた。
 「事故かな」。車から降りて負傷者を助けようとしたら、後ろからナイフで襲われた。加藤の顔を見る間もなかった。
 全治6ヵ月の重傷。神経を痛め、目が突然、見えなくなったり、まっすぐ歩けなくなったりした。後遺症にいまも苦しむが、不思議と加藤への憎しみは「ない」。それより「本当の理由が知りたい」という。
 だから加藤に6度、手紙を出したが、まともな返事はない。面会を求めても実現せず、青森市にある加藤の実家や母校を訪ね、彼の著書をすべて読んだ。それでも、なぜ無差別に人を殺せたのか、分からない。「死刑は当然だが、執行の前に自分をさらけだして、納得のいく理由を語ってほしい」。湯浅はそれだけが、加藤が社会のためにできることだと信じる。
 加藤は法廷で、直前に茨城県で起きた無差別殺傷事件が念頭にあったと語った。その後、加藤を模倣したような事件が続く。
 秋葉原事件の5ヵ月後、19歳の少年が千葉県で、軽トラックで男性=当時(24)=をはねて殺害した。犠牲者の母、沢田美代子(61)は「秋葉原事件がなければ、息子は命を奪われなかった」と考える。「ただ歩いていただけなのに、なぜ」
 2年後、広島県の自動車工場で12人を死傷させた男も、加藤を参考にしたとされる。長男=同(39)=を殺された浜田進(69)は、理不尽さを「恨みを持たれたり、けんかをしたりしたわけではない。何も関係がないのに」と話す。
 秋葉原事件の翌月、東京都八王子市のショッピングセンターで男が女性2人を殺傷した。精神鑑定をした医師の岩波明(59)も男から、加藤のやり方なら「自分でもできると思った」と聞かされた。
 「21世紀になって無差別殺傷が増加している」と岩波。「格差社会の閉塞感や、希望を持てないことが、犯行への最後の一押しになっている可能性がある。不幸な自分をつくりだした世の中への復讐」
 秋葉原事件を素材にした小説「誰でもよかった」を著した作家、五十嵐貴久(56)は「今後も加藤のような犯罪者は当たり前のように出てくる」と予言する。
 小説では、事件を知った若者たちがインターネットで、犯人を賛美する書き込みを続ける。「つまんねえもんな、世の中。人ぐらい殺したくなるよな」。五十嵐は、加藤をモデルにした犯人に「みんな俺と同じだとわかった・・・明日、また同じような事件が起きても不思議じゃない」と言わせた。
(以下略=来栖)

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖) ◎リンクは来栖
   *連載は6回までですが、「書き写し」は5回をもって終わりとします。
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誰でもよかった。世の中が、生きるのが、人生が、嫌になった。天から降ったのではなく、地の下からの爆発
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