広島市では、4月の市改正条例施行に伴い
平和記念公園での喫煙を全面禁止し、国際会議場内に喫煙ブースを設置しました。
屋外での喫煙を禁止するために屋内に喫煙ブースを新たに設ける市の決定は
愚策中の愚策であり、広島市が掲げる
『世界に誇れる「まち」の実現に向けて―市政推進に当たっての基本コンセプト―』
とは相容れず、「平和都市広島」の名前が泣く施策だといえるでしょう。
3月22日に広島市ホームページから要望を送ったところ
本日4月18日、市民局国際平和推進部国際交流課から回答を頂戴しました。
回答は、とうてい納得できる内容ではなく
これが「平和都市」を謳う広島市の受動喫煙に対する配慮のレベルであると知り
かなりがっかりしています。
長文ですが、誤解を招かぬよう、回答の全文を掲載します。
<回答>
平成30年3月22日及び4月2日に電子メールにて「広島国際会議場内に喫煙ブースを設置する件について」の御意見をいただきありがとうございました。広島国際会議場に関する事務を担当しています国際交流課から回答いたします。
本市は、「広島市ぽい捨て等の防止に関する条例」の一部改正により、4月1日から平和記念公園の屋外が全面禁煙になるのに伴い、広島国際会議場屋外に設置している灰皿を撤去し、地下1階に喫煙ブースを設置しました。
広島国際会議場はホールや会議室を有料で貸し出し、使用していただく施設であり、利用者には非喫煙者の方も喫煙者の方もいらっしゃることから、国内外の利用者に、様々な会議等で使っていただく施設として、利用者サービスとして喫煙場所は必要なものであると考えています。また、本市にとって、国際会議を始めとするMICEの誘致を推進するために、広島国際会議場はなくてはならない施設であり、非喫煙者の方の受動喫煙防止に最大限配慮した喫煙ブースを導入することにより、非喫煙者の方、喫煙者の方がそれぞれ共に利用しやすい会議場とすることが必要であると考えています。
御質問にありましたこの度の喫煙ブース設置の検討過程において、健康福祉局と協議は行っておりませんでしたが、今回の喫煙ブースの設置は、厚生労働省の基準に沿ったものであると理解しており、仮に同局の指導があったとしても厚生労働省の基準に沿ったものであったと考えています。
我が国は「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」の締結国として、国民の健康を保護するために受動喫煙防止対策を推進することが求められています。また、現行の健康増進法では、当会議場は多数の者が利用する施設に該当し、喫煙をすることができる場所を定めようとするときは、望まない受動喫煙を生じさせることがない場所とするよう配慮しなければならず、望まない受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならないと定められています。こうしたことから、本市としては、現行の健康増進法の基準に沿ったものとして、次のとおり、高機能の喫煙ブースの設置を検討し、設置しました。
喫煙ブースは、会議室等を利用する方の移動する通路とは離れた地下1階に設置し、非喫煙者の方がそうと知らずに近づかれることがないように、通路から離れた場所からでも確認できる喫煙所のサインを設置するとともに喫煙ブース付近に喫煙所があることを表示しました。
この喫煙ブースは、高性能の粉じん・ガス吸着フィルターを採用しており、タバコの煙に含まれる粉じん、ガス状成分及び臭いを除去する分煙システムです。ブース内のファンで空気を取り込み、その気流で、粉じん・ガス吸着フィルターを通し、タバコの煙を浄化して空気を屋内に排出します。また、屋内に排出される空気はもとより喫煙ブース内の空気についても、厚生労働省の分煙効果判定基準をクリアしていることが必要であると考えており、厚生労働省の分煙効果判定基準策定検討会報告書等に基づいた広島国際会議場の空気環境測定ガイドラインを作成し、粉じん濃度等を定期的に測定し、確認しています。
さらに、健康増進法の一部を改正する法律案を踏まえますと、当会議場は第二種施設に該当すると思われますが、その場合、喫煙専用室の場所以外での屋内の場所で喫煙をしてはならず、喫煙専用室の構造及び設備を厚生労働省令で定める技術的基準に適合するように維持しなければならないとされています。厚生労働省の参考資料には、この具体的基準については、今後、有識者の意見等も伺い、定めるとありますので、喫煙ブースが技術的基準に適合しているかを今後、注視してまいります。
喫煙ブースの分煙システムを有効に活用するためには喫煙者の喫煙ルールを守った行動が何より大切です。そのため、喫煙ブース周辺及び喫煙ブース内に啓発のサインを明示するとともに、各会議や催事の主催者に対して、喫煙者への啓発を依頼していきます。なお、ご意見の中にある環境タバコ煙については、この喫煙ブースではタバコの煙は拡散する前にフィルターへ吸い込まれ、衣服などに煙が残らないシステムとなっています。また、呼出煙への対応は、喫煙ブース内に「退出時は、壁(フィルター)方向へ複数回数深呼吸して下さい。」というサインを掲示しています。
こうしたことから、大変申し訳ございませんが、現時点では、広島国際会議場の喫煙ブースの廃止については困難な状況です。
今後ともお気づきのことがございましたら、是非お聞かせいただきますよう、お願いいたします。(赤字は荻野による)
平成30年(2018年)4月18日
広島市市民局国際平和推進部国際交流課
回答を拝読し、FCTCの趣旨を全く理解せず、現行の健康増進法も誤解していること
たとえ喫煙ブースの技術的基準が厚生労働省の基準に適合しているからといって
その後にWHOから出された政策勧告に合致しているものではないこと
呼出煙によって放出される有害物質の拡散が
複数回の深呼吸で解決するかのような誤解を市民に与えることなど
気づいたことは多々あるので、後日まとめて質問状を送る予定です。
また、国際交流課では仮に健康福祉局が喫煙ブース設置に関わっていたとしても
喫煙ブースは厚生労働省の基準に沿ったもので問題はないと考えているようです。
健康福祉局に直接問い合わせた回答ではない模様ですので
別途、健康福祉局としての見解を問う質問状を送ろうと思います。
広島市が計測しているという粉じん濃度の開示請求
あるいは第三者機関に粉じん濃度の計測を要請する等
広島市の愚挙に対し落胆と怒りを感じている市民が
喫煙ブース設置に反対している広島市医師会と協力し
粘り強く廃止を求めていくことが必要です。
それにしても、文言に「厚生労働省」と6回も出てきます。
この喫煙ブースが技術的基準に合致すると広島市が主張する根拠は
16年も前に出された厚生労働省の分煙効果判定基準策定検討会報告書を基にしています。
こうなると、財務省はもちろんのことですが
ふた昔も前の中途半端な対策を策定し、未だに維持している厚生労働省こそ
行政のタバコ対策推進を阻み、後退させてしまうイネイブラー(註)だと言わざるを得ません。
(註)
イネイブラーとは、依存症者を手助けすることで
かえって依存症の回復を遅らせてしまう周囲の人間のこと。
詳しくは
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット
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