2017年12月15日東アジアの小国は大国に背中を押された。
「おい、何してるんだ。今がチャンスだ。今しかないぞ。今やらなければやられるぞ。後は俺たちに任せろ。」
半ば脅迫めいた物言いに閣僚の誰もが何も言えなかった。防衛大臣が、
「武器は揃いました。先取防衛です。やりましょう。国民の生命と財産を守るために、何を迷うことがあるんですか」
と他の閣僚を相手に言った。すると官房長官がゆっくりと口を開いた。「総理、決断を」
総理は、腹の中ではすでに決めており、その言葉を待っていた。「分かりました。皆さんよろしいですね」
閣僚たちにもはや異論を唱える雰囲気ではなかった。そして、明朝、先取防衛の名の下にミサイルが発射された。ミサイルは、海を弧を描き、敵の基地に命中した。それを見ていた、防衛省の幹部、閣僚たちは、「やった。これでもう手出しはできまい」と喜んだ。その後に続いて、大国は一気呵成に敵国を攻め、敵国は早くも壊滅状態に陥った。皆は、一斉に
「これで、安心して年がこせるなあ。良かった。皆さんご苦労さん」と総理は、はしゃぐように閣僚たちに言った。
その時である。防衛省から急を知らせる連絡が入った。
「総理、北からと南から、ミサイルが我が国い向けて発射された模様です。着弾は残り5分。ミサイルの数は」
と言って連絡は途絶えた。その後、爆発音が聞こえた。さらに、強い衝撃がそこに集まっている皆を襲った。
「何事だ」官房長官が叫んだ。防衛大臣が、
「報告します。敵国後方からミサイルが一斉に我が国に向けて放たれた模様です。すでに、北と南の都市は壊滅状態。中央部にも着弾した模様です。友好国が応戦し、我が国も迎撃しておりますが、数が多くもはや回避不可能と思われます。皆さんは、地価のシェルターに緊急避難してください」
と叫び、地下へと皆を誘導した。窓から見えるのは火の手と崩れ落ちる高層ビル群。閣僚たちは、無事地価のシェルターに行きつくことができた。しかし、それ以上の情報が入ってくることはなかった。
「何が起きたんだ、一体」閣僚の一人が叫んだ。
「まさか、敵国がミサイルを撃ち込んできたのか」と別の閣僚が言った。
「敵国は壊滅状態だったはずだ。そんなことができるわけがない」
地価のシェルターにも地上の激しい爆音が響き渡り、時折天井が揺れた。しばらくの間、爆音が続いた。
「外の様子は一体どうなっているんだ。何処からも情報がないのか。防衛大臣」
防衛大臣は、「残念ながら情報はありません。報告できることは何一つありません」と言った。
閣僚たちは、うすうす感ずいてはいたが誰も口にすることを拒んだ。
「もしかしたら、生きているのは我々だけかもしれません、総理」
「バカなことを言うな。我々には大国が居るじゃないか。彼らがきっと守ってくれる。信じようではないか」
総理は、閣僚たちに言った。官房長官が、繰り返した。
「そうです。皆さん、我々は友好条約で守られているんです」
しばらくすると、爆音が聞こえなくなった。「どうやら制圧したみたいですね。私が言った通りだろう」と総理と官房長官は口を揃えて閣僚たちに言った。
「では皆さんはここに居てください。私が様子を見てきます」と防衛大臣が言って地下シェルターから出て行った。
ほんの数分して防衛大臣が青い顔をして戻ってきた。
「防衛大臣、どうしたんだ。状況を報告したまえ」総理は防衛大臣を急かせた。防衛大臣は下を向きながら重い口で答えた。
「壊滅状態です」
皆が、呆然とする中、防衛大臣は床に膝をつき崩れ落ちた。
2017年12月16日 午後5時 小国は壊滅し、荒廃した土地だけとなった。
*これはサイエンスフィクションです。登場人物は架空の人物であり、この物語は実際とは一切関係ありません。