破綻 元首相銃撃 ㊤ 裕福だった家庭は崩壊

2022-07-18 | 身体・生命犯 社会

中日新聞 2022.7.16. Sat.

 破綻 元首相銃撃 ㊤ 裕福だった家庭は崩壊

 7月7日夜。山上徹也容疑者(41)は山陽新幹線に乗っていた。岡山市を遊説に訪れた安倍晋三元首相の銃撃を断念した帰り道。翌日の遊説先が、自宅のある奈良市だと知る。宗教団体への積年の恨み。「元首相は団体とつながっている」。次こそーー。手製銃の引き金を引く決意を固め直した。

 山上容疑者は1980年9月、京都大出身の父親と国公立大を卒業した母親との間に生まれた。3人きょうだいの次男。母親の実家は建設会社を営み、裕福な家庭だった。だが4歳だった84年12月、父親が自殺した。

 両親と同様に頭脳明晰とされた山上容疑者は96年、進学校の奈良県立高へ。応援団に所属し、3年の時はリーゼントに鉢巻きを巻いて野球部の応援に精を出していた。そんな活発な姿とは裏腹に寡黙で一人でいることが多かったという。

 一方で家庭生活にはほころびが生じる。母親が霊感商法で世間を騒がせていた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に入会。亡き父の生命保険金や、祖父から相続した土地・家屋の売却益などから計約一億円を献金した。
 「わからん」。将来の自分について高校の卒業アルバムにこう記した山上容疑者。母親による巨額の献金で生活苦に陥り、大学進学を諦めた。消防士を目指して予備校に通ったが近眼が原因で不合格に。親族の勧めもあり2002年8月に海上自衛隊に入隊し、広島県の呉基地で護衛艦まつゆきに乗船するなどして働いた。

 しかし05年1月ごろ、自殺を図る。
 消費者金融から借りたお金で「最後の晩餐」と飲み回り、困窮する兄と妹に保険金を渡そうと考えた。海自の聴取に「旧統一教会によって人生と家族がめちゃくちゃになった」と説明した。母親は教会の行事で韓国へ渡航していたとみられ、連絡が取れない。伯父が引き取る話も出たが、かなわず山上容疑者はがっくりしていたという。
 05年8月に海自を退官すると派遣会社やアルバイトを転々とする生活に。14~15年ごろには、小児がんを患い右目を失明していた兄が自殺した。
 20年10月からは派遣社員として京都府内の工場に勤務。フォークリフトの免許を持ち、荷物の搬入作業に従事した。履歴書には宅地建物取引士の資格も記載し、趣味は「映画鑑賞、読書、PCゲーム」としていた。

 当初はまじめに働いていたが、同僚らと深いつきあいはなかった。今年に入り、仕事の手順を巡って同僚らとたびたび口論となったもの、暴力ざたは一切なく、工場責任者の男性は「大それたことをするようには見えなかった」と語る。

 そのかたわらで山上容疑者は、襲撃の準備を進めた。

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 憲政史上最長の政権を担った元首相が凶弾に倒れて一週間。母親による宗教団体への多額の献金、家庭崩壊、困窮、自殺未遂…。山上容疑者を凶行に走らせた背景に迫る。

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し
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