あれは、大学の3年生の時だった。僕は大学のこじんまりとした音楽サークルに所属していた。その音楽はあまり一般には知られていない、かなりマイナーな音楽だった。その上、男が大半のサークルだったから、いつも大学の講義が終わった後2時間程度練習し、そのあとは大学の近くの路地を少し入った奥にある焼き鳥屋で飲んで帰るのが日課になっていた。大学へは単身上京してきたので金もなく、1回割り勘で1500円程度で飲み食いできる店だった。話す内容は、専ら音楽の話が中心であり、馬鹿話をしながら盛り上がっていた。大学は理工系の学部に通っていたんこともあり、その当時は理系女子など一握りいるかいないか、校内で見かけることはたまにあっても外部の短大の女の子がサークルに参加するために来ているという状況だった。高校も男子校に通っていたから彼女いない歴、20年だった。それでも大学に入ったころは、彼女を作りたくてディスコに行ったりもしたが、あまりもてないかったのと、自分の性格に合っていないかったことを知り、自分の中でもういいやという気持ちになり合コンの誘いも断り、男と群れる日々が始まった。