『感性創房』kansei-souboh

《修活》は脱TVによる読書を中心に、音楽・映画・SPEECH等動画、ラジオ、囲碁を少々:花雅美秀理 2020.4.7

・玉虫色とマキアージュ:上

2011年12月10日 15時23分55秒 | ■男と女のゐる風景

 

 つい十日ほど前のこと――。筆者を含む男性3人、女性1人の4人で『角打ち』をしていた。筆者以外の2人の男性は、「不惑」になったばかりの40代。女性は「フレッシュ・アラサー」というところだろうか。いずれも筆者の「宅建関係養成講座」の生徒諸君だ。

 筆者の話の中に、『玉虫色……』という言葉が出たとき、筆者の隣にいた「S君」がすぐにその言葉を受けて話をつないだ。ところがそれを聞いていた「フレッシュ・アラサー」の「m嬢」が、怪訝な表情で筆者とS君の顔をうかがうように尋ねた。

 ――『玉虫色』って何ですか?

 次の瞬間、筆者はどのように説明すべきか、超猛スピードで思考態勢に入った。しかし、S君は即座に――、

 ――『玉虫色の解決……』とか言うでしょ。あれですよ。

 だが彼女はきょとんとしている。筆者の世代の女性ならまだしも、この“若さ”ではおそらく「玉虫」など見たこともないのだろう(※事実、彼女は見たことがなかった)。

 「玉虫」を見たことがなければ、当然、「玉虫色」などわかるはずがない。つまり、イメージなどできない……そう想った筆者は、彼女を擁護する気持で彼女とS君にゆっくりと語りかけた。

 ――僕ら男性と異なり、女性は「昆虫採集」の経験がないでしょ? それで「玉虫」など見たこともないと想います。何と言っても、彼女はまだ“若い”し……。

 そしてそのあと――、『「玉虫色云々」と言う表現に直面するほど、人生経験も豊かではないでしょうから……』と続けようとしたとき、S君が――、

 ――“若い”と言っても、僕と“たった9歳しか違わない”んですよ。それに見たことがないと言っても、「玉虫色の……」と言う表現はよく使われていますから。

 「不惑40歳氏」が、「フレッシュ・アラサー嬢」を、『たった9歳しか違わない』とする「論理」。そして自信に充ちてそう言い切る彼の「口調」と「表情」。いかにもS君らしい。何処に行くにも「小六法」を持ち歩くという法学部出身の彼。「持論」を、あたかも「多数説」のように言い切るところが可愛い。彼女はと言えば、依然、きょとんとした表情のままだった。

    ☆

 みんなと別れた後、福岡までの1時間余の電車の中――。筆者は少しずつ酔いが醒め始めていた。それにつれて、『玉虫色』と、それをめぐるS君とm嬢二人の表情がありありと甦って来た。

 それにしても、謹厳実直なS君――。頭を剃れば、明らかに禅寺の「青年僧」のような雰囲気を持っている。「間違ったこと」など、とてもできそうにない純朴一途といったところだろうか。

 一方、自由奔放にあるがままの感覚感性で生きているm嬢。何事も気にすることなくマイペースで伸び伸びとこなしている。この二人の組合せに立ち会っていると、実にユニークな場面に出くわす。傍観者としては、もってこいの「2キャラクター」だ。

    ☆   ☆   ☆

 帰宅後、筆者はすぐに次のようなメールをm嬢に送った。電車の中でずっと気になっていたからだ――。

 【女性は昆虫採集などほとんど経験したことがないでしょうね。ですから判らないと思います。男性は、誰しも一度や二度は経験しているから知っています。

 「玉虫色」とは、この虫の翅(はね)の色をさしています。緑と青と紫と赤を基調としたきらびやかな色の翅です。そのため僕は子供の頃、『虹の虫』と呼んでいたほどです。戸外の「光」や室内の「あかり」との反射具合で、「明るい緑」や「赤みががった緑」や「青」に見えたり、「青紫」や「赤紫」さらにはその他の色と、実に様々な「見え方」をする「翅の色」です。

 つまり、「見方」によっては、「いろいろな色」に見えるところから、物事の判断や調停等において、「どのようにも受け取られるようなあいまいな表現」を「玉虫色の表現」とか、「玉虫色の解決」さらには「玉虫色の判断」というようになったものです。いかにも「曖昧さ」を美徳とする日本人好みの表現ですね。

 今日、「玉虫」という昆虫を見かけることがなくなったので、この「玉虫色の……」という表現も次第に使われなくなったものと考えられます。だからあなたが知らなくとも、何ら恥じることなどないのです。S氏が言ったことは気にすることはありません。】

 ……と、送信し終えたとき、筆者の中に電撃的に閃くものがあった。

 ≪これは何が何でもブログネタにしよう! いや、きっとできる。うまくいけば、連載もイケル!≫ (続く)

 



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