☆★第84回「自信回復7つの習慣~うつ解消・ヘルスマネジメント(心とからだ)技術(その5)」★☆
今回は、
「第5の習慣●睡眠の法則を知ってスマートに実践する」です。とても大事な睡眠のお話しです。
シェークスピアは、マクベスに、眠りの重要性を語らせています。
「これ以上眠るな!マクベスは眠りを殺した」、との叫び声を聞いたような気がする。
無邪気な眠り、ほつれた不安をほぐして編みなおす眠り、一日のおわりをつげる眠り、疲れ果てたからだを洗い流してくれる眠り、傷ついたこころを慰める眠り、眠りは、自然のなかで最も大事な過程で、人生の楽しみの最大の栄養物だ、、、、
(『マクベス』第二幕第二場より)
睡眠には、これまで分かったいろんな法則があります。
特に、ホール博士(Jeffrey C. Hall)、 ロスバシュ博士(Michael Rosbash)、ヤング博士(Michael W. Young) の3人が発見した「体内時計の分子生理学的仕組み」が2017年10月2日にノーベル医学・生理学賞を受賞しました。「体内時計」とは、昼と夜を作り出す1日の体内リズムのことです。これは、サーカディアンリズム(概日(がいじつ)リズム)と言われていますが、バクテリアを含む全ての生物に確認されています。
そこで、睡眠の第1法則は、
「わたしたちのからだは、24時間数十分(大体一日)周期で、夜眠り、朝起きる」(サーカディアン<概日>リズム)となります。
わたしたちの体の中には時間のリズムを刻む体内時計(生物時計)があります。体内時計は、脳(親時計。視交叉上核)だけでなく、内臓などの臓器や血液、筋肉や皮膚などあらゆる細胞(末梢組織)に子時計があることが分かっています。
体内時計は、24時間数十分周期で、夜眠り、朝起きる、という生体リズムをもっています。24時間数十分なので、概日リズム(大体一日、サーカディアンリズム)と呼ばれています。
夜になると眠くなるという体内時計は、朝・昼・夜の光の変化や食事、運動などによって影響を受けています。この生体リズムが崩れると、こころとからだへの慢性的なストレス、統合失調症、うつ、睡眠障害だけでなく、肥満、糖尿病、高血圧、癌などの発症や疲労の蓄積、肌の荒れなどが起こされていると考えられています。
とくに、光と睡眠の関係は大切で、朝の光がわたしたちの体内時計を毎日リセットする大事な役割を果たしています。また、パソコンやスマホの長時間使用などで、体内時計との不一致があると、いろいろな問題が生じてくるのです。
睡眠の第2法則は、「ひとは目が覚めてから約15時間ぐらい後に眠くなる」です。
つまり、私たちが朝に起きた時間で、その日の夜の眠る時間が、からだ的には決まっているということです。ですから、いくら早く寝ようと思っても、すでに朝起きた時間によって、眠くなる時間が決まっているので、なかなか眠れないことがあるのです。その日に早く眠りたければ、その日の朝に、早起きしておくことが大切です。
たとえば、朝7時に起きると、眠る時間は7+15=22、午後10時になってしまいます。ですから、午後9時に眠りたければ、その日の朝6時に起きることが必要になります。
翌朝5時に早起きしたければ、その前日の朝に、少し早めに起きて準備をすることが大事です。たとえば、前日の朝6時に起きて、その日は午後9時に寝て、翌朝5時に起きるという作戦をとります。
睡眠の第2法則は、朝起きて日の光を浴びてから約15時間前後で眠りのホルモン「メラトニン」が増えてくることと、私たちの大脳が15時間以上使っていると疲れて眠くなることが原因といわれています。
睡眠の第3法則は、「光をうまく利用すると、よい睡眠ができる」です。
先ほど、光と睡眠の関係は大切だと言いました。適当な明るさ(照度)をみると、日中の室内で、昼が300~500ルクス、夜間が500~700ルクス程度(一般家庭の場合)になります。300ルクスは、30W蛍光灯を2灯使用したくらい(八畳間)。500~700ルクス程度は、デパートの売り場くらいの明るさです。
朝は自然光が入るよう、カーテンを10cmくらい開けておくと、目覚めも良くなります。
蛍光灯やパソコン、スマホ、LED照明には、短い波長の青い光(ブルーライト)が多く含まれ、眠りのホルモン「メラトニン」の分泌を抑制してしまいます。
なので、夜に強い光を浴びたり、スマホやパソコンのブルーライトを見続けると、目から入った光は、体内時計に直接伝えられ、昼間と勘違いされます。体内時計が遅れると、眠くなる時刻が遅くなることが知られています。睡眠の2時間前(遅くとも1時間前)までに、スマホやパソコンを見ないようにし、部屋の照明を暗めにすると、心地よい眠りにつながります。
睡眠の第4法則は、「昼寝をするなら午後3時まで、30分以内で」です。
昼食後から午後3時までの間、30分未満の規則正しい昼寝は、夜間の睡眠に悪い影響をあたえません。それだけでなく、昼間の眠気を解消して、その後の時間をすっきりするのに役立ちます。逆に、午後3時以降の昼寝や30分以上の昼寝は、夜の睡眠に影響して、寝つきを悪くします。30分以上の昼寝は、からだと脳を眠る体制にしてしまい、しっかりとした目覚めを妨げるからです。また、夕食後の居眠りは、いつもの就寝時間に眠れなくなることもあります。
最後に、良い眠りのための方法について、参考にできるガイドラインがあります。これは、国(厚生労働省)が示した12の指針(ガイドライン)です。
次回は、第6の習慣「●人生あるがままに、でもちょっとだけいいことをする」に進みましょう。
【参考】
・「生物時計はなぜリズムを刻むのか」ラッセル・フォスター, レオン・クライツマン 日経BP社
・「食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門 体内時計が左右する肥満、老化、生活習慣病」柴田重信 ブルーバックス
・「睡眠と健康」 宮崎総一郎、林光緒 放送大学教育振興会
Mental Health First Aider (メンタルヘルス=こころの健康実践援助家)より