「あらおかあさん、おきたのね」
朝起きると、すぐそばには犬がいる。
「ゆうべは、さむかったね」
おれこはとってもあったかい。
猫と暮らしていたときも、猫と寝ることはあった。
しかし、猫は気まぐれで朝までずっと一緒には寝てくれなかった。
一緒に寝ていて、気に食わないことがあると、斬鉄剣がキラリだ。
朝、おきて鏡を見ると、晩にはなかった「三日月疵」が鼻の頭にあったりもする。
だけど犬はそういうことはしない。
いや、もしかしたらそういうことをする犬もいるのかもしれない。
だが、おれこはしない。
お布団の中の、足元のほうでまるまってたり、
こちらの腕の中にすっぽり入って、腕枕をしたり、
枕に頭を並べて寝たりもするのだ。
こういうの、犬とするとは思わなかったなー。
「もうふ、すき」
猫もふかふかとあたたかく、きもちいい。
すべての犬がそうだとは限らないけれど、おれこもなんだか猫のよう。
やわらかくて、あたたかくて、ふかふかしている。
冬毛到来らしい。
うちに来たばかりのときは、ごわっとした夏毛だったのにねー。
いつのまにか、抜け替わってきているのね。
そら、家中に毛をまきちらすだけのことはあるわ。
おれこ人形ができそうなほどに。