公務員を退職せざるをえなくなって、暇を持て余しているおじさんたちにもぜひ読んでいただきたい一冊。
大人になることが難しくなってしまった。
なぜなら、若さばかりに価値が置かれているから。
なぜ、ヒトとしての成熟に価値が見出されにくいのか?
わかりにくいし見えないからなのでしょう。計測する方法も尺度もない。
インスタ映えもしない。
でも、人は、会えばわかる。人としての成熟こそが信頼の源であることを。
信頼できる大人を探し求めて、ツイッターをさまよう若者たちの多さ。
かつての私もそうだった。インターネットもない時代、信頼すべき大人を探し求めていた。
40を過ぎ、今度は私が信頼できる大人として受けて立つ番。
そんな役回りの変化も感じ、この本に手が伸びた。
諸富さんの著作は何度か読んでいます。
「トランスパーソナル心理学入門」(講談社現代新書)は、このサイトでも何度か触れていますが、私の転機の一助となった。
今回の本も、基本的には諸富さんの伝えたいことが繰り返されている。
「私が命(人生)しているのではない。命(人生)が私している」
私は人生の交通整理役でしかない。人生は次々に使命を与える。私は、いかにそれらの使命を全うできるか、いつも問われている。
この感覚は、小説を書く時にも通じている。
私は、ついていくしかない。私が導くのではない。彼ら彼女らを、まずはしっかりと受け止め、傾聴する。一つ理解するたび一つ文が通る。
本当にこの道でいいのか? 深く、十分に生かすことができるのは私しかいません。
そんな私を忘れてしまえるほど夢中になれる命の活動。没頭できる何かと出会えているか。それが大人の扉を開く鍵。
その何かは、必ずある。もし、関わることを妨げている何かがあるなら、それらを取り除くことが先。
除くことができなくても共存できる。わかった瞬間に消える葛藤もある。
果たせないならあきらめることができる。思い通りにはならない。でも、選択はできる。
生きる一助に、この本はなるでしょう。
バランスの悪すぎるおじさんたち。一人、静かに、我を忘れて、本を読んでください。お願いします。
諸富祥彦著/集英社新書/2017
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