ヒロシマ・セミパラチンスク・プロジェクト

NGO ひろしま市民によるカザフスタン共和国旧ソ連核実験場周辺住民(核被害者)への支援・交流

2024 Summer                                                  No.41

2024-07-23 14:37:31 | Weblog

2024 Summer No.41

核被害のない21世紀を

ヒロシマ・セミパラチンスク・プロジェクト
〒 733-0861広島市西区草津東3-6-11-2(橋村宅)  TEL : 090-2002-7385
E-Mail : mashenka@fancy.ocn.ne.jp   Blog : http://blog.goo.ne.jp/kazakhstan

2023年度の活動記録
■7月9日(日)、総会にて2022年度のまとめと2023年度の活動計画を確認
2023年7月9日(日) 14:00~15:00、広島市まちづくり市民交流プラザ3Fフリースペースにて総会を開催し、2023年度の主な活動内容を確認しました。

・一般財団法人多山報恩会の助成事業への申請は80万円に対して、交付決定額が70万円となり、セメイ市内で行う被爆絵の展示関連を40万円から30万円に修正し、小児病棟への白血病治療薬は20万円、クルマンセイト講師を招いての報告会を10万円、せこへい美術館10万円の予算組とした。
・2023年の予算は、4月28日のクロ―バル・ヒバクシャ・カザフスタン代表来広の夕食歓迎会での会場代及び参加者からの参加費107,000円が含まれる予算に修正した。

■せこへい美術館に出展
 2023年8月11日(金)から8月18日(金)の期間で、せこへい美術館にヒロシマ・セミパラチンスク・プロジェクトとして出展しました。なお、会場は毎年使用していた旧日銀広島支店が改装工事の為使用できないため、広島県立美術館地下展示室5で行いました。
 また、セミパラチンスクでの核実験とその影響等をパネルで紹介し、併せて、カザフスタンの子供たちが描いた絵の展示も行いました。

■2023年 カザフスタン訪問
~ 医療支援&原爆写真・被爆絵の展示&国際会議「環境・放射線・健康」に参加 ~

月/日    行程
8/25(金) ・ 広島駅 9:34 → 10:38博多 (さくら545)
・ 福岡 14:50 → 16:20 ソウル(アシアナ133) /・ ソウル18:05 → 21:40アルマトイ(アシアナ577)
8/26(土) ・ ホテル出発 9:30 → アルマトイ空港 / ・ アルマトイ 12:20 → 13:55 セメイ (エアアスタナ7151)
8/27(日) ・ セメイ市内の「放射線・医学・環境研究所」を訪問 ⇒ セメイ医科大学標本室見学
・ 小児病棟を訪問し慰問及び白血病治療薬として20万円を贈呈/ ・ ロシア正教協会・美術館見学
・ 「セメイ医科大学創立70周年を記念する式典」に出席(東カザフスタン州知事及びセメイ医科大学学長よりヒロシマセミパラチンスクプロジェクトのメンバーに感謝状が授与された)
8/28(月) ・ セメイ医科大学主催の創立70周年記念の国際会議「環境・放射線・健康」 16分科会が開催
 報告者 : 野宗先生(広島国際大学)、井上先生(高知大学)、藤本先生(広島大学)、高垣(カクワカ広島)
・ セメイ医科大学1Fホールにて「ヒロシマ・ナガサキ原爆写真パネル(A1-30枚)」及び基町高校(サンガ―梨里)の原爆被爆絵の展示とサンガ―梨里によるプレゼンテーション
8/29(火) ・ セメイ市主催「第1回核実験から74周年・慰霊・平和式典」に参列・献花/佐々木・小畠の平和連帯スピーチ
・ セメイ市長に広島市からの要請文を手渡す
8/30(水) ・ ホテル出発13:00 → セメイ空港  ・ セメイ 14:25 → 16:05 アルマトイ (エアアスタナ7152)
・ アルマトイ市内で日本語学習の若者たちと夕食
8/31(木) ・ アルマトイ市内見学(歴史民俗博物館、公園、バザール等
・ アルマトイ 23:00 → 9/1 7:40 ソウル(アシアナ578)
9/01(金) ・ ソウル7:40着 / ・ ソウル8:45 → 10:15 福岡(アシアナ132)
〇協力 : 在カザフスタン日本大使館、広島市立基町高校、広島平和文化センター

8月27日(土)・28日(日)の両日は、セメイ医科大学創立70周年を記念する、セメイ医科大学16回国際会議「環境・放射線・健康」の16分科会が開かれました。
野宗先生、井上先生、藤本先生の報告及び分科会のコーディネイトを行われました。また、高垣慶太氏も若者を代表して核兵器廃絶に向けた、自身の活動報告を行いました。

8月28日(月)、“伝承・広島の原爆の実相”を目的に、セメイ医科大学の1解ホールにて『ヒロシマ・ナガサキ原爆写真ポスター』の展示と『基町高校の被爆絵』(サンガ―梨里)の展示及びプレゼンテーションを行いました。
 『原爆写真ポスター』は、広島平和記念資料館 啓発課で貸出されているA1カラー印刷30枚セットの物を使用しました。
 この展示は、学生にも見てもらうために、9月上旬まで展示を継続してもらいました。

■ 「国際フェスタ2023-市民団体活動紹介コーナー」に出展
〇 日時 : 2023年11月19日(日)  10:00 ~ 16:00  
〇 会場 : 広島国際会議場 地下2F ヒマワリ
〇 展示 :① セミパラチンスク核実験場の紹介パネル及び書籍の展示
     ② プロジェクトが行う支援活動の紹介
     ③ 民族衣装の展示と試着

■ ガザフスタン訪問報告会
〇 日時 : 2023年12月9日(土)  13:30 ~ 17:00  
〇 会場 : 広島市平和資料館 メモリアルホール
〇 報告 ・ セミパラチンスク核実験場のドキュメンタリー映像
・ 白石涼子         オープニング(歌:ザマナイ)
・ 小畠 知惠子       司 会
・ 佐々木 桂一       開会の挨拶
・ クルマンセイト バトルハン   特別講演
・ 野宗 義博 + コジャメトフ(セメイ医科大学外科医)
・ 高垣 慶太        核兵器禁止条約第2回締約国会議に出席
・ サンガー梨里       ビデオメッセージ
・ 星 正治          総  評
・ 黒川 冨秋         閉会挨拶

■ 「ヒロシマ・セミパラチンスク・プロジェクト」×「カクワカ広島」の定期協議
 「ヒロシマ・セミパラチンスク・プロジェクト」および「カクワカ広島」の今後の行動として、2025年3月にニューヨークで開催される予定の核兵器禁止条約第3回締約国会議に向けて、被爆者援助と環境回復(核兵器禁止条約第6条・第7条)に必要な資金を集めるべく「国際信託基金」の設立に向けて、2024年8月下旬にカザフスタンで準備会が持たれる予定で、それに向けて日本の国会議員の参加を呼び掛ける取り組みを進めるにあたって、「ヒロセミ・プロジェクト」及び「カクワカ広島」双方ともに、情報共有が必要なことから、2024年1月21日(日)に第1回ミーティングを行い、月に1回程度の定期協議を持つこととしました。

■ 在カザフスタン日本大使館 山田大使が来広
 3月18日(月)に在カザフスタン共和国日本大使館の山田淳大使が来広され、外務大臣賞の個人賞を受賞した星先生、野宗先生、団体賞を受賞したヒロシマ・セミパラチンスク・プロジェクトの佐々木代表、小畠副代表、及び当プロジェクトの平岡名誉会長、セミパラチンスクで長年甲状腺の診断治療を行われてきた武市先生が招かれ「蔵屋本店」にて昼食懇談を行いました。

在カザフスタン共和国日本大使館のHPで紹介されている当プロジェクトの評価 :
 同団体は、鈴が峰公民館の住民が中心となり、旧ソ連時代に繰り返された核実験により被爆したセミパラチンスク周辺住民をサポートする目的で1998年に設立された。住民の医療支援、カザフスタン留学生の受入れ、文化交流を通じて、両国の友好関係構築に25年以上貢献してきた。
 また、募金により医療品や甲状腺超音波機器の提供を行い、現地で診療、治療、調査を行う日本人医師をサポートしてきた。現在も継続される「ヒロシマ・セミパラチンスク・プロジェクト」の活動は国際平和に多大に寄与する点で、高く評価されている。

■クルマンセイト・バトルハンの講演録
   特別講演 : クルマンセイト バトルハン(在日カザフスタン共和国大使館 公使)
“核が使用されるかもしれない脅威”
 今日は、カザフスタンの核不拡散、軍縮について、過去にどの様なことがありどう対処したか、また、現在とこれからどの様にしていくのかについて、話をさせていただきます。
あちらでもこっちで戦争が頻発し、地政学的に大変な混乱が続いています。国際法の秩序・規則・ルールなどが無視され弱体化し、人命はもとより食糧・エネルギー・経済の世界的な不安定化が進み深刻な課題に、世界が直面しているのはご承知の通りです。
 地政学的な危機を背景に、いま世界の様々な国で政治的、経済的、社会的な問題が深刻化し、緊張感が高まり、新たな紛争の火種が拡大していると言えますし、紛争の火種の裏側には、経済的な苦しみによる貧困に加え教育が足りない、仕事がない、さらにテロ等の組織犯罪に手を染める若者も多く、人種差別も進行する中で他民族の排斥問題も起きています。
 一見、世界は発展してきたかに見えますが、いまだに人類は戦争の脅威を抱えており、経済的、政治的、文化的な関連の悪循環になっています。
 このような状況はこれからも続き、経済的な破綻の危機感を抱える国が多くあり、国によっては食料不足が発生し子どもに何を食べさせるのか?こうした国では失業者も増え、自国より少し経済力を持つ国に国境を越えて移住する事態が発生しており、発展途上国は先進国の支援・援助に頼らざるを得ない状況が続いています。
 それでは、先進国が途上国や貧困国の面倒を看るかというと、同盟国や国連等の国際機関等も頑張ってはいますが、いわゆる“援助疲れ”が出て、先進国はいつまで途上国・貧困国の面倒を看ればいいのか疑問符がついています。
 先進国の中でも、経済成長率が落ちており、自国の政府・政治家は、自国にもいっぱい問題があり海外のことばかり見ていられないと言う矛盾も生まれ、これからの世界の動きにも影響していきます。
 外交官の立場では、世界が大変!だから何とかしてあげないといけないという役割もミッションとしてありますが、人類に対しての気候問題、紛争、テロ問題など非常に重たい課題があり、その中で、核兵器の恐ろしさが浮上してきています。
 いま、必要であれば核兵器を使用するかもしれない、こうした発言をする国もあり、新たに核兵器の使用の恐怖という最悪の問題が国際社会全体に表面化しており、再び最大の挑戦となっています。
 ここで私がどのような国で誰が言ったかは言えませんが、外交カードとして核を使い、自分の支持率を上げるために国民に対して、いかに自国が強いことを見せるかを目指しておいる政治家もいると言うことです。

セミパラチンスク核実験場、世界の核実験の1/4に相当
 カザフスタンは、世界の中では“小さい国連”と言われています。それは、多民族・多文化で、110の民族が住んでいる国で、平和の道を歩むことを目指して、今までも世界に対し、あらゆる国に対し、平和的イニシアチブを提供し、核不拡散の取り組みについて、これまでの実績と現在の立場について話をさせていただきます。
 多分、この分野に関わる方々が多いと思いますので、私よりも詳しい方々もおられると思いますが、私の方から簡単に話をさせていただきます。
 まずカザフスタンの「セミパラチンスク核実験場」についてです。セミパラチンスクは、カザフスタンの東に位置し、セメイ市(注)から150km離れている草原地帯に位置し、面積が約18,000㎢(四国の面積に匹敵)の世界最大規模の核実験場です。
 この核実験場で、1949年8月29日の最初の核実験から1989年10月19日までこの40年間、合計456回の核実験が行われ、延べの爆発の威力は、広島・長崎に落とされた原爆の2,500発分と言われています。
 世界中にはセミパラチンスク以外の核実験場があり、核兵器の実験が行われました。その数は2,000回を超えると言われていますが、その内の24~25%がセミパラチンスク核実験場で行われています。
 1989年10月19日が最後の核実験となり、それ以降核実験は行われていません。しかし、壮大な国土が未だに深刻な被害を受けいまだに修復されていませんし、閉鎖後も放射性物質の放射線は残り、国民がいまだに苦しんでおり、150万人の人が被害を受けたと推定されています。
注:セメイ市(旧セミパラチンスク市)

核不拡散を貫くカザフスタン共和国
 ソ連が崩壊してから独立したカザフスタンが、1991年8月29日。あえて最初の核実験があった8月29日に大統領令によって核実験場を正式に閉鎖しました。このときの初代大統領はナザルバエフ大統領です。
 そこからカザフスタンは、1,150とも1,250と言われますが、およそ1,000台以上の核弾頭を含む、世界で4番目のミサイルと、核兵器を廃絶しました。
 どのようなミサイル、どのような爆弾、どのような兵器を廃絶したかという話が、種々様々ありますが、一番重要なのは、核兵器を廃棄するだけではなく、この核実験場で二度と核実験が出来ないようにするために、トンネル等のインフラを全面的に無くしたわけです。
 これは国際社会との相互協力が必要でした。カザフスタンはまず、核実験場を廃絶し、核兵器を廃棄し、更に核不拡散という、国として一貫した立場から、積極的な外交と国際社会との付き合いを始めました。
 何故、核兵器の廃棄を国際社会の交流・外交の遂行に結び付けたか、実は核兵器を持つと、核兵器を持つ国と持たない国とで付き合い方が違ってきます。例えば、カザフスタンが独立した時、先ほど国の名前や政治家の名前を言わないようにと言いましたが、一回だけ使わせていただくと、世界に資源を売って、経済的に発展してきている国から、カザフスタンに『金だけでの問題であれば、核兵器の代わりに金を出すから残しておくべきだ』という意見が、たとえばカダフィ元大統領からありました。
 カザフスタンは、70%がイスラムですので、唯一イスラムの中で、核兵器を持つ最初の国になるので残すべきだと、アラブ諸国あるいはイスラム国家がファンドをつくって、資金の面倒を見るとの説得が大統領や政府に行われ、核を残すべきとの多くのプレッシャーがありました。一応話を聞いたうえで、無くする判断をしました。
 核兵器をなくす(=ロシアに譲渡する、返す、核実験場のインフラを廃棄する)。これに対して、カザフスタンは、北にロシア、南にインドとパキスタン、西に中国や北朝鮮の5つの核保有国があります。
 核兵器を持っている国に囲まれているカザフスタンです。そういった国々と安全保障や領土不可侵に関して保障を得。このギャランティを持って、カザフスタンは核を廃棄していく判断をし、そこから積極的に国際社会に対してカザフスタンの例に見習って核兵器を無くするよう、あるいは核兵器を持とうとしている国に対して持たないように働きかけてきました。これが独立したカザフスタンの国際社会との付き合い方であり、外交政策にも繋がっています。
 またカザフスタンは周辺国、特に中央アジアにおいては核実験場があって核兵器があるので残したらどうかと言われましたが、そういった国々が今度は、逆に自分たちが持とうかという話にならないように、中央アジアの諸国による「中央アジア非核地帯条約」が2009年3月に発効されました。それは、二つの核保有国に接しかつて核兵器が配備されていた地域において、初めての非核地帯です。
 また、2009年12月2日の国連総会でカザフスタンの提案において、核実験場の最初の実験場であり、また核実験場が閉鎖された日である8月29日を「核実験に反対する国際デー」とする決議が採択されました。
 この「国際デー」は日本も共同案を出し、共同提出者となっています。実はカザフスタンは、当時「核実験に反対する国際デー」ではなく「核兵器に反対する国際デー」でした。なぜか核兵器そのものに反対する決議案に対して、支援者は多くなく、日本政府も賛同しなかった。

 核実験に反対してもいいけれど、核兵器そのものに反対はできないといった国もあり、そこでカザフスタンが「核兵器をなくす」を「核実験に反対する」国際デーとしたわけです。でもこれは毎年繰り広げられ国連において様々なイベントがなされています。
またカザフスタンが国際条約に参加し新たなイニシアチブを発揮しています。核兵器禁止条約をはじめ核兵器不拡散条約(NPT)、包括的核実験禁止条約、CTBTに参加・批准しています。
 また、まだ成功していませんが、「核兵器用分裂性物質生産禁止条約(FMCT)」はカットオフ条約とも言いますが、この条約の早期交渉開始を国際社会から求めてきている国です。これらの国際条約に様々なイニシアチブに参加し、核不拡散を積極的に進めていく立場を続けています。
 2012年8月29日、アスタナで開催された「核実験禁止から核兵器なき世界へ」という国際会議で、この日初めてカザフスタンの「ATOM」(アトム)というプロジェクトが発表されました。両腕のない画家クユコフさんがこのATOMプロジェクトのアンバサダーであり、このATOMは英語では“原子”ですが、ここではその意味ではなく、「Abolish Test Our Mission」の頭文字を取って、核実験を禁止することが私たちの使命であるというプロジェクトを立ち上げました。

 また、2016年に核兵器のない世界とグローバルセキュリティのために、平和賞=ナザルバエフ賞というのが創設されました。今まで2回やりましたが、1回は中東の非核非大量破壊兵器地帯創設に向けた努力と、シリアからの150万人を超える多くの難民を受け入れに貢献した、ヨルダンのアブドゥッラー国王2世に渡されました。
 またその次の2019年にアスタナで行われた29日の賞授与式は、私も現場にいたのですが、CTBT条約の準備委員会のゼルボ事務局長と当時すでに亡くなられていた国際原子力機関の天野元事務局長の2名に授与されました。アスタナにはその代理として、その賞を受け取るために、天野事務局長の奥さんと弟さんがアスタナに来て、私がその二人に付き添って大統領との面談を調整し通訳もさせてもらいました。
 これからどうなるかはわかりませんが、核実験あるいは核兵器廃絶のために、世界的あるいは地域に活動された方々に、カザフスタンとしてこの賞を続けていけたら良いと個人的には思います。

大統領が代わっても核不拡散は変わらず
 政権が変わり大統領も変わって、いま新しいカザフスタン、ニューカザフスタンと言われるような現状ではありますが、2019年に当時ナザルバエフ大統領の代わりにカシム・ジョマルト・トカエフ大統領になり、いま大統領として、より一層力を入れて核不拡散、大量破壊兵器削減体制を強化させているところです。
 そのために、国際社会との付き合い方、交流をもっと深めていかなければという立場で、2023年第78回国連総会において「公正な平和と調和のための世界統一(World Unity for a Just Peace and Harmony)」を国連において提案しました。トカエフ大統領もやはり核兵器こそ、いま世界に対して一番の挑戦、一番の問題であることを、ほかの国際イベント等を通して強調しています。
 周辺の核保有国のトップがどう受け止めているか、もちろん皆さんも想像できるかと思いますけれども、そういうトップ同士との交流をはかりながらでも、カザフスタンとしては考えること、発言するべきこと、これらは自分たちの目で活動しています。このようにカザフスタンはさまざまなレベルで世界の安全を確保するために、全ての国に対して対等な対話と相互協力を呼び掛けているし、これからもその方針で行きます。
対等な対話というのが大変重要です。核兵器を持つ、あるいは軍事大国と軍事力がない国との対話がいかに違うかというのは、皆さん政治に関心があれば、国際関係に関心があればよくご存知かと思います。
そうじゃなくて、核兵器を持っているか持っていないかで対話が違うのではなくて、核兵器をどうするか、あるいは軍事力をどうするか、これからの世界をどうするかということを、核兵器を持っているからこう話す、持っていないからああ話すじゃなくて、対等な対話の体制をつくらなくてはならないと私たちは確信しております。
また、カザフスタンは、「核兵器禁止条約」について、参加し批准して積極的な立場でいるわけですが、カザフスタンは、「核兵器不拡散条約」を補完・強化するために、この「核兵器禁止条約」が必要であることを強調してきています。
 2018年3月2日に参加・署名し、2019年7月3日に大統領がサインして批准しました。これを考えると1991年8月29日に独立したナゼルバエフ大統領が批准しサインした最も重要な決定の一つが核実験場の閉鎖ですが、2019年3月に大統領になったトカエフ大統領が数か月後の7月3日に重要な国際条約を批准する法律にサインしました。これも国際社会に対する大変重要なメッセージであったと思います。

第3回締約国会議の議長国として
 何度も出てくる8月29日。カザフスタンがこの「核兵器禁止条約」に参加し批准したことを国連の事務局長に批准趣旨書を提出しました。あえて8月29日に国連事務局に出しているわけです。
 ひとつ重要なことは、この「核兵器禁止条約」は初めて核兵器そのものを違法とする、核兵器そのものを法律違反とする国際的な条約であるということです。今までは大量破壊兵器の中で、生物兵器と化学兵器に関する国際条約があって、それが違法であることはありましたが、核兵器に対して違法であることを認める国際条約ができたわけです。そして去年(2022年)6月22・23日に、ウィーンで第1回締約国会議が行われました。
この会議に、当時カザフスタンのムフタル・トレウベルディ外務大臣が参加し、その演説の中では、カザフスタンのイニシアチブによって核兵器の実験と使用から被害者を支援して、破壊された環境を修復するための国際信託金(International Trust Fund)を設立するということについて協議するためのワーキンググループを立ち上げたことを発表し、後に、カザフスタンとキリバスの共同案件としてこのワーキンググループができ、世界の多くのNGOや個人が参加されています。日本では創価学会なども参加され、International Trust Fundの実施について、どのように設立し、どのような活動を進めていくのかについて、活発な議論が行われています。
 また、ウィーンで開催された第1回締約国会議は、オーストリアが議長国でしたが、カザフスタン、メキシコ、タイが副議長国を務め、次回2024年、2026年までの議長国として、カザフスタンが選出されました。
これからカザフスタンが議長国として国際社会に対し、あるいは参加国、あるいは参加していない国に対していろいろな活動をしていくと思いますし、ニューヨークで行われた第2回締約国会議にカザフスタンのムラト・ヌルトレウ副首相兼外務大臣が参加し、2025年に開催される第3回締約国会議に議長国として、以下の重点課題に焦点が当たると発表をしました。
 それは、「核実験の影響を受けた人々やそれらの地域への支援」、「修復を可能にするために国際信託基金の設立に向けて努力していく」ことです。
 また、なぜ基金の設立が重要なのか、そこには、この核兵器禁止条約の中には、「核兵器を持たない」、「実験しない」、「保有しない」、「移譲しない」、「自分の国に置かない」が明記されていると同時に、今までの核実験あるいは核兵器による被害を受けた犠牲になった国、あるいはその地域、そこの国民に対して、責任を持って国際社会が支援をしなければならないと、はっきり書いてあり、多くの国がサインし批准している文書です。その文書の中をどう実現していくかということを考えた場合、やはり何かの行動をとらなければならないということで、カザフスタンがイニシアチブをとって、まずこうしたTrust Fundをつくって、ドナー国や先進国からの支援・基金も含めて支援をすることを議論していく。これをカザフスタンが議長国として努力していくと言うことです。

2024年、カザフスタンで「非核地帯の合同会議」と「NPT第2回準備委員会」を開催
 また2024年にカザフスタンで非核地帯の合同会議を開催するよう動いています。これも大変重要なイベントになる見通しです。核兵器を持たない国々、核兵器を持たない地域が、核兵器を持っている国に対して、いくら声が小さくても、声を届けていくことが重要ですから、この会議に多くの国々、多くの地域を呼んで国際イベントを開催していく予定です。
 また、カザフスタンが国際条約の締約国会議の議長になっている一方で、来年開催されるNPT第2回準備委員会の議長国でもありますので、カザフスタンは両方の重要な国際会議の議長国となっているわけで、核保有国と核兵器禁止条約の締約国をいかに調和させて、カザフスタンで会議をやったときに、核保有国の代表者を、正式に参加させる力がなかったとしても、そこを目指して努力し参加者を増やしていく。少なくとも、参加していなくても批准していなくても、オブザーバーとして参加し、核兵器を禁止させていくための参加国の声を、保有国に話を聞いてもらいたいと思います。
 世界で付き合っていく上で、苦手な国がほとんどないカザフスタンとしては、なるべくオブザーバー国の参加に努力していきたいと思いますし、カザフスタンの外交のひとつの力を発揮するところでもあります。
そこは我々としてもがんばっていきたいと思います。

「核兵器禁止条約」の採択・発効
2017年7月7日、国連加盟国の3分の2を超える122カ国の賛成で「核兵器禁止条約」が採択され、同年9月20日に署名・批准・参加の受付が始まった。
この条約は、50カ国の批准書が国連事務総長に寄託されてから90日後に発効する。
「核実験に反対する国際デー」の2019年8月29日、カザフスタン共和国は国連事務局長に「核兵器禁止条約」批准趣旨書を提出し26カ国目の批准国になった。
国連広報センターによると、2024年1月16日現在の「核兵器禁止条約」の署名国は93カ国・地域、批准国は70カ国・地域となっている。
「非核地帯条約」の発効
条約        地域     発効
トラテロルコ条約  ラテンアメリカ・西インド諸島 1969年4月25日
ラロトンガ条約   南太平洋   1986年12月11日
バンコック条約   東南アジア  1997年3月28日
モンゴル非核地帯  モンゴル   2000年2月28日
セメイ条約     中央アジア  2009年3月21日
ぺリンダバ     アフリカ大陸 2009年7月15日
特定の地域の非核化を扱う条約は、他に以下がある
条約    地域  発  効
南極条約  南極  1961年6月23日
宇宙条約  宇宙  1967年10月10日
海底条約  海底  1972年5月18日

今後の予定
〇「せこへい美術館」

  日程 : 2024年準備7月26日(金)展示7月27日(土)15時~8月1日(木)

  会場 : 旧日銀広島支店

○ 2024年度 ヒロシマ・セミパラチンスク・
プロジェクト総会

 日時:2024年6月30(日)
          13:00~14:00   世話人会
          14:00~15:00   総  会
 会場:広島市まちづくり市民交流プラザ3F 
フリースペース

会費納入のお願い
■ 年会費 3,000円 (学生 1,500円)
■ 今年度もカザフスタン(セミパラチンスク)の核実験による被曝の実相及び医療支援を目的に現地への派遣を予定しています。
■ 郵便口座  01360-5-60273
ヒロシマ・セミパラチンスク・プロジェクト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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