7月13日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
世論を超える
一般に、指導者というものは世論というか多数の意見を大切にしなくてはいけない。世論に耳を傾けず、自分一個の判断で事を進めていけば、往々にして独断に陥り、過ちを犯すことになってしまう。
けれども、それはあくまで平常の場合のことである。非常の場合にはそれだけでは処し切れない面も出てくる。そういう場合には、指導者は世論を超えて、より高い知恵を生み出さなくてはいけない。
常は世論を大切にし、世論を尊重しつつも、非常の場合には、あえてそれに反しても、より正しいことを行なう。それができない指導者ではいけないと思う。
2013年7月13日天声人語(OCN朝日新聞デジタル)
天声人語
▼四重奏といえばうるわしい旋律を思い浮かべるが、「死の四重奏」というのもある。高血圧に糖尿病、高脂血症、肥満の四つが重なると、脳卒中や心筋梗塞(こうそく)を起こしやすい。中でも高血圧は日本人に多く、その数は約4千万人にのぼる
▼日本は以前、脳卒中による死亡率が世界一高い国だった。今も欧米より高いという。そこへ「脳卒中などを防ぐ効果が高い」とうたう高血圧治療薬があれば頼りたくもなる。そのうたい文句が、あろうことか偽りだった
▼かいつまんで言えばこうなる。臨床研究の不正で虚偽の論文が作られた。論文をもとに会社側は、血圧を下げるほかにも脳卒中や狭心症を防ぐ効果が期待できると宣伝した。そして国内で年間に1千億円超を売り上げていた。「ディオバン」という薬である
▼飲んでいた人は収まらぬ心地だろう。米国のある作家が、「奇跡の薬とは、効能書きにうたってある通りに効く薬のこと」ときつい皮肉を言っていたのを前に紹介した。そんな言葉も思い浮かぶ、ゆゆしき背信である
▼製薬会社などの研究室で生まれた化合物が、薬と承認されてデビューする成功率は約3万分の1という。針の穴を通り、年間売り上げが1千億円を超す新薬は、大型爆弾を意味する「ブロックバスター」と称揚されて巨利の源となる
▼巨費を投じる開発など、薬を巡るもろもろは外から見えにくい。今回きりのことなのか。氷山の一角ではないのか。信頼を揺るがす不正に、うやむやに幕を引かれては困る。
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