数年前、『話を聞かない男、地図が読めない女』という本が話題になった。タイトルのとおり、男性は“人の話を聞こうとはしない”傾向が強いという。もっともそれについては、“他に何かをしているときには……”という前提条件が付く。
つまり男性は、“一度に二つ以上のことができない”との欠点を指しているようだ。だが男性は、女性に比べて「空間感覚」に優れている。そのため何処までも獲物を追いかけ、それを手に入れて自分の塒(ねぐら)に帰り着くのも、この能力があればこそのものだろう。
一方、「空間感覚」が苦手な女性は“地図がなかなか読めない”。縦列駐車や車庫入れがぎこちないのも、この空間感覚の未発達から来ているという。だがその反面、女性は同時併行的にいくつもの仕事や動作をこなせるようだ。
『わたしなんかテレビを観ながらお化粧し、母とも話をするんですよ』
A嬢はこともなげに語る。そのシーンの彼女を想い浮かべながら、我が身に置き換えてみた。
……「テレビ」を観ながら「髭を剃り」、同時に誰かと「会話」もする……。『特撮』でもしないかぎり、絶対にそうしたシーンはありえない。いやそれ以前に、そもそもそのようなイメージが浮んで来ない。髭を剃るときは、ただひたすら髭剃りだけに集中する。
音楽を聴きながら勉強したことなど、これまでただの一度もなかった。今でも「書き物」をしたり「ネット」を覗くとき、テレビも音楽も一切つけない。音楽を聴くときは、ひたすらそれだけに集中するからだ。
もし音楽を聴いている最中に電話がかかれば、間違いなく音楽を止める。それは“パブロフの犬”にも負けない俊敏な“条件反射”を示し、寸分の躊躇(ちゅうちょ)も狂いもない。
以上のことは、多少の個人差はあれ、その源は男女の「脳」の違いから来ているようだ。そしてそれを司るものが、各種の「ホルモン」ということになるのだろう。曰く「男性ホルモン」であり、「女性ホルモン」というやつだ。
――結局、いつもの“男女の脳とホルモン”の話なのね。要するに「空間感覚」は「論理」の基本だって言いたいんでしょ? だから“ロジカルでない女”は、必然、視野も狭く思考能力も弱いって。それに“感情の奴隷”であるため静かに考える習性がなく、何やかや喋り続けるだけなんでしょ? そして都合が悪くなったら涙を武器に沈黙する……。そのくせ『どうしてそんなことを言うの? あなただけはそんな人じゃないって信じてたのに』と、思わせぶりに逃げ帰る。でもあっという間にお化粧を落とし、ケロっとしてテレビに観入っている……。あとはあれこれ食べ散らかしながらも、彼からの“お詫びメール”をひたすら待ってるって……。