犬がおるので。

老犬から子犬まで。犬の面倒をみる暮らし。

ときどきの不思議。

2013年03月20日 | おせわがかり日誌


犬は普段とても怖がりです。

家族以外の人には滅多に近寄らないのですが。

ときどき、つぅーぃ~っと、まるで吸い寄せられるようにして、誰かに近寄ることがあります。





そうすると、近寄られた相手はたいてい、とってもうれしそうにし、犬の頭をなでてくださいますのです。

そして話を伺うと、(今日もそうだったのですが)、犬が近寄る方は、ほぼ全員、以前に犬を飼っていた人なんでした。

今日のとってもやさしそうなおばさんは、5年前まで犬と暮らしていて、最期をみとったのだそうです。

今は犬はいないのだけれど、とさびしそうに笑いましたが、オレコの顔を見て、

まあなんてやさしそうな子なんでしょう、あなたはどうしてそんな目をしているの?

と、オレコと二人きりの世界に入ってしまいました。

オレコはおばさんの目をじっと見つめて、手をぺろぺろとなめていました。

数日前に出会ったおじさんも同じでした。

「15歳でみとったんだよ~。もうつらくってねえ、だからもう絶対飼わないけど、やっぱり好きでねえ」

そんな風に話しを聞いている間、ずっと、犬は頭をなでてもらったり、首をさすってもらったりします。

そしてとっても気持ちよさそうにしています。

何度もいいますが、家族以外の人には基本的には近寄らない犬なのです。

過去に虐待を受けていましたので、とても慎重だし、むしろ初めての人にはおびえてしまいます。

(私の父と母はいまだにほえられますし。甥っ子姪っ子もほえられてしまいます)

初めてうちに来た日、むやみにでかい夫(無類の犬好きにもかかわらず)には、怖くて近づきもしませんでした。

というより、おびえて、ものかげに隠れてしまいました。夫になれるのに、数日かかりました。

(とはいえ今では誰より夫のことが好きなのですが)

だけどなぜだか、犬にはそれがわかるのか、犬をなくした人たちに、

自分から近寄って行って、手のにおいをかいだり、なでてもらったり、ぺろってなめたりします。

なんでだろうなんでだろう、って、不思議だったのですが、オレコにはもしかしたら、

その人たちの飼っていた、大事な犬たちのたましいが、見えているのかもしれません。

犬たちの声を聞いて、そのことばをかつての飼い主たちに、伝えようとしているのかもしれません。

そうとしか思えないことばかりです。

だって犬が近づいて行く時、結構不自然なんですよ。

今にももれそうなくらい、うんやしーの用事を済ませたいはずなのに、それを我慢したり、

どんなことがあってもチェックする、大好きなわんこ友達のおうち、前を通りたいはずなのに、逆方向へ行こうとしたり。

どうしたの?と声をかけたその先に、必ず誰かがいるんです。

犬は静かに立ち止まり、その人をずーっとみつめて、何かを悟ったように、すたすたすたと、近寄って行くんです。

最初は、犬を好きでない人もいるかもしれないから、いけません、て止めていたんですが、もうやめました。

だって百発百中で、犬好きだし、犬を飼っていたことがある人だし、犬を失った人なんですものね。

そういう事情を、相手の人に伝えられたらいいな~と思うけど、出会いがしらの1~2分でできる話ではないので、

いつもこらえていますが、少しばかり、胸が熱くなっているのです。

多分、あの人たちには、あの人たちを愛した犬が、ついていて、オレコにはそれが見えるに違いなくて、

でもって、わんこ達に頼まれて、多分、何かを伝えようとしているのだろう、飼い主はそんな風に感じています。

散歩のたびにそういう機会にめぐりあうんです。そのことをとても幸せに思います。

飼い主はずっと、愛されているんだなあ、と感じるからです。

生きて、思って、考えて、行動することひとつひとつに、無意味なことなんて、ほんとないですね。