奇人凡人のブログ

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薪割機製作のQ&A

2021-02-20 | 【DIY-15】 薪割機 Q&A

薪割機のQ&A

お粗末な自作の薪割機ですが、作り方についての質問を受けることがあるため、ここに整理してみました。 

また、私がネットを通じて教えてもらったことも多々ありましたが、その内容もミックスして掲載させて頂きました。 

ここでの薪割機製作は、中古の油圧機器を集めて作ることを前提にしています。買った方が、しっかりとした

 機械を手に入れることができますが、油まみれで自作薪割機を使いこなすのも、なかなかの醍醐味ですよ。

   ここに掲載した写真は、このページを立ち上げた時点のもので、その後の改造により、各部分が相当変わっています。

また、「私の場合は・・・」と随所に出てくるとおり、単なる一例ですので、あくまでも自己責任ということでお願いします。

 

1.薪割機を作るには主に何を揃えれば良いか?

フレーム、動力、シリンダー、刃、ギアポンプ、操作弁、作動油タンク、油圧ホースなどです。

2.油圧機器は、何から外したものが良いか?
油圧で動く機械に付属していますが、小型のブルやパワーショベルに付いているものが良いようです。
寄せ集めの場合は、古くて素性が判らないことが多いので、使用に耐えるか否かの判断が難しいところです。
複数ある場合は、能力の大きい方を選ぶと良いと思います。
油圧機器は油漬けですから、中古でも錆びや磨耗の心配は少ないのですが、オイルシールからの油漏れは覚悟しておく

必要があるようです。購入時には、万が一の場合を想定して、前もって交換してもらえるような交渉しておくと良いです。

でも断られることが多いかも。

3.油圧機器はどんなところから、いくらくらいで入手しているか?
新品ですと、いずれも数10万円くらいするらしいので、中古を手に入れるしかありません。
私は近くの重機(建機)屋さんから、シリンダー、ギアポンプ、操作弁のセットで3万円で買いました。
ちょっと高めですが、斧を振り回さずに、数千本(私の実績)の薪を割ってくれると思えば、高くはない買い物であると思っています。

4.フレームの条件は?

フレームを設け、その上にシリンダーを載せて刃を往復させます。
ベースの片端にはシリンダーの受け金具(ブラケット)を、もう一方の端の板で、押される薪を受けます。
シリンダーのヘッドに押し板を取り付け、フレームに刃を固定する場合もあります。
また、フレームには、厚肉の溝形(C形)鋼やH形鋼などを使います。
私の場合は、9×75×150mmの溝形鋼2本を安く入手できたので、これを背中合わせにして使いました。
全長が1.8mを超えてしまいました。
フレームの強度がないと、曲者(太い堅木で又の部分など)を割る際、ねじれが発生することがあるので、要注意です。
次に製作するときは、H形鋼175×175×11mmの鋼材1本を使い、強化と構造の簡素化を図ろうと考えています。
移動が必要な場合は、フレームに車輪が必要です。私の場合は、フレームをコンバインシャーシの上に

取り付け、自走機能をそのまま使いました。移動が簡単です。 

5.シリンダーを選ぶときの条件は?

シリンダーの先端に刃を取り付けて往復させます。シリンダーのストロークは、作りたい薪の長さから決めることになります。
ストーブには、それぞれ入れられる薪の寸法があります。例えば50cmの薪を作るのであれば、刃のストロークは50cm必要になります。
でも実際は、5cmくらい薪割機のストロークが短くても、クサビの効果ですべて割れてくれますが。
太めで曲者を割るなら、パスカルの原理そのままで、直径の大きな油圧シリンダーと、高い油圧が必要です。
私の使っているシリンダーは、外径140mm、ストロークは476mmで、バックフォーから外したもののようです。
前述しましたが、後あとのことを考えると、心臓部ですから少しでも太めのものを選択しておいたほうが良いと思います。
入手したシリンダーのストロークが不明な場合は、実際に縮めたり伸ばしたりして測定する必要があります。
測定するには、コンプレッサーで空気を入れても伸縮できるはずです。
私の場合はシリンダー尻側の穴にロープを通してフォークリフトのフックに固定。ロッド側も同じようにロープを通して軽トラの

フックに引っ掛けて、ゆっくりと引っ張りました。
ご他聞に漏れず、私の購入したシリンダーも、最初から周辺が油でにじむ程度のオイル漏れがありました。
しかし、常に漏れている下にボロキレを敷いて使っています。漏れが激しくなったときには、シール交換に挑戦をしてみようと思っています。 

6.ギアポンプを選ぶときの条件は? 

                                                  

 油圧を生み出すために、ギアポンプを回転させて使います。
シリンダーのストロークと、直径に見合った吐出量のギアポンプが必要ですが、外観は同じでも、“高い油圧で少ない油量”のタイプと、

 “低い油圧で多い油量”のタイプがあるようで、選択はなかなか難しいようです。
ギアポンプが大き過ぎるとエンジン負荷が掛かり過ぎます。
それによりレリーフ弁から作動油が逃げる量が多くなり、たちまち作動油が高温で沸騰してしまいます。
私も3台目のギアポンプでようやく満足できる一台の薪割機が完成しました。
ギアポンプを取り替えると、シャフト径や取り付け穴、配管径の変更が必要で、不運のときは回転方向まで違ってくるので、

作り直しは本当に大変です。
シリンダーにマッチしたギアポンプを一発で選択できれば、製作もすごく早くなると思います。良い方法をご存知の方、是非教えて下さい。
ディーゼルエンジンからVベルト(赤色)を介して回しますが、カップリング(フランジ形たわみ継手)とピローブロック(軸受)を使って、

ギアポンプのシャフトに横からのストレスを加えない構造にします。
写真では、スペースの関係で、プーリーをピローブロックの間に入れましたが、この後に、外側へ出して、ベルト交換を容易にしました。
油漏れについては、シリンダーと同じで、軸受け部分から発生しやすいものです。
最初のギアポンプは油漏れしていたので、メカニカルシールを交換してみましたが、直らなかったのでギアポンプをそっくり交換しました。
配管継手の太い方が作動油を吸引する側、細い方が吐出する側になります。逆転すると油圧は上がりません。 

7.作動油タンクを選ぶときの条件は?

シリンダーに作動油を送るためには、蓄えるタンクが必要です。
タンク内部は大気圧ですから、厚肉の耐圧タンクは不要です。
私の場合は、農機具の燃料タンクを見つけ、内部で泡が発生しても吸引しにくいように改造して使っています。
タンクには油面計やドレン抜きがあると便利です。シリンダーの大きさにもよりますが、10リッター程度のタンクもあれば十分でしょう。 

8.操作弁を選ぶときの条件は?

シリンダーを往復させるための切り替え弁で、レバーを取り付けて操作します。
油圧回路が遮断されて、一定以上の油圧になったときに作動油タンクへ逃がしてやる、“レリーフ弁付き”を選びます。
単なる“操作弁”とあなどるなかれ。これがギアポンプの能力とマッチしないと、油温が著しく上昇します。 

9.油圧ホースを選ぶときの条件は?

シリンダー、操作弁、作動油タンクを接続するには、油圧用の高圧ホースが必要です。
使用する圧力、両端の口径(継手のネジの種類)、長さを指定すれば、ホームセンターで作ってくれます。
長さは最初から決め難いので、機器の配置が確定した段階で。ホースの長さは、金具の先端から先端までを言います。
長さと径が合えば、中古でも良いのですが、ヒビの入っていないものを使います。
私の失敗談をひとつ。作動油タンクへの戻り配管に、手抜きをして水道用ホースを使ったところ、真夏にホースが抜けて、オイルを噴射!!!
油温が上がってホースが柔らかくなり、スッポーンと抜けてしまったようです。もちろんホースバンドもしていたのですが。
戻りの配管は高価な油圧ホースまではいらないにしても、甘く見てはいけませんね。代わりに水道用の塩ビ管で配管してみました。

懲りずに。これも長く使うと、硬化して割れ易くなります。
専用の耐油ホースは肉厚で、吸引してもつぶれませんが、1m当たり4千円以上するので、採用を見合わせました。

10.動力は何が良いか。またシリンダーの推力はどのくらい必要か?

 重機に使用しているポンプ、シリンダーなどは、250㎏/cm2程度の高圧で使用していることが多いらしいです。
その油圧をフルに引き出すためには、それ相応の動力が必要になります。
薪割機の動力には、エンジンまたはモーターを使います。家庭用の100V容量で薪割機のモーターを回すには、きつ過ぎます。

しかし、私の知人でインバーターを使って、100Vで200Vのモーターを回している方もおられます。
十分な容量があれば、200V電源でのモーターもお勧めです。
コードを引きずるため、広範囲を移動する自走式は難しくなりますが、コンパクトに出来るし、動力から出る騒音は、エンジンよりも静かです。
しかし、ギアポンプが回転する音は結構高いので、密集した住宅地ではモーター式と言えど要注意です。
市販の100V薪割機が良く出回っており、私もホームセンターから購入して、しばらく使っていました。
ケヤキとかの堅い木でも、曲者でなければ割れていましたので、かなり高い効率の設計がしてあるものと思います。
私のVer.1機では、ロビンのEY20B(最大出力5馬力)を使って見ました。曲者をフルスロットルで割ろうとしても

エンストしてしまい、物足りなさを感じました。
Ver.2機では10馬力2気筒のディーゼルエンジン(上の写真)を使いました。 曲者を割る時には、さすがエンジンに負荷が掛かり、

黒っぽい排気ガスを出すとともに回転数も落ちますが、殆ど不満なく割れるようになりました。でも、2気筒は3気筒に比べてかなりうるさいですね。
「直径30cmの杉丸太は、どれ位の推力(トン)で刃を押せば割れるか」との質問されることがあります。
しかし、「切り倒したばかりの杉よりも、乾燥させ杉が割れやすい(広葉樹はその逆)し、丸太の条件によってもかなり違いがあるので、

一概には言えません」とお答えしています。 

11.エンジンとギアポンプのマッチングをどうするか?

ギアポンプを毎分何回転で回せば良いのかは、ギアポンプの素性がはっきりしないと判りません。

しかし重機(建機)に使用されている油圧ポンプの回転数は、1,000~2,500rpmが普通のようです。
私の1個目の場合は、たまたまギアポンプ本体に、“カヤバ”と型番が刻印されていたので、ネットで検索して仕様書と性能曲線を入手しました。
最低回転数は600、最高回転数は3,000rpmと判ったので、エンジンの回転数をそのまま使いました(左の写真)。
実際の重機での回転数は、油圧ポンプの性能曲線の常用回転数域の一部を使っているに過ぎません。
油圧ポンプ自体は、700~4,000rpmくらいの範囲は使用可能ですが、あまり回転数が低すぎると、ポンプの機械効率(摩擦等の

損失)が極端に悪くなります。また高回転数では油膜切れを起こして焼き付き易くなります。
エンジンの場合は、容易に無段階で回転数の制御が出来るので便利です。
エンスト近くまで回転数を落としても、結構な推力で薪は割れてくれます。逆にエンジンを回転数をアップしても、

比例して推力は上がってくれません。 

12.刃はどんな形が良いか?

刃先が鈍角の場合は割りづらく、逆に鋭角で薄いと、薪を分割する力が出ません。
私は市販の薪割機の角度を参考にして、約30度に。刃の高さは太モノでも割れるように、高さ34cm、“斜”の長さを20cmとしました。 

13.シリンダーと刃の取り付け方法は?

ロッドと刃の連結は、電車の連結器のように、フリーにした方がスムーズに動きます。
刃の下のプレートでレールを挟んでいますが、ここもラフにしています。
どうしても、シリンダーには斜め横からの力が掛かりますが、作動油漏れ防止のためにも、極力少なくしてやる必要があります。 

14.設計から製作まではどんな手順で?

まずは、使用する主要部品をすべて揃えることが必要です。
これをバランス良く配置してみて、フレームのサイズを決めると間違いがないと思います。
私の場合は、CADで図面をしっかり描いたつもりでしたが、組み立ての段階で、相当変更が出ました。図面を描いては作り、

作っては描きの繰り返しでした。 

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【もっと便利に】

組み立てが完成すると、油圧回路が間違っていなければ、シリンダーは正しく往復してくれます。
しかし、実際に薪割り作業を始めると、改善したいことが多く発生するものです。
小さなことですが、オリジナルで、下記の事項を改善しました。

●薪を割り終わってロッドが戻って死点に達したら、操作弁を解除させて自動で刃の動きが停止する機構を付加しました。

●エンジンアクセルレバー(青のグリップ)を、シリンダー往復レバー(黒のグリップ)の脇に設けて、コマメにアイドリングができるようにしました。

●割れた薪が刃に喰い付いたまま戻ることがあるため、薪が外れるよう刃の両サイドにストッパーを付けました。

●薪が割れると、薪が両サイドへ分かれます。そのため、両サイドに薪の転がるスペースを設けました。
また、写真右側のストッパーに、縞鋼板を張ることによって、薪小口の滑りを防止しました。 

 【改善したい部分(課題)】

度重なる改造で、相当便利になりましたが、さらに次の事項を改善できたら良いと考えています。
●薪を割り終えたあとでも、自動で操作弁を解除して、刃を自動で停止または逆戻りさせたいです。
●往復レバーのグリップに、エンジンアクセル機能も加えたい。できれば多機能化した1本のレバーで。
                                                                                                                                                                        

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【私の参考書】

このページに記載した事項は、下記の文献から抜粋したものではありませんが、私が参考にした本をご紹介します。

●「新・知りたい油圧(基礎編)」 不二越ハイドロニクスチーム著 ㈱ジャパンマシニスト社発行
●「改良・改造 手づくり農機傑作集」 トミタ・イチロー著 農山漁村文化協会発行
●「かゆいところに手が届く 農家の機械整備便利帳」 青木敬典著 農山漁村文化協会発行 

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