白木勇裁判長 . . . 本文を読む
〈来栖の独白〉母子ともに、なんとも痛ましい。他人事ではない。 親鸞は『歎異抄』のなかで次のように言う。 「こころのよくてころさぬにはあらず」 人の心が善いから殺さないのではない。それは「業縁」のなせるわざである、と。 五木寛之氏は「人間というものが、状況と行動のはざまにおいて、常にぐらぐらと不安定な、おそるべき存在である」と言われる。換言するなら、人は状況次第でどのような悪行でも行える、と言われるのである。更に突き詰めて極論するなら、人間はすべて悪人である、悪を抱えている、そういう存在である、と。 私が人を殺さなかったのも、心が善かったからではなく、たまたまそういう状況に立ち至らなかったからにすぎない。介護認定4の母を殺さないのも、母が然るべきホームで手厚い介護を受けており、私に何の苦労もないからに他ならない。 . . . 本文を読む