【夜の秋】は言葉の中に秋と入っていても立派な夏の季語

2023-08-20 | 文化 思索 社会

中日春秋
 2023年8月20日 日曜日
【夜の秋】は言葉の中に秋と入っていても立派な夏の季語だそうだ
▼酷暑の季節にも夜だけに感じる秋の気配をいう。<西鶴の女みな死ぬ夜の秋>長谷川かな女。確かにちょっと涼しい
▼夜に涼味が加わり、虫の音も…と書きたいところだが、容赦ない暑さのこの夏はそうもいかない。夜になろうと蒸し暑く、三〇度をなかなか下回ってくれない。「土用半ばに秋風が吹く」とよく聞くが、今の夏は残暑が猛暑、酷暑、極暑だろう。夜の風も夏の果(はて)もなお見えぬ
▼夏の暑さにお疲れのところ、いじわるを言う気は毛頭ないが、十七日に気象庁が発表した天気の一カ月予報である。向こう一カ月も列島は暖かい空気に覆われやすく、高温傾向が続くという。九月も水分補給とエアコンの適切な使用という決まり文句を聞くことになるのか。げんなりする
▼「夏の中に、秋がこっそり隠れて、もはや来ているのであるが、人は、炎熱にだまされて、それを見破ることが出来ぬ」-。太宰治の「ア、秋」。太宰によると秋は悪魔で夏の間にちゃんと身支度を整え、「せせら笑っている」というのだが、この暑さにどうも疑ってしまう
▼数日前に訪れた京都の夜がまた暑かった。ぐったりしていると地元の方が教えてくれた。「それでも虫の声がだいぶ変わってきました」。炎熱にだまされず、秋の訪れを見破れる人の言葉を信じることにする。

 ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用です


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