原子力災害広域避難計画は絵に描いた餅状態
簡単ではない高齢者や障がい者にとっての避難生活
今年は、旧八束郡内町村との合併から10年を迎える中での予算審議を迎えました。合併から10年間は、国からの普通交付税は旧自治体ごとに算定した交付税の総額が交付されていましたが、合併によって規模が大きくなった自治体は効率よく業務ができるとされ、5年間かけて交付税額は減らされていきます。27年度予算からは、その交付税減額が始まります。2月議会はその予算審議を行いました。
2月議会における主な質問と答弁
★原子力災害広域避難計画に関する質問と答弁
東北地方を襲った大震災から4年になる今日、なお仮設住宅で暮らす人が福島をはじめとする東北3県で4万5千人もいらっしゃる。その仮設住宅の実態は、防音、断熱性に欠け、結露、雨漏り、段差ありと居住者を悩ませている。
長期にわたる仮設住宅での生活を余儀なくされる住民の存在を前提に、「おおむね6ヶ月以内に移転を完了させる」とした広域避難計画自体の見直し、ユニバーサルデザインにするなど、仮設住宅のあり方の見直しを県や国と協議されてはいかがか。
市長
東日本大震災に置きます状況もご指摘の通りですので、今後この仮設住宅の水準も一定程度高めていく必要があるのではないかと思っています。国においては、応急住宅の仕様の標準化が図られてはいますが、さらに検証すべき課題が多く、今後見直しを行うとしていますので、検討状況を注視していきたいと思っています。
在宅の高齢者や障がい者に関しては、計画では「重度の要配慮者はおおむね1ヶ月以内に移転させる」こととなっている。軽度障がい者や知的障がい、精神障がい、発達障がいなどの場合も集団生活することでパニックを招き、避難所には入れない場合がある。支援を望むすべての人を対象に、直ちに安心して生活できる場所への移転が可能となるようにすべきではないか。
防災安全部長
市内の福祉施設の定員が入所できる広域福祉避難所の提示を受けていて、避難が長期化した場合の移転先は、国、県が社会福祉施設等と連携し早期に調整を取りながら決めていくことにしています。病院の避難先となる病院については、あらかじめ候補として把握している県内外の病院から県が災害時に選定して各病院に連絡することになっています。
*広域福祉避難所とは、トイレや冷暖房などの設備が整った公共施設で、福祉施設やユニバーサルデザインのアパートなどとは違います。「避難が長期化する」と判断しなければ、安心できる場所への移転とはならないのが実態です。病院同様に相当時間がかかると考えなければなりません。現状では、この避難計画は絵に描いた餅状態であり、市には是正を求めました。
★高齢者虐待防止の対応に関する質問と答弁
平成17年、「高齢者虐待の防止、高齢者の擁護者に対する支援等に関する法律」が施行されているが、施設内で虐待が発生した際に、適切に高齢者の人権を守ることができるのか伺う。
(1)聞き取り調査は、誰を対象に何を明らかにするために行うのか
(2) 調査担当職員は、どの課のどの職種か、他にどのような職種の方が参加するのか
(3)虐待を受けたとされる高齢者の医療機関受診の必要性を判断するのは市の職員か、医療職か、それとも施設側の判断をそのまま信用し受け入れるのか
(4) 虐待の有無の判断はどのように行われるのか
(5) 虐待かどうか判断に迷う場合、弁護士、医療関係者、学識経験者等を交えて検討し、総合的に判断すべきと考えるが、現在、その体制が整っている のか
(6)行政が高齢者虐待を認定することは、どのような意味を持っているとお考えなのか
(7) 高齢者が虐待を受けていることについて、家族に説明も謝罪も行われていない場合、市はどのような対応を取ることになるか
(8)過去において松江市内で発生した虐待に対して、適切な対応が行われたのか伺う。また、通報者、高齢者及びその家族から市の対応に対する苦情はな いか
健康福祉部長
事実確認の調査は、虐待を受けたと思われる高齢者とその家族、施設の全ての職員に行うものです。また、調査は介護保険課職員、保健師、監査指導課職員により行っています。保健師が受診の判断を行い、必要であれば受信を要請し、後日受診の有無と結果を確認することにしています。虐待の有無は、確認した事実に基づき、法に照らして介護保険課で判断します。虐待の判断に迷う場合は、検討する場として弁護士・医師・社会福祉士の専門家を交えた高齢者虐待等対策検討会開催の体制を整えています。
行政が虐待を認定する意味については、サービスを受ける側と提供する側双方に中立、公平な立場に立って、法に照らして判断することと認識しています。家族に対して十分な説明が行われていない場合、施設に対して指導を行い、後に事業所側から報告を受け、改めて今後の対応について指導を行います。
発生した虐待については、適切な対応を行っていますが、1件の苦情が寄せられています。
*市の答弁は適切な答弁のように聞こえますが、いくつか問題があります。虐待を受けたと思われる高齢者が認知症の場合には、聞いても答えてもらえないと考え、全く聞いていません。日本社会福祉士会は、「聞き方によって答えてもらえる場合があるので認知症高齢者にも聞かなければならない」と、手引きに示しています。そのために、社会福祉士の調査への参加を勧めているのです。市は「中立、公平」を重んじるあまり、虐待認定をためらい、事実確認すら十分にできていないように感じます。日本社会福祉士会は、虐待判断を専門家を交えた第三者機関が行う必要性にも触れ、積極的な判断と対応を勧めています。それは「地域の福祉の水準を高めていくためだ」としています。この点について、市の答弁は体制を整えているとのことですが、開催実績がなく、絵に描いた餅状態です。
最後に、苦情の有無を聞いていますが、1件の苦情は、この適切な答弁内容すら実際には行われず、「市は、なぜ高齢者を救ってくれないのか」という強い不信感に満ちたものでした。市には、適切な対応と日本社会福祉士会が示す手引きに従い、改善するよう求めました。