ひとつ前のブログで、「NET119緊急通報システム」(以下「NET119」とします)のお話をしました。
その続きです。以下は実際にあったお話です。一歩間違えば父は亡くなっていたと思います。
その日、朝から始めた自宅トイレのリフォームがちょうど終わるお昼ごろでした。トイレ工事の方があとかたづけをしていました。突然、私の名前が呼ばれた気がしました。私は補聴器をしてもかなり大きい音でないと聞こえません。
工事の方が、誰かが私の名前が呼んでいるよとジェスチャーで教えてくれました。裏口で私を呼ぶ声がしたようです。そちらに行くと、裏口のコンクリートの床が一面血だらけになっていました。さらに血痕が玄関のほうへと続いていました。
玄関に行くと、腕に傷を負った父が体じゅう血だらけで、今にも意識が無くなりそうな状態でした。私は止血しようとしてタオルで腕をしばったのですが血が止まりません。そのうちとうとう床に横になって倒れてしまいました。
いつも私はもしかしたら救急車を呼ぶ事態が起きるかもしれないと思っていました。それで、スマホに「NET119」を入れていたのです。「NET119」がなかったら私は近所の誰かに助けを求めていたでしょう。そして気ちがいのように駆け回っていたでしょう。運悪くご近所が不在だったら時間切れで最悪のことになっていたかもしれません。
早速、スマホで事前に何回か練習したように「場所、具合の悪い人、その他伝えたいこと、あとはチャット*で進行」をスマホへ入れようとしました。しかし、手が震えてまともに入力できないです。特にチャット*のところであせってしまうのです。それでも誤字脱字のある最低限の情報を発信できました。
10分くらいたって、救急車が到着した時は心底から安堵をしました。父も安心したようでした。
救急隊が腕の傷を応急処置し血は止まり、緊急事態を乗り越えました。父は一週間ほどで退院ができたのでした。
あとで父に聞くと、父は農作業中にサンダーという道具を使っていました。誤ってサンダーで肩の下の所を深く切り、血が止まらないため軽トラックで自宅まで戻ってきたのでした。一歩間違えば父は亡くなっていたかもしれません。父は私の自宅の脇にある隠居に住んでおり、私が自宅にいたのも幸いでした。
「NET119」があったことに私はこころの底から感謝しています。開発をされた役所の方々に本当にありがとうございました。
私があまり書きたくない苦い経験を書く理由は、難聴者にとって重要な情報と思うからです。また、健康な方にとっては難聴者が置かれた弱い立場の理解につながると思います。
難聴者は見た目は健康な人と変わりなく、どうということはありません。しかし、精神的にけっこうつらいです。仲間はずれの気分です。
難聴というのはだんだん悪化します。そして、私の難聴も悪化しています。いつ全失聴するのかわらないです。全失聴して認知症などになってからでは経験を残そうとしてもできないのです。それで最近になって役立つ情報をまとめたブログを書き始めました。
*チャット:
チャット(chat)は、インターネットでよく利用されるサービスのひとつ。本来は“おしゃべり”という意味の言葉です。インターネットでは、複数の利用者がリアルタイムにメッセージを送信するためのシステムをチャットと呼びます。(総務省ホームページより。)
ありがとうございました。