51.丘を下る解放されたユダヤ人
丘の頂に多くの人々の姿が見え、こちらに向かって歩いて来ます。無論、これらの人々は終戦によって解放されたばかりのチェコの「ブリンリッツの兵器工場」のユダヤ人とその家族であり、とりあえずは食べ物を求めているのでしょう。
戦後、アーモン・ゲートは逮捕され、人道に背く罪を犯したとして、クラククで絞首刑になったようです。
「モノクロ」で描かれた丘の上の人々が次第に大きくなりながら、やがて「カラ―」となって、現在の姿に変わります。
シンドラーは戦後、結婚にも事業にも失敗したようです。それでも1958年、エルサレムに招かれ、『正義の人』に選ばれています。シンドラーによるユダヤ人の子孫は、6000人を超えているとのこと。
52.墓銘碑に石を積む人々
「シンドラーの墓銘碑」に、人々が石を積みながら祈りを捧げています。映画に登場した「モデル」となった “その本人” と、それを演じた「役者(俳優)」が “一組み” となっています。
少女「ダンカ役」の女の子、「レオポルド」と「ミラ」の「ぺファーべルグ夫妻」、もちろん「ご本人」と「それを演じた役者」達です。
この時点ではすでに故人となっていた「イザック・シュターン」。彼を演じた「ベン・キングズレー」 が、「シュターン未亡人」と一緒です。それに、「ヘレン・ヒルシュ」、「シンドラー夫人」の「エミリエ」が続きます。
そして、最後に赤い薔薇を添えたのが、「オスカー・シンドラ-」役の「 リーアム・ニーソン」のようです。といっても、その顔形は画面に登場しないまま、手元だけが映し出されています。
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優れた役者による“哲学性と芸術性”
本シリーズの「No.2」において、筆者はこの “ 映画の特徴 ” を「実話(ノンフィクション)」に基づく “ ドキュメンタリー・タッチ” の作品とし、この “ドキュメンタリー・タッチ” を貫くことによって、この映画の “哲学性と芸術性” がいっそう深まったと主張しています。次の「3点」が、その「重要なポイント」でした。
(1) 基本的には、「映像」を「モノクロ」(白黒フィルム)としている。
(2) “ドキュメンタリー・タッチ” を貫くため、映像上の “感情表現” を極力抑えている。
(3) “ドキュメンタリー・タッチ” をより確実に表現するため、主人公の〈オスカーシンドラー〉以下、「中 心的な俳優5人」は、総て「舞台俳優 」を起用している。
その俳優5人とは、以下の「役者」たちです。
●オスカー・シンドラー
演じたのは「リーアム・ニーソン」(Liam Neeson)。本名: ウィリアム・ジョン・ニーソン (William John Neeson )は、北アイルランド出身の俳優。「舞台俳優」としてキャリアをスタートさせました。映画監督の「ジョン・ブアマン」に見出され、1981年に『エクスカリバー』で映画デビューしました。
●イザック・シュターン(会計士としてシンドラーの経営を補佐)
ベン・キングズレー(Sir Ben Kingsley) (1943年生まれ)は、英国の俳優。イングランド・ノース・ヨークシャー州スカーブラ出身。「ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー」の「シェイクスピア役者」として活躍しました。
1982年の『ガンジー』では、「アカデミー主演男優賞」を受賞。その他、『バグジー』『セクシー・ビースト』『砂と霧の家』で、3度の「アカデミー賞」の候補になった実力派俳優です。それにしても、「ガンジー」の雰囲気は最高でした。この映画もすばらしい作品です。
●アーモン・ゲート(ポーランドの「クラクフ・プワシュフ強制収容所」の所長)
レイフ・ファインズ(Ralph Fiennes, 1962.12.22―)は、イギリスの俳優。舞台と映画双方で活躍しています。「ハリー・ポッター」シリーズでは、「ハリー・ポッター」の最強最大の敵である「闇の魔法使い」の「ヴォルデモート卿」を演じています。SS将校「アーモン・ゲート」とのギャップが面白いようです。ぜひごらんください。
●エミリー・シンドラー(シンドラー夫人)
キャロライン・グッドール(Caroline Goodall 本名:Caroline Cruice Goodall 1959.11.13-)は、英国ロンドン出身の舞台俳優、女優、脚本家。「ベン・キングスレー」と同じ「ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー」に所属。
●ヘレン・ヒルシュ(アーモン・ゲート所長邸のメイド)
エンベス・デイヴィッツ(Embeth Davidtz、1965年8月11日-)は、米国インディアナ州生まれ。『ロミオとジュリエット』で「ジュリエット役」を演じて役者デビューを果たしました。英語とアフリカ語を使い分けるバイリンガル女優として、数々の「舞台」へ出演。
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何人もの優れた役者による今回のような「映画」は、本当に飽きることがありません。ことに「ヘレン・ヒルシュ」役の「エンベス・デイヴィッツ」の魅力に惹かれ、彼女のファンになりました。それにしても、この「女優」いや「役者」は凄いの一語に尽きます。
女としての人間的表現の深さには、呆れるほどです。スピルバー監督は、かなり彼女を意識した場面そして演技にこだわった “フシ” があります。
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ところで、この「映画」には、「トーマス・キニーリー(Thomas Keneally)」というオーストラリア人作家の「原作」があります。原題は『シンドラーの箱船』(Schindler’s Ark)(※註1)というものですが、「米国版」は『シンドラーのリスト』(Schindler’s List)に改題されています。
日本では、「映画名」と同じ「米国版」タイトルの本が「新潮文庫」から出ており、600ページ以上もの長編です。筆者は、「映画」(DVD)だけでは不明な点があったため、この原作によって本ブログを補いました。「映画」以上の迫力があり、またとても参考になりました。(了)
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元日に始まったこのシリーズも、今日が最終回です。途中、演劇の「案内」と「鑑賞」のために、かなり「あいだ」をあけることになりました。
筆者のわがままにお付き合いいただき、心より感謝いたします。
引用させていただいた一文については、出典を明らかにしており、最終案については花雅美様に送信させていただきます。
本当にいろいろ多くのご指導ありがとうございました。もちろんこれからも、私の師として引き続きご指導くださいますように。
メールでも申し上げたように、当面はいろいろなジャンルのものに触れてください。やはり文学であり、演劇そして優れた映画、音楽というものでしょうか。
もちろん絵画などの美術や建築工作物などからも多くの刺激を受けるものです。
あなたの映画や演劇評論を楽しみにしています。