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身のまわりに見受けられるようになった「グローバル化」と生きる上での大事な「こころの健康」。さまざまな観点から考えます。

★☆第86回「自信回復7つの習慣~うつ解消・ヘルスマネジメント(心とからだ)技術(その7/7)」★☆

2023-04-11 09:23:40 | メンタルヘルス

自信回復7つの習慣の最終回は、「●立ち直るための工夫をする」です。

立ち直るための工夫とは、自分を変えるための実行可能な工夫のことです。では、自分を変えるには、どうしたらうまく行くのでしょうか。

ステップごとに少しずつ自分を変えること、そして、「自分ならできる、きっとうまくいく」と思えるこころの状態(self-efficacy:自己効力感)まで自分をもっていくことです。

では、まず、自分を変える5つのステージを見てみましょう。

1つ目のステージ(S):変えようとするつもりもないし、その意識もないとき。

2つ目のステージ(S):変えようかと思っているけど、心の準備がないとき。

3つ目のステージ(S):変えようと思って、その心の準備ができているとき。

4つ目のステージ(S):変えようと取り組み始めて6ケ月以内のとき。

5つ目のステージ(S):変えようと取り組み始めて6ケ月以上のとき。

それぞれのステージ(段階)でどうやったらいいかを考えてみましょう。

1S:本人にその気がないのですから、周りや支援者が、変えようとするその分野の簡単な知識を与えたり、関連の情報、インターネットでの情報収集や、本などを読むことを勧めます。たとえば、運動不足のままでいると、将来どうなるのかを考えてもらいます。逆に、運動するとどう自分が変わるのかをイメージしてもらいます。たとえば、不健康な生活を今のように続けていると、家族や友人との関係がどうなるのかを考えてもらったりします。周りや支援者は、本人が今の行動や習慣を変えないと、将来どうなるのか、引き起こされる結果を丁寧に、でも強制しないように伝えることになります。

もし本人が、少しでも変えてみようかなと思ったとしたら、次のステージを考えてみます。

S:変えようかと思っているけど、心の準備がないときとは、本人が自分の心身の改善について、本やインターネットで情報収集したり、専門家に相談したりする段階です。たとえば、喫煙者が、禁煙しようと決心し、禁煙外来や禁煙グッズなどの利用方法や費用を調べたり、禁煙成功者の体験談を読んだりする時期です。あるいは、ストレスを感じている人が、ストレスマネジメントの方法を学ぶためにセミナーや講座に申し込んだり、本やDVDなどの教材を購入したりする段階です。この段階では、周りや支援者は、具体的な行動が取れるよう支援します。たとえば、運動不足の場合、運動教室や、身近にできる散策コースなどの紹介や、車でなくできるだけ歩いたり、エレベーターでなく階段の利用をそれとなく一緒にしたりします。

Sこの段階では具体的で達成可能な計画を作る段階です。前段階のSやこの段階では、変えるための「動機づけ」が一番大事になります。動機づけとは、自信とやる気を出させることです。動機づけに最も関係するのが、セルフエフィカシー(self-efficacy)です。これは、自己肯定感や自己肯定力と呼ばれています。「自分のことが好き」「自分は価値のある人間で、生きていく価値のある人間」「自分のことを良いところも悪いところもそのまま受け入れられる」「自分は愛される価値もあるし、愛される力もある」と思うことですが、日本の小中高生は、海外の小中高生に比べて、この自己肯定感が低いことが知られています。大人の場合も、海外にくらべて、自己肯定感が高いとは言えないようです。

自信とやる気には、結果予期と効力予期が関係しています。

結果予期(横軸)とは、「この行動を取ったらどうなるかなあ」ということです。たとえば、禁煙するという行動をとったら、自分の健康にプラスになるだろう、との推測(やる気が出る)をすることです。

効力予期(縦軸)とは、「やった方がいいと思うけど、自分にできるかな」というです。たとえば、禁煙した方がいいと分かっているけれど、実際に禁煙できるかなと自分で予測する(自信をもつ)ことで、これは「自己効力(感)」といわれるものです。人が行動を起こしやすいのは、結果予期よりも効力予期が高い方が効果的だと実証されています。

結果予期がプラス+とマイナス-、効力予期がプラス+とマイナス-で、4つの種類があります。

Ⅰ自信もやる気もある

Ⅱ自信がないがやる気はある

Ⅲ自信があるがやる気はない

Ⅳ自信もやる気もない

図には、それぞれの場合、どのような対処が効果的かが示されています。とくに、この中で、Ⅱの自己効力(感)を高めるにはどうしたらいいでしょうか。

「モデリング」、「シェイピング」、「リフレーミング」などの方法があります。

モデリングとは、自分と似たような状況で、そのような人になりたいなと思えるモデルを探し、その人の行動を取入れることや、似たような境遇をもった人の成功体験や問題解決方法をきくことです。

シェイピングとは、できない(変わりたい)行動を、やさしいものから望む行動へと、小さいステップに分けて達成していく(スモールステップ)方法や、段階的にやさしいことから難しいことにチャレンジする(ステップバイステップ)方法があります。

たとえば、子どもへの靴下のはき方をやってみましょう。最初は、こちらではかせてあげてそこから少しだけ引き上げさせます。次に、くるぶしのところまではかせて、そこから上げさせます。次は、つま先まではかせて、そこから引き上げさせます。最終的に、足元に靴下をおき、それをはけるように、小さいステップに分けて習得させます。

また、たとえば、寝たきりで歩けないときは、ベッドを〇度の状態で〇分保持できるようにする。次に、ベッドの上で上半身を起き上がらせて、〇分くらい座っていられる。そして、ベッドに手を置いて立って〇分保持する。つぎに、杖をつかんで立ってみる。そして、杖歩行にチャレンジする。。。。などのステップバイステップの方法があります。このように、自分が変えたい行動を、すぐには完全にできませんので、その行動を小さいステップに分けて達成したり(スモールステップ)、段階的にやさしいことから難しいことにチャレンジする(ステップバイステップ)方法をとれば、難しい行動も少しずつできるようになります。

 リフレーミングとは、視点を変えて、新しい意味づけをすることです。たとえば、仕事で忙しくストレスだらけになっているときに、この仕事は、自分を成長させ新しいスキルを学べるいいチャンスだと、仕事への意味づけを変える(リフレーミング)ことや、あなたを傷つけた人に怒ったときに、これは許しや思いやりを学ぶチャンスだと考えなおす(リフレーミング)ことなどがあげられます。

これらの方法を活用して、小さな達成感や成功体験を積み重ねながら、自己効力感を高め、自分を変えていきます。

S:この段階は、行動を変えることに取り組んでいる状態です。このステージにある人は、行動を変えるために具体的な方法や計画を実践していますが、まだ習慣化されていないため、逆戻りのリスクが高いです。この段階では、周囲からの言葉での励まし、手伝ってくれる人がいるかなと考えたり、一緒にやってくれる人を探したりします。また、ある程度のことができたら、自分にご褒美を与えたり、事前に、周りや家族に「これをやるよ」と宣言することも有効でしょう。運動の場合は、目立つところに運動用のシューズや用具、スポーツウェアなどをおき(刺激コントロール)、気持ちを高めることも役に立つでしょう。

S:この段階では、後戻りの防止を重点的に行います。たとえば、社会的支援(ソーシャルサポート)の強化、変える努力をしている本人へのほめ言葉も効果的です。リラクゼーションやポジティブシンキングなども並行して学んでいきます。

自信回復のための7つ目の習慣「●立ち直るための工夫をする」では、動機づけ、一人で習慣化することが難しいので、周りの家族や友人、施設の支援者の方々など、社会的な支援(ソーシャルサポート)の大切さのお話をしました。「よい習慣づくりには、よき友がだいじ」(日野原重明)です。

 

Sources:

・中央の写真は、カナダ人心理学者アルバート・バンデューラAlbert Bandura(1925年12月4日- - 2021年7月26日)。自己効力感や社会的学習理論で知られている。

「生活習慣病」がわかる本 日野原重明 ごま書房 

Self-Efficacy  Albert Bandura Stanford University 1994 

糖尿病患者のセルフマネジメント教育: エンパワメントと自己効力 安酸史子 メディカ出版

呼吸器疾患患者のセルフマネジメント支援マニュアル 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会/日本呼吸理学療法学会/日本呼吸器学会 

・行動変容ステージモデル(厚生労働省)

 

 

 

Mental Health First Aider  (メンタルヘルス=こころの健康実践援助家)より

 



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