ハーフドーム
眼前にハーフドームの頂が迫る。しかしそう簡単には近づけてはくれない。
長い年月をかけて氷河の侵食によって造られた頂に行くためには100m以上のワイヤーを登っていかなければならない。その前にそれに挑戦する資格があるかどうかを試されるような石段を登って行く必要がある。
ここまで来たものは既にその覚悟を持っており、仮の登頂手形を持ってるようなものだ。
しかし私はここまで来た時、初めてこの景観を発見し、このトレイルを全ての人が享受出来るようにしてくれた先人達の偉大な功績に驚き、感謝した。
ここまで抜きつ抜かれつ共に登ってきた人達はここまでの労をねぎらい、さらに最後の試練を越えようと励ましあう友となっていた。
私達は持ってきたゴムつき手袋を、ある者は革手袋をはめてハーフドームの岩肌にその一歩を踏み出す。
踏み出してしまえば後戻りは出来ない。手を離せば足だけでは到底立ってはいられない勾配の岩肌を登って行く。もちろん離せば死が待っている。これは誇張ではない。
私は決して高所恐怖性ではないが、この時ばかりは登ったはいいが降りてこられないのではと本気で思った。
しかしもう引き返せない。夢夢も必死だ。
そして、次第に手にかかる体重も軽くなってきた。
登頂。
360度シェラネバダの山々が見渡せる。西側にはヨセミテバレーが、東には果てしなく続くシェラネバダ山脈の山々が、南側では自然発火による山火事が起こっているのが見える。北側にはノースドーム。
切り取られたハーフドームの淵に立ってみたがそのままバレーの底に吸い込まれそうになって10秒もそこにいられなかった。
ラスベガスから来る途中、機内から見たシェラネバダの山々はただの荒涼とした風景であった。しかし自らの足でその大地に立つ時、改めて自然の大きさを実感した。
40分程その偉大な景観を楽しんだ後、ハーフドームを後にした。もちろん下りは想像していた通りの恐怖であったが、まだまだ登ってくる人達を鼓舞しているうちに降りてしまった。
夢夢は帰りはまったく怖くなかったらしい高所恐怖症のくせに・・・・・
そして長い下りが待っていた。
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