昨年の今頃、テレビドラマ化されていた作品。
原作を読むと、テレビドラマ化した人たちの創作がわかる。
原作でのブランケット・キャッツは、ペットショップで売れ残った猫たちが2泊3日のレンタル用として訓練されたもの。
テレビドラマでは、家具店店主が交通事故で亡くなった妻の飼っていた猫の飼い主を見つけるためにお試しで貸し出される。
前者は、ペットショップ店主の家族には一切触れていない。だから後者は、配役と絡めてより原作を膨らませた作品になっていると言える。
それは「流星ワゴン」でもそうでした。重松さんの作品には、読者の想像を刺激する要素が多く含まれているのでしょう。
「猫の力」を実感させる小説でもあります。人だけの日常生活に猫が入ってきたことで起こる化学変化。
あるいは希望の方に吹く風。
連作短篇が7つ収められていますが、借主によって文体も変わる。猫目線の話もある。
猫語りは「吾輩は猫である」以来。でもこちらの猫は、だいぶたくましいです。
ご先祖様の声に導かれ、レンタル稼業を脱出し、本来の在り方を見出していく。その時、助けとなったのが家出した幼い兄妹でした。
兄妹にとっても「猫ちゃん」の登場によって助かった。
そんな猫好きにはたまらない、猫好きでなくてもおすすめできる、小さいけれど確かな小説です。
重松清著/朝日文庫/2011
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