小日向白朗学会 HP準備室BLOG

小日向白朗氏の功績が、未だ歴史上隠されている”真の事実”を広く知ってもらう為の小日向白朗学会公式HP開設準備室 情報など

 池上さん、そろそろ本当のことを言ってくださいな、影響力大なんだから…庶民に真実を知らすな、は通じませんよ

2024-11-17 | 小日向白朗学会 情報
  昨日2024年11月16日朝日新聞デジタルは石破首相、習近平氏と初会談「戦略的互恵関係」の包括的推進を確認、とする記事を配信した。その同じ日の夜、同系列のテレビ朝日では池上さんがいつものように政治解説を演じていた。その中で台湾有事の問題を取り上げたが、あまりにも真実から遠い、どこぞのお伽の国のお話のようなことを堂々と述べていらっしゃった。もちろん、賢明なる池上さんが真実を知らないなんてことはあり得ない。つまり、意図的に戯言を堂々と披歴していたということなのだ。もちろん戦略的互恵関係などという外交筋では擦り切れるほど使われている言葉の真意を知らないわけがない。one china policyなる言葉も知らないないわけがないし、さらには日中共同声明を知らなかったら政治解説などできるわけがないのに、である。
 台湾有事がいかに戯言であるか、戯言をベースにした防衛三文書はとっくの昔に破綻していること…こんなことは池上さんは熟知していらっしゃることだと思う。外務省筋発信の防衛三文書が根っこから破綻しているのにもかかわらず予算獲得を睨んで流し続けるプロパガンダの醜悪な姿を、昨晩はテレビ画面で目撃してしまったということかもしれない。
 ところで、当ブログでは昨年2023年12月4日に「米は「台湾海峡有事」で軍事不介入を決定、それでも「島嶼防衛」戦術を続ける日本政府 ―その理由は利権確保もしくは移転のためー」と題して詳しい内容を公開しているので参照していただければ幸いである。(文責:吉田)
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(一部省略)
 ・・・・日本外交敗北の調印式が、2023年11月16日、サンフランシスコで行われたのが、習近平国家主席は岸田文雄首相と会談なのである。
この時の会談内容について、NHKは『【詳細】日中首脳会談“意思疎通重ね 新時代の関係切り開く』[i]のなかでつぎの様に述べている。
『……
岸田総理大臣は訪問先のアメリカで、中国の習近平国家主席と会談し「戦略的互恵関係」の推進を再確認するとともに、新たな時代の日中関係を切り開いていくため、意思疎通を重ねていくことで一致しました。
……
台湾海峡の平和と安定が日本を含めた国際社会にとっても極めて重要だと強調するとともに、台湾との関係に関する日本の立場は、昭和47年=1972年の日中共同声明にあるとおりで、一切変更はないと伝えました。
……』
岸田首相は、アメリカが「一つの中国」政策に回帰したと同様に、日本政府も「一つの中国」政策に回帰することに同意した。ここで両首脳による会談で出てきた「戦略的互恵関係」は何かといえば、外務省HPに「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明」[ii]にその詳細を知ることができる。
『……
胡錦濤中華人民共和国主席は、日本国政府の招待に応じ、2008年5月6日から10日まで国賓として日本国を公式訪問した。胡錦濤主席は、日本国滞在中、天皇陛下と会見した。また、福田康夫内閣総理大臣と会談を行い、「戦略的互恵関係」の包括的推進に関し、多くの共通認識に達し、以下のとおり共同声明を発出した。
 1、双方は、日中関係が両国のいずれにとっても最も重要な二国間関係の一  つであり、今や日中両国が、アジア太平洋地域及び世界の平和、安定、発展に対し大きな影響力を有し、厳粛な責任を負っているとの認識で一致した。また、双方は、長期にわたる平和及び友好のための協力が日中両国にとって唯一の選択であるとの認識で一致した。双方は、「戦略的互恵関係」を包括的に推進し、また、日中両国の平和共存、世代友好、互恵協力、共同発展という崇高な目標を実現していくことを決意した。
2、双方は、1972年9月29日に発表された日中共同声明、1978年8月12日に署名された日中平和友好条約及び1998年11月26日に発表された日中共同宣言が、日中関係を安定的に発展させ、未来を切り開く政治的基礎であることを改めて表明し、三つの文書の諸原則を引き続き遵守することを確認した。また、双方は、2006年10月8日及び2007年4月11日の日中共同プレス発表にある共通認識を引き続き堅持し、全面的に実施することを確認した
3、双方は、歴史を直視し、未来に向かい、日中「戦略的互恵関係」の新たな局面を絶えず切り開くことを決意し、将来にわたり、絶えず相互理解を深め、相互信頼を築き、互恵協力を拡大しつつ、日中関係を世界の潮流に沿って方向付け、アジア太平洋及び世界の良き未来を共に創り上げていくことを宣言した。
4、双方は、互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならないことを確認した。双方は、互いの平和的な発展を支持することを改めて表明し、平和的な発展を堅持する日本と中国が、アジアや世界に大きなチャンスと利益をもたらすとの確信を共有した。
……』
 つまり、2023年11月16日、岸田文雄首相と習近平国家主席の会談で「戦略的互恵関係」に回帰すること、つまり、日本は1972年に発表した「一つの中国政策」を堅持することを約束したのだ。さらに、岸田首相は、具体的に「台湾との関係に関する日本の立場は、昭和47年=1972年の日中共同声明にあるとおりで、一切変更はない」と断言した。
 これは、日本政府が防衛三文書で中国を仮想敵国にしたことは間違であるとともに、台湾有事に介入しないことを習近平国家主席に約束したということになる。

 さて、ここで問題なのは、日本が中国との外交戦で白旗をあげたことを、日本国民に如何に知らせるかである。何しろ、最高司令官である岸田首相は島嶼防衛を命じたまま白旗をあげてしまった。しかし、自衛隊には戦闘停止を命じていないのだ。そればかりか「反撃能力」として準備を進めていた巡行ミサイル「トマホーク」を前倒しで購入していて、いまだ、戦力増強を進めているのだ。
 つまり、日本政府は、外交戦で敗北したことを、いまだ、国民に知られたくないのだ。そのため日本政府も「一つの中国」政策に回帰したことを、悟られないように、「戦略的互恵関係」と、その真意がわからないようにしている。
それは、終戦直後、岸信介が椎名悦三郎の命により軍需省にあった様々な利権を商工省に移行したときと同様の作業を現在の日本政府が開始しているからなのだ。
 その顕著な例が、憲法審査会の動きであり、武器輸出の問題であり、政界再編問題なのだ。
 つまり、長年にわたり政権与党であった自由民主党は、腐敗が進み、今後も政権を維持できる可能性が低下していた中で、更に中国との外交戦に敗北したことで解体もしくは衰退してゆくことは必須なのである。その理由は、自由民主党が議会民主制度のもとで政権党であることができたのは統一教会と公明党と云う集票組織を動かすことができたからであった。しかし、現在の両組織は、昔のような選挙活動は困難である。したがって「おニャンコ」や「ヤンキー」のような水増し議員は落選という現実が待ち受け散るだけである。その数は、現有所属議員の半数に及んでも不思議はない。だから、麻生太郎自由民主党副総裁が、野党との連立を言い出しているのだ。現在の政界の動きは、全てが自由民主党の特権、つまり、宗主国アメリカに許された現地政権であること、及び、外交防衛利権を死守するか移転させるためだけなのだ。

尚、「一つの中国」政策に付いては下記のスレッドでまとめてきた。
・(2023年10月27日)『王毅外相とブリンケン国務長官会談
・(2023年06月22日)『上海コミュニケ
(寄稿:近藤雄三)
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日英円滑化協定の闇へ落ち込んでしまうか…焦るボリス・ジョンソン氏

2024-11-13 | 小日向白朗学会 情報
 本日2024年11月13日Sputnik日本は「米国がウクライナ支援を削減すれば英国は派兵する」と題してボリス・ジョンソン氏へのインタビュー記事を配信している。ボリス・ジョンソン氏と言えば、そう覚えておられるであろうか。2022年2月に戦争が始まってからほぼ同時にスタートしていた停戦への模索が実を結びかけ近々に停戦実現が迫っていた、まさにその時にゼレンスキーに会いにわざわざウクライナへ出向き、「戦争を止めるんじゃーねーぞ」(筆者の推測文)と恫喝して、戦争を継続させ、現在に至るまで泥沼の戦争を招いた張本人ともいえる人物である。(BBC NEWSが2022年4月10日に配信、前日の4月9日にボリスジョンソン氏がゼレンスキー氏を電撃訪問したことを伝えている。)その頃に停戦の話し合いに参加していたウクライナ要人がひとり暗殺(「3月5日にはロシアと交渉しているチームのひとり、デニス・キリーエフがキエフの路上で治安機関SBU(=ウクライナ保安庁)の隊員に射殺され、」櫻井ジャーナル2022年5月3日から引用)されたでしょう。また、これでもかとばかりにもう一人アメリカの方から好戦派の女性VIP(ロイター配信)が同じくゼレンスキーに会いに行き恫喝を重ねた、といったことがあったでしょう。…そんなこともあったかなー…というくらい時間が経過はしているけれど…。
 トランプが再び出てきて世界がデタントに傾いてくるのを目の前にして死活問題とばかりに戦争継続を声高に叫ぶ欧州諸国(全部ではないね、まあ取りあえずはイギリスだけかな)の姿を醜いと感じるのは筆者だけだろうか。ゼレンスキーばかりでなく、ネタニアフもほぼ同時並行で手懐けてしまいそうなトランプを徹底攻撃したいのは、ほかには、はて?だれが…おそらく世界の政治舞台を見ていればわかるでしょう。
 ところで、2023年10月3日に当ブログで日英円滑化協定について公開している。その主要部分は次のとおりであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2023年1月11日、朝日新聞デジタルは『「過去1世紀で最も重要」日英首相、円滑化協定に署名 安保協力強化』とする記事を配信した。
『……
岸田文雄首相は11日午後(日本時間同日夜)、ロンドンでスナク英首相と会談した。自衛隊と英軍が共同訓練などで相互に訪問する際の法的地位などを定める「円滑化協定」に署名。両政府は安全保障上の協力を強化し、中国や北朝鮮に対する抑止力を高めたい考えだ。
 日本が円滑化協定を結ぶのは昨年1月の豪州に続いて2カ国目。協定によって、自衛隊と英軍が相手国で共同訓練などを行う際、船舶や航空機、隊員の出入国手続きが簡略化される。協定には事件や事故が起きた際の対応なども定められている。
 日本は日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」と、米英豪の安全保障協力「AUKUS」の連携を重視している。今後、協定によって、大規模な共同訓練がより行いやすくなる。
 日英は近年、安保協力関係を深めている。2017年に燃料などの物資を融通し合う「物品役務相互提供協定(ACSA)」を締結。21年には英海軍の最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群が、米海軍横須賀基地(神奈川県)に寄港し、海上自衛隊や米海軍と大規模訓練を実施し、昨年11月には群馬県などで英陸軍と陸上自衛隊が共同訓練を行った。昨年12月にはイタリアとの3カ国で、航空自衛隊の次期戦闘機の共同開発でも合意した。
 岸田政権は昨年12月に改定した安保関連3文書に、「同盟国・同志国との連携」を盛り込んだ。首相は英国訪問の前に訪れたフランスとは、今年前半に外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)の開催をめざすことで一致し、イタリアとも外務・防衛当局間の協議を新設することを決めた。英国との円滑化協定は、東シナ海や南シナ海で海洋進出を強める中国に対抗するため、英国にも関与を強めてもらう狙いがある。
 英首相官邸も11日、円滑化協定を結ぶと発表し、「英軍の日本への配備を可能にする、過去1世紀以上で日英間の最も重要な防衛協定」と意義を強調した。スナク氏は声明で、世界情勢の見通しや脅威や課題の理解などを両国が共有していると指摘した上で、「競争が激化する世界で民主主義社会が協力することが、これまで以上に重要になっている」と述べた。
……』
 日本政府が締結した協定は「日英円滑化協定(Japan-UK Reciprocal Access Agreement)」という名称である。実は同様の協定である「日米地位協定」があまりにもひどいものであることから、その影響を避けるため「円滑化」と表現を緩めた軍事協定なのである。
 名称はともあれ条文を検討してみる。最も注目すべき項目は「日英円滑化協定」第四条である。
『……
第四条
3 この協定は、千九百五十四年二月十九日に東京で署名された日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定に基づいて国際連合の軍隊として行動する間の連合王国の軍隊が実施するいかなる活動についても適用しない
……』
とある。この条項に中にある「国際連合の軍隊の地位に関する協定」とは1953(昭和28)年に朝鮮派遣国軍との間に締結した「日本国における国連連合の軍隊の地位に関する協定(国連軍地位協定)」である。これまで幾度となく取り挙げてきたあの「朝鮮派遣国連軍」のことなのである。つまり、日本とイギリスが締結した「日英円滑化協定」は「国連軍地位協定」が有効な間は適用しないというものである。では「日英円滑化協定」はいつから効力を発するのであろうか。その答えは「国連軍地位協定」(第二十四条、第二十五条)のなかにある。そのベースとなっているサンフランシスコ平和条約第六条には次のように明記されている。
『……
第六条
連合国のすべての占領軍は,この条約の効力発生の後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にもその後九十日以内に、日本国から撤退しなければならない。但し、この規定は、一又は二以上の連合国を一方とし、日本国を他方として双方の間に締結された若しくは締結される二国間若しくは多数国閻の協定に基く、叉はその結果としての外国軍隊の日本国の領域における駐とん又は駐留を妨げるものではない。
……』
 また、国連軍地位協定には次のように規定されている。
第二十四条
 すべての国際連合の軍隊は,すべての国際連合の軍隊が朝鮮から撤退していなければならない日の後九十日以内に日本国から撤退しなければならない。この協定の当事者は,すべての国際連合の軍隊の日本国からの撤退期限として前記の期日前のいずれかの日を合意することができる。
第二十五条
 この協定及びその合意された改正は,すべての国際連合の軍隊が第二十四条の規定に従つて日本国から撤退しなければならない期日に終了する。すべての国際連合の軍隊がその期日前に日本国から撤退した場合には,この規定及びその合意された改正は,撤退が完了した日に終了する。』

 したがって「日英円滑化協定」が実際に動き出すのは、朝鮮戦争が終戦となった時なのである。
日本の安全保障政策は、朝鮮戦争を継続することが前提で組み立てられていた。そのため朝鮮戦争が終戦となると駐留アメリカ軍の根拠が失われるとともに「行政協定」が有名無実のものとなってしまうのだ。それに伴い「有志国」、つまり、「国連軍地位協定」を締結した12か国(日,オーストラリア,カナダ,フランス,イタリア,ニュージーランド,フィリピン,南アフリカ,タイ,トルコ,イギリス,アメリカ)は解体することになる。
自由民主党は、近い将来、朝鮮戦争が終戦となり朝鮮派遣国連軍の撤退が始まることを予想していて「日英円滑化協定」を締結した。そして、朝鮮戦争終了と同時に、イギリス軍の武官文官が日本に進駐してそれまでアメリカが日本統治に利用していた日米合同委員会の機能をそのままイギリスに引き渡すために締結した協定なのである。つまり、日本としては宗主国が変わるだけで、自由民主党はこれまで通り日本の主権を売渡すことで政権を独占し、防衛外交利権を維持することが許されるのだ。
つまり「日英円滑化協定」とは自由民主党が政権を維持するためだけに締結されたもので、日本の主権が回復するわけではない。これまで通り日本の主権(自衛隊指揮権、航空管制権、電波権)をアメリカだけではなく、イギリスにも売渡すことに合意しているのだ。
唯一の救いは「日英円滑化協定」第二十九条の次の条項である。
『……
第二十九条
3(a) 各締約国は、他方の締約国に対して六箇月前の書面による通告を行うことにより、いつでもこの協定を終了させることができる……』
で、六か月前に書面により通告することで協定が終了できることであろう。
自民党政権を下野させて、新たな政権が破棄を通告すればよいということになる。』(寄稿:近藤雄三)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 どこの国の誰とは言わないけれど、狡猾の限りを尽くす好戦派諸氏のことだから、日英円滑化協定を100年以上前の日英同盟よろしく日本を適当にコマのごとく扱えると思っていらっしゃるかもしれないが…果たしてわが国首脳はどう対応するのか、どう対応できるのか…ちょいと見ものではある。(文責:吉田)
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もしトラ⇒確トラ⇒新大統領へ(2024年2月15日、7月19に続き3度目の再録)

2024-11-08 | 小日向白朗学会 情報
 本年2月15日の寄稿文なので現状認識に数か月のずれはあるけれど、改めて公開する。
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 目次
1.「もしトラ」で懸念されること
2.朝鮮戦争と日本政府の安全保障政策
3.消費税と「防衛三文書」との関係
4.まとめ

1.「もしトラ」で懸念されること
 2024年2月現在、アメリカ大統領選挙の行方が、俄然、世界中の注目を集めている。無論、その中心はアメリカ共和党候補としてトランプ大統領の再選が現実味を帯びてきたからである。この現象を「もしもトランプ大統領が再選された場合に起こりうる諸政策の変更」を「もしトラ」という。では「もしトラ」の何が問題なのか。
 2024年01月18日、PICTETが「トランプ氏の再選リスク 「もしトラ」の現実解は?」と題するレポートを公開している。ピクテは、同社沿革によれば「スイス・ジュネーブに1805年に設立されました。ナポレオン戦争時に貴族たちが資産を守るために頼ったのが、ピクテをはじめとするプライベート・バンク。以降、200年の年月を超えて、どんな時も、欧州の王侯貴族をはじめとした顧客の資産を保全し継承することで、信頼を築いてきました。世界の富裕層に向けて絶えず高度化してきた資産運用サービスを、日本では一人でも多くの投資家にお伝えし、豊かな人生の実現に役立てていただくこと。それが、私たちの使命です」という会社である。
『……
1月15日の米アイオワ州共和党党員集会でトランプ前大統領が圧勝した。アイオワ州の党員集会は大統領選の共和党候補者を決める初戦であり、今年11月5日の米大統領選までまだ約10カ月もあるが、米国株式市場では早くもトランプ関連銘柄を物色する動きが強まっている。もしトランプ氏が再選された場合、米国政治はどのように変貌するのか?当レポートでは「もしトラ」の現実解を探る。
米アイオワ州の共和党党員集会でトランプ前大統領が勝利
今年11月の米大統領選挙における共和党候補者を決める初戦となったアイオワ州の党員集会で、トランプ前大統領が圧倒的な勝利を収めた。現地1月15日夜に行われたアイオワ州党員集会の結果は、トランプ氏が51.0%の得票率でトップとなり、2位のデサンティス・フロリダ州知事(21.2%)と3位のヘイリー元国連大使(19.1%)を大きく引き離した(図表1)。事前にある程度予想されていたとは言え、改めてトランプ氏の根強い人気を印象付けた格好だ。
共和党候補者の指名争いの道のりは長い。今年7月に開催される共和党全国大会までに、2,429人のうち少なくとも1,215人の代議員を確保する必要がある。代議員は州ごとに割り当てられており、アイオワ州では40人、1月23日に予備選挙が行われるニューハンプシャー州は22人だ。最も多くの予備選挙/党員集会が同時に実施されるのが3月5日のスーパーチューズデーで、16の州/米自治領で合計874人の代議員がこの日だけで割り当てられる(図表3)。獲得できる代議員数は、1月15日から3月5日までの累積でも過半数には届かないが、この日で指名争いの流れが概ね決まると言われている。
一方、民主党候補者はバイデン現大統領が有力視されている。指名者候補の戦いは最後まで分からないが、大統領選挙は今のところバイデン現大統領とトランプ前大統領の戦いになることがコンセンサスとなっている。政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」が集計した各種世論調査によれば、全米支持率は1月17日時点でトランプ氏が45.9%、バイデン氏が44.6%とトランプ氏がややリードしている(図表2)。「もしトラ(もしトランプ氏が再選)」となった場合、米国政治はどう変わるのだろうか?
外交・貿易・気候変動政策の変貌
外交面ではNATO(北大西洋条約機構)離脱やウクライナ支援の打ち切りが一部で警戒されている。だが、米議会が昨年12月に可決した2024年度のNDAA(国防権限法)には、大統領がNATO離脱を決める際の条件として議会との事前協議を義務付ける条項が盛り込まれており、仮にトランプ氏が再選されたとしてもNATO離脱は容易ではない。一方、ウクライナ支援に関してはすでに予算が枯渇した状態だ。トランプ氏の再選可否に関わらず追加支援の目途は立っていないことから、地政学リスクが今後ますます高まりかねない点には注意が必要だろう。
貿易面では保護主義的な措置がいっそう強化される可能性がある。トランプ氏は米国の輸入製品に原則10%の関税をかける構えを示す。現在の平均関税率は3%強とも言われており、実現すれば物価や景気への悪影響は避けられないだろう。また、中国に対しては最恵国待遇に相当する「PNTR(恒久的正常貿易関係)」を剥奪する可能性もあり、その場合も輸入関税率の引き上げにつながる。
気候変動対策にも先行き不透明感が漂う。トランプ氏はパリ協定から再離脱する可能性があるほか、化石燃料への投資を増やし、電気自動車や再生可能エネルギーへの転換を後押しする規制や補助金を撤廃するとも言われている。バイデン大統領が2022年8月に成立させた「IRA(インフレ抑制法)」に関しては、テキサス州やワイオミング州などの共和党支持者が比較的多い州でもその恩恵が享受されているため、完全撤廃は想定しづらい。しかし、部分的な縮小は視野に入れる必要があるだろう。
トランプ関連銘柄には早くも物色の動きが強まる
アイオワ州の共和党党員集会の結果が明らかとなった1月16日のS&P500指数は、市場の大幅な利下げ観測をウォラーFRB理事が牽制(米10年国債利回りは上昇)したこと等から軟調に推移した。市場全体では今回のトランプ氏勝利はさほど材料視されていないように見えるが、トランプ関連銘柄には早くも物色の動きが強まっている。
1月16日は、トランプ・メディアとの合併後に同社上場を目指すSPAC(特別買収目的会社)のデジタル・ワールド・アクイジション(DWAC)や、20年の大統領選でトランプ陣営のキャンペーンを手掛けたソフトウェア会社のファンウェア(PHUN)、保守系動画プラットフォームのランブル(RUM)などのトランプ関連銘柄が急騰した一方、ファースト・ソーラー(FSLR)やサンノヴァ・エナジー・インターナショナル(NOVA)、サンラン(RUN)といった太陽光発電関連銘柄が急落した(図表4)。
アイオワ州の党員集会で大差をつけて勝利したトランプ氏の躍進は、株式市場において「もしトラ」を意識させるきっかけになったと考えられる。
……』
このレポートでは、トランプ元大統領が2024年11月に行われるアメリカ大統領選挙で再選された場合に如何なる変化が起きるのかを予想したものである。
第一に、NATOから離脱
第二が、ウクライナ支援の廃止
第三が、保護貿易
第四が、気候変動政策の廃止
である。
上記レポートは、G7各国で一般的に云われていることである。ところで日本では、これらアメリカの政治変化が日本に及ぼす影響に付いて口にすることを憚られる雰囲気があり積極的には行われていない。実に残念なことである。日本のマスコミは「トランプは何をするかわからない危険な人物である」というイメージを植え付けることに成功していることから、トランプ大統領が再選された場合に、日本の変化を正確に分析することはできていない。一般的に言って宗主国アメリカが激変すれば、属国日本に大激震が起きない訳はない。トランプ大統領が前回の政権時に、日本政府が標榜する安全保障政策を根底から揺さぶる事件が起きている。まずは、この件から始める。

2.朝鮮戦争と日本の安全保障政策
これまでトランプ大統領と朝鮮戦争の問題については下記のスレッドでまとめてきたので、その要点のみを纏めてみる。
日本政府は、サン・フランシスコ講和条約を締結したその日に、アメリカと旧日米安全保障条約(日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約)を締結した。その中で日本は、自衛隊の指揮権をアメリカに移譲することを日米行政協定(後に日米地位協定に改定)で認めた。それと共にサン・フランシスコ平和条約の効力発生後も朝鮮派遣国連軍が日本国に滞在することを、しぶしぶではなく、嬉々として認めた。これは後に国連軍地位協定(日本国における国際連合の軍隊に関する地位協定)となっている。
したがって日本は二つの地位協定が存在する。この二つの協定を順守し継続させるためアメリカが準備したのが自由民主党であった。アメリカが自由民主党に求めたことは二つの地位協定を順守し継続することと、折角に取得した自衛隊の指揮権ではあったが憲法があって海外派兵ができないため改正して自衛隊を海外派兵できるようにすることであった。したがって憲法改正とは、自衛隊をアメリカ軍の指揮下で海外展開できるようにすることを求めたもので、国民の求めたものではない。
それから60有余年たったある日、突然、朝鮮戦争が終戦となる事態が発生した。
それが、2018年6月12日にシンガポールでアメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長及び国務委員会委員長による史上初の首脳会談が行われたことであった。その会談後に出された共同声明は次のとおりである。
『……
共同声明
アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプと朝鮮民主主義人民共和国の金正恩国務委員長は、史上初の首脳会談を2018年6月12日、シンガポールで開催した。
トランプ大統領と金正恩委員長は新たな米朝関係や朝鮮半島での恒久的で安定的な平和体制を構築するため、包括的かつ誠実な意見交換を行った。トランプ大統領は朝鮮民主主義人民共和国に安全の保証を与えると約束し、金正恩委員長は朝鮮半島の完全な非核化に向けた断固とした揺るぎない決意を確認した。
新たな米朝関係の構築は朝鮮半島と世界の平和と繁栄に寄与すると信じると共に、相互の信頼醸成によって朝鮮半島の非核化を促進すると認識し、トランプ大統領と金正恩委員長は次のように宣言する。
(1)アメリカ合衆国と朝鮮民主主義人民共和国は、平和と繁栄を求める両国国民の希望に基づき、新たな米朝関係の構築に取り組む。
  (2)アメリカ合衆国と朝鮮民主主義人民共和国は、朝鮮半島での恒久的で安定的な平和体制の構築に向け、協力する。
  (3)2018年4月27日の「板門店宣言」を再確認し、朝鮮民主主義人民共和国は朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む。
  (4)アメリカ合衆国と朝鮮民主主義人民共和国は朝鮮戦争の捕虜・行方不明兵の遺骨回収、既に身元が判明している遺体の帰還に取り組む。
トランプ大統領と金正恩委員長は「史上初の米朝首脳会談が、両国の数十年にわたる緊張と敵対を乗り越える新たな未来を築く重要な出来事であった」と認識し、この共同声明の内容を「完全かつ迅速に履行すること」を約束した。
アメリカ合衆国と朝鮮民主主義人民共和国は米朝首脳会談の成果を履行するため、「マイク・ポンペオ国務長官と朝鮮民主主義人民共和国の高官の交渉を続けて可能な限り迅速に履行する」と約束した。
トランプ大統領と金正恩委員長は「新たな米朝関係の発展と、朝鮮半島と世界の平和、繁栄、安全のために協力すること」を約束した。
……』
 この時、アメリカと北朝鮮は共同声明で朝鮮戦争を終結させることで合意したのである。その後も両国による接触が続いて2019年2月27日、ベトナムの首都ハノイでドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による2回の会談が行われ、朝鮮半島の核兵器廃絶に向けた進展について協議したもようであった。さらに、2019年6月30日、ドナルド・トランプ米大統領は、韓国と北朝鮮を隔てる軍事境界線を挟み、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と握手した後、現職の米大統領として初めて、境界線を歩いて越え、北朝鮮側に入った。これに続き、金氏がトランプ氏と並んで境界線を越え南側に入った。そして、軍事境界線を挟んでトランプ氏が「また会えて嬉しいです」と声をかけると、金委員長はトランプ氏を招き入れるような仕草を見せ、これに応えてトランプ氏が境界線をまたいで北朝鮮側に入った。両首脳は10歩ほど進み、北朝鮮側で再び握手している。
 米朝が朝鮮戦争終結に向けて動き出した時、それを苦々しく思う自由民主党政権と外務省があった。
 それは朝鮮戦争が終結すると「日米同盟」を日本の安全保障の基盤である位置付けてきた自由民主党と外務省の根拠が失われてしまうとともに「外交と安全保障」利権が消滅するからであった。
  朝鮮戦争が終結すると、どのようなことが起きるのかというと、これまで日本政府は朝鮮戦争を継続するためアメリカおよび参戦各国と「日本国における国連連合の軍隊の地位に関する協定」(国連軍地位協定)を締結しアメリカ軍などが国内に駐留できる根拠を提供してきた。ところが、その協定には協定期限の定めはないものの、その代わりとして朝鮮戦争が終結した場合の対処方法が取り決められていた。それが、第六条である。
『   日本国との平和条約
昭和二六年九月八日サン・フランシスコ市で著名
昭和二六年一一月一八日批 准
昭和二六年一一月二八日批准書寄託
昭和二七年四月二八日効力発生
昭和二七年四月二八日公布(条約第五号)
……
第六条
  1. 連合国のすべての占領軍は,この条約の効力発生の後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にもその後九十日以内に、日本国から撤退しなければならない。但し、この規定は、一又は二以上の連合国を一方とし、日本国を他方として双方の間に締結された若しくは締結される二国間若しくは多数国閻の協定に基く、叉はその結果としての外国軍隊の日本国の領域における駐とん又は駐留を妨げるものではない。
……』
 つまり、朝鮮戦争が終戦となると国連軍は90日以内に、日本国から撤退しなければならないとあってアメリカ軍が日本に駐留する根拠がなくなるのだ。これまで自由民主党は「アメリカの核の傘」と「駐留米軍」が日本の安全保障の礎としてきたが、その駐留米軍は日本を撤退しなければならない。そしてアメリカが、朝鮮戦争継続するため国連軍を日本に駐留させるための要件を定めた「日米地位協定」は駐留アメリカ軍が朝鮮半島と日本から撤収するために、この協定は有名無実となる。
 したがって自由民主党は、これまでアメリカ軍の威信をかりて自国の安全保障政策の一環と主張して、本来は不要な基地を建設するなどして莫大な利益を生んできた防衛利権が消滅することになる。
アメリカ軍が日本から撤収するとなると思い浮かぶのは、アメリカ海兵隊が使用するということで建設中の辺野古基地は使用するアメリカ海兵隊自体が沖縄から撤収するということだ。したがってアメリカ海兵隊が使用するという理由で建設を強行してきた辺野古基地は不要になるのだ。
一事が万事、日本政府と外務省が外交と安全保障という聖域を私物化してきたことが、朝鮮戦争終戦とともに国民の目の前にその嘘をさらけ出すことになる。
 朝鮮戦争が終戦となった後も、長年にわたり国民をだましてきた自由民主党政権が、その後も継続して政権を維持できると考えるのは単なる妄想なのである。
 ただし、国連軍地位協定には、日本政府が懇願すればその限りではないとある。しかし、これは交渉事であってアメリカが拒否する場合もありうる。この点に付いてトランプ大統領は駐留を継続するならば駐留経費を増額するように求めていた。これはアメリカとNATOとの関係と同じでNATO加盟国に駐留経費の増額をもとめていたことから日本の場合も同様となる。通常の国ならば、長年にわたり国民を疲弊させてきた駐留軍が自ら進んで撤退するというのに「ぜひとも駐留継続をお願いします」と懇願する馬鹿な政権はあり得ない。そこには国民の意思とは全く異質の利権があって、その利権を守るため国民を犠牲にしても構わないという腐った政権があるからである。それが自由民主党政権なのである。
 既に、2024年2月現在、トランプ大統領は再選したばあいにNATOとの関係を見直すことを表明している。したがって朝鮮戦争終戦は、トランプ大統領が再選されると同時に再燃する問題なのである。そして、今度こそ朝鮮戦争は終戦となる。
 ただし「もしトラ」の場合ではあるが。
 ところで、自由民主党政権は「日米同盟」を根拠に「日米地位協定」と「国連軍地位協定」を締結して安全保障政策を組み立てきたが、米朝が朝鮮戦争を終結させることに合意したことで終戦とともに二つの協定は有名無実化もしくは破棄されることが明白となった。すなわち、「日米同盟」を具体化する「日米地位協定」と「国連軍地位協定」を遵守するとともに、更に憲法改正をすることで自衛隊海外派兵を可能とするということが使命である自由民主党、その自由民主党は政権党として存続する意味がなくなるとともに、これまで築き上げてきた「外交及び安全保障」にともなう特殊利権が消滅してしまうことにもなる。例を挙げるなら、アメリカ海兵隊が使用するためという理由で辺野古沖合を埋め立てて基地建設を行ってきたが、アメリカ海兵隊が撤退した後も、延々と莫大な費用を掛けて埋め立てを続ける馬鹿はいない。終戦ならば、即刻中止となる。このことに恐怖を覚えた自由民主党と外務省は、直ちに、対応策を講じることにした。
 それが「日英円滑化協定」である。
 日本政府がイギリスと締結した協定は「日英円滑化協定(Japan-UK Reciprocal Access Agreement)」という名称である。この協定で最も注目すべき項目は「日英円滑化協定」第四条である。
『……
第四条
3 この協定は、千九百五十四年二月十九日に東京で署名された日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定に基づいて国際連合の軍隊として行動する間の連合王国の軍隊が実施するいかなる活動についても適用しない
……』
とある。この条項に中にある「国際連合の軍隊の地位に関する協定」とは1953(昭和28)年に朝鮮派遣国軍との間に締結した「日本国における国連連合の軍隊の地位に関する協定(国連軍地位協定)」なのである。そして、日本とイギリスが締結した「日英円滑化協定」は「国連軍地位協定」が有効な間は適用しないというものである。つまり朝鮮戦争が継続するうちは「日英円滑化協定」は機能しない。
 そうなのである。「日英円滑化協定」は、朝鮮戦争が終戦となると機能するように設計されたもので、アメリカ軍が撤収したら今度はイギリス軍が日本の基地を使用することを認めるというものである。そして、イギリス軍が日本国内に駐留することから「日米地位協定」もそのまま存続させることができる。つまり、自由民主党と外務省は、もしも、朝鮮戦争終戦でアメリカが撤収しても、その代わりにイギリスを駐留させて莫大な権益を守ろうとしているのだ。つまり「日英円滑化協定」は自由民主党と外務省による特殊利権のもち逃げということになる。これれは、トランプ大統領が政権を握っているときの話である。
 ならば「もしトラ」となったらどうなるのか。
 自由民主党及び外務省、経済産業省、経済産業省(アメリカ製兵器の輸入は同省が管理している)など「外交及び安全保障」利権に群がって甘い汁を吸い続けてきた省庁にとって莫大な利権を失う最悪なシナリオということになる。そのため自由民主党及び外務省が最後の大博打に出たのがメッキの剥げた「日米同盟」を基盤とした「防衛三文書」を根拠とした「外交及び安全保障」政策なのである。
 つまり「もしトラ」まえに、もう一度、荒稼ぎをしようと云う魂胆のである。
そもそも、日本政府は、日本の安全保障の礎とまでしてきた「日米同盟」の根幹をなす「アメリカの核の傘」と「駐留米軍」であるが、「アメリカの核の傘」については米中が「一つの中国」最策に回帰したことで台湾有事にアメリカは介入しないとしたことから「核の傘を」使用することはなくなっており、「駐留米軍」は朝鮮終戦で完全撤退する。それにも関わらず「外交及び安全保障」利権の中心に座る麻生太郎自由民主党副総裁が、台湾やアメリカにわざわざ出かけて「日米同盟」の化けの皮がはがれる前に、その重要性を説いて回っているのだ。
 自分たちの利権確保以外の何物でもない動きなのである。
以上が「もしトラ」が日本の安全保障に及ぼす影響である。
【参考】
・トランプ氏と朝鮮戦争終戦問題
・バイデン政権と朝鮮戦争の関係
・朝鮮戦争が終戦となった場合の日本政府の対応

3.消費税と「防衛三文書」との関係
現在、日本の国会で問題となっている消費税についてトランプ大統領は関税障壁であると痛烈に日本政府を非難していた。したがってトランプ大統領が復活した場合には、日米経済問題として「いの一番」に顕在化することである。
2018年12月07日、週プレNEWSに岩本沙弓氏『最大の障壁は国内の反対勢力ではなくトランプ政権? アメリカが日本の「消費税引き上げ」を許さない理由』とする消費税について興味深い記事がある。
『……
■消費増税に反対する「巨大な外圧」の存在
来年10月に8%から10%への引き上げが予定されている消費税。「深刻な財政難のなか、少子高齢化に伴い増え続ける社会保障費の財源を確保するには消費増税しかない」というのが、財務省や政府の一貫した主張だ。一方、立憲民主党など野党の一部は「日本経済がいまだにデフレ脱却を果たせていない状態で消費税を引き上げれば経済に深刻な悪影響を与えかねない」と、増税に反対の姿勢を見せている。ところが消費税の引き上げにおいて、こうした国内での議論とは別に日本が無視することのできない「巨大な外圧」があるという。それは消費税という制度そのものに否定的で、消費税を「非関税障壁」と見なすアメリカの存在だ。
「来年以降、『アメリカ・ファースト』(アメリカ第一主義)を掲げるトランプ政権との貿易交渉が本格的にスタートするこのタイミングで、日本が消費税10%引き上げへ向かえば、アメリカの強い反発を招くことは避けられません」
……
アメリカが消費税導入に否定的だとしても、彼らが他国の税制に「不公正だ」「非関税障壁だ」と不満を訴えているのはなぜなのか?
その最大の理由は、日本も含めた消費税導入国が自国の輸出企業に対して行なっている「輸出還付制度」の存在だ。アメリカはこれを「自由競争の原則を歪(ゆが)める制度」だとして問題視しているという。
……
仕入れから製造までを国内で行なう企業がその製品を海外に輸出する場合、消費税は実際に消費が発生する輸出相手国の税制に沿って課されることになります。
仕入れの段階でも日本の消費税を払っているので、このままでは輸出相手国と国内とで2度消費税が課されることになる。そうした『二重課税』が起きないよう、輸出製品については仕入れなどにかかる消費税が国から還付されることになっています。これが『輸出還付制度』です」
……
ではアメリカにとって日本の消費税引き上げはどんな意味を持つのだろう?
「もちろん、こうしたアメリカ側の主張については、さまざまな異論もあると思います。しかし、あくまでアメリカ側の立場で見れば、日本の消費税の8%から10%への引き上げは、『日本の輸出企業へのリベートの引き上げ』と『日本向けアメリカ輸出企業への実質的な課税強化』ととらえることになる。当然、アメリカが強く反発するのは避けられないでしょう。
アメリカは日本だけ目の敵にしているわけではありません。欧州の付加価値税や日本の消費税のような間接税については還付制度を認め、直接税では認めないWTO(世界貿易機関)のルール自体を変えるべきだと主張しているのです」
■自工会が増税支持から懸念表明に転じた理由
実は、そうしたアメリカ側の空気に最も敏感に反応しているのが、日本の自動車メーカーによる業界団体で、トヨタ社長の豊田章男氏が会長を務める「日本自動車工業会」(自工会)だ。
これまで基本的に政府の「消費税引き上げ」という方針を支持してきた自工会が、今年9月20日に発表した「平成31年度税制改正に関する要望書」では増税反対という明確な表現は避けながらも、消費税10%への引き上げについて国内市場縮小への懸念を強く訴えている。
岩本氏は、こうした自工会の消費税に対する姿勢の変化に、彼らの日米関係に対する「シビアな現状認識」が表れているとみている。
……
そんな状況で日本が消費税の引き上げを強行すれば、日米交渉のテーブルではアメリカ側が態度をさらに硬化させ、場合によっては自動車関税25%発動という、自工会にとって最悪のシナリオを招きかねません」
なるほど。アメリカはどこまで本気なのか?
「今年9月25日、国連総会出席のため訪米した安倍首相に同行した茂木敏充経済再生担当大臣がUSTR(アメリカ通商代表部)のライトハイザー代表と会談しましたが、このライトハイザー氏は消費税の『輸出還付制度』を一貫して不当なリベートだと訴え続けてきた人物として知られています。
安倍首相の訪米直前のタイミングで、自工会があえて『消費増税への懸念』を表明したのも、アメリカ側に配慮した自工会のメッセージではないかとみています。
……』
 日本政府は、輸出企業に徴収した消費税を『輸出還付金』として交付している。これをトランプ政権は、日本政府による輸出企業にたいする『実質的なリベート』だと強い不満を訴えていて自動車関税25%を検討していた。これに対して日本政府は、現在は裏金問題と派閥解消で渦中にある茂木敏充元経済再生担当大臣をUSTR(アメリカ通商代表部)のライトハイザー代表と会談と交渉にあたらせていた。
 したがって「もしトラ」となった場合にアメリカは日本に消費税は関税障壁として『輸出還付制度』を是正して『実質的なリベート』の廃止を求めてくることは確実なのだ。
 この点に関して茂木自由民主党幹事長は、充分に理解している。それにも拘らず茂木幹事長は、使い物にならに安全保障政策である「防衛三文書」を盾に「外交・安全保障」利権の拡大を狙って自民党中枢を掌握して国会を強行突破する覚悟のようである。
 したがって「もしトラ」が実現した場合に日本の税制は大ダメージを被るのは必須である。
 ところで、上記論文で気になる箇所がある。それは、消費税問題で多額の還付金を受け取っているとやり玉にあがっている自動車産業会(自工会)が、消費税を8%から10%に改定することに反対していたことである。つまり自動車産業会(自工会)は「還付金」を受取り続けることはアメリカで事業を継続することが難しくなると考えていた。現在の日本は、大多数の国民にとって賃金が伸びないだけではなく物価上昇に苦しんでいるなかで消費税を廃止もしくは縮小することがマクロ経済学から考えて最も理にかなった経済政策である。
ところが日本政府は、防衛増税と消費税を19%まで引きあげることに注力している。やはり、日本政府が理にかなった経済政策をおこなわない理由は新しい安全保障政策「防衛三文書」にその鍵がある。
 日本政府は、日本製武器輸を海外に積極的に輸出することを「防衛三文書」で決めている。しかし、日本製兵器は、性能は高いがコストも高いとう世界市場では競争力のないものとなっている。加えて、実際に輸出するとなると設定価格よりさらに廉価となることはさけられない。これでは兵器産業は安定した利益を産み出すような経営は難しい。ところが、日本には、輸出した場合の優遇政策「輸出還付制度」があって、兵器を輸出しても安定した利益を出すことが可能な仕組みが出来上がっている。
 この制度を有効に利用しようとしているのが自由民主党中枢を握り「外交・安全保障」特権を維持拡大しようとする「茂木派と麻生派」という戦争屋政策集団と、それに賛同する国民民主党、日本維新の会、立憲民主党執行部、教育無償化を実現する会、経団連、連合なのである。
 つまり「防衛三文書」による「日本の外交と防衛を行おうとする」政治集団と「消費税をさらに上げようとする」政治集団」とは同一なのである。繰り返しになるが自工会は「輸出還付制度」を利用して利益を得ることには消極的ですらあった。つまり自工会傘下の企業が受け取る「輸出還付金」を隠れみのとして、由民主党国防部会(部会長・國場幸之助衆院議員(岸田派))及び安全保障調査会(会長・小野寺五典衆院議員(岸田派))と「日本防衛装備工業会」(Japan Association of Defense Industry 略称JADI))は、連携して日本の兵器輸出ルールを定めた「防衛装備移転3原則」を破棄して兵器輸出を促進しようと積極的な活動を続けているのだ。その結果、多くの「輸出還付金」を受け取るのが「日本防衛装備工業会」の協賛企業なのである。したがって自由民主党の「外交安全保障」政策を進める限り、消費税を値上することはあっても、値下げしたり、廃止することは「兵器輸出」企業に対する「輸出還付金」が減少もしくは廃止となることであり、「兵器製造」企業としては事業継続が難しくなるため決して容認できることではないのだ。
 尚、自由民主党国防部会と安全保障調査会は「アメリカ国家安全保障戦略」を金科玉条とする部会であって「自衛隊の指揮権をアメリカに売り渡す」ことを積極的に容認する不届きな議員らなのである。そして、國場幸之助衆院議員は統一教会の韓鶴子を「マザームーン」と呼ぶほどであるとともに「日韓海底トンネル」にもかかわる典型的な統一教会系国会議員なのである。そのうえ國場幸之助衆院議員は、沖縄の「國場組」を基盤として防衛利権をふんだんに享受する根っからの防衛利権屋なのである。その様な國場議員が座長を務める自由民主党部会が取りまとめた日本の安全保障政策が、日本国民のためであるわけはない。そのうえ國場衆院議員が所属していた岸田派であるが、岸田文雄首相が2022年9月に自由民主党と統一教会は「絶縁」することを宣言しているが自派閥の国会議員は統一教会推薦の国会議員が要職を占めていることから「口先」だけの実に軽い内閣総理大臣であるだけではなく国を亡ぼす極めて危険な人物である。
 ところが、これら自由民主党が進める利権まみれの安全保障政策を賛美し愛国的であるとする同党取り巻きの文化人がいる。彼らの中には、最近、更に扇動的な「国のために死ねるか」などと言い出す者まで出現している。売国奴が自己利益のために愛国心を口にする典型的なプロパガンダであって、あまりにも馬鹿らしく相手にする気もならない。
【参考】

4.まとめ
 「もしトラ」となった場合に、朝鮮戦争は終戦となり、併せて、「日米同盟」を基軸に安全保政策を進めた自由民主党と外務省はその責任を追及されることになる。
 ついで現代日本の税制が「六公四民」という極めて苛烈な税制度となっていて日本の発展の阻害要因となっている。その中でも悪名の高い「消費税」は「実質的なリベート」であるとアメリカ政府から追及を受けることになる。
以上により、現在の日本が国として抱える重大課題である「外交及び安全保障」問題と消費税問題は「もしトラ」で解決する可能性が高い。
したがって「防衛三文書」で規定した仮想敵国は消滅して日本近辺に日本の安全保障を脅かす国はなくなって打撃力は不要となる。さらにアメリカの要請で開始した憲法改定もその目的である海外派兵自体の必要性がなくなることになる。
 日本の論壇では「もしトラ」で憲法改定がやりやすくなるという意見もあるが、馬鹿も休み休みにしたほうが良い。日本周辺に緊張がないならば、何故に海外派兵までする必要があるのか、…もちろん全く無い。あるのは独自の核プラットフォームがある数隻の潜水艦だけであり、その耐用年数が過ぎているのに改修すらできずにオーストラリアに押し付けるだけしかできない落ちぶれたイギリス、そんなイギリスと「日英円滑化協定」を締結しても、日本にとって一円も得なことはないのだ。せいぜいイギリスの番犬に悪用されるだけなのだ。そしてもう一度日露戦争をやらされることになる。このくらいは少し歴史を勉強すれば常識である。その常識が理解できない自由民主党政権は、今後も生き延びてはいけない政党なのである。
 そして日本を疲弊に追い込んだ外交政策(防衛三文書)と特殊利権(ODA及び防衛費)及び税金(防衛費増税および消費税)は、自由民主党と外務省、経済産業省、防衛省、財務省の錬金術であって国家的な犯罪であることを充分に理解しておくべきなのである。
 これこそが日本国民を苦しめる諸悪の根源なのである。
したがって自由民主党を解体すること、外務省を憲法に則り運営できる組織に再際させること、自由民主党が独占してきた「外交及び防衛利権」に群がった官僚及び野党そして経団連と連合は国民により厳しく糾弾されるべきなのである。
(寄稿:近藤雄三)
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トランプ氏がアメリカの大統領に~祝~

2024-11-06 | 小日向白朗学会 情報
 “確トラ”を表明していた当ブログにとっては、当然のことではあるけれども、まず祝福したいと思う。世界のリーダーたちは概ね好感を持って受け止めるか、ほっとしていらっしゃるか…。まずはわが国ニッポンであるけれど、石破さんの力量発揮が期待される。
 石破=トランプ路線で日米同盟の見直しが実施されることは必至であろう。外務省は「51(昭和26)年9月8日、わが国はサンフランシスコにおいて平和条約に調印し、大戦後の宿願となっていた独立を回復した。さらに、同日、吉田総理(当時)は米国との間で「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約」(旧安保条約)に署名し、米国との同盟関係を確立した(52(同27)年4月発効)。 」と記している。そう吉田総理の下でスタートした安保条約、それ自体はあまりたいしたことではないが(条約文を検索しお読みいただきたい)、同時にスタートしている行政協定が国民を欺く売国協定であったわけだ。のちに地位協定と名称を変更しているが、要は主権(国防権、電波権、航空管制権)を担保に、つまり売渡して、戦後復興資金を手にしたわが国は急成長してきた、というわけだ。同借財は高金利を付けてとうに返済済みなのだ。つまり、74年(?)を経てようやく売国卒業の時期を迎えることができるのではないだろうか。そうした記念すべき時に総理である石破氏はラッキーというよりほかにない。大いに力量発揮すべきだろう。石破氏とトランプ氏は結構うまが合いそうな気がする。お二方とも残念ながら顔には出ていないが結構頭がいい。
 そうすりゃ―朝鮮戦争も終わり、これで隣の金さんもニッコリだ。ウクライナとパレスチナのデタントにもそう時間はかからないとみるがいかがだろうか。ネタニアフを手懐けられるのはトランプ以外にいない。また、戦争屋バイデン民主党では無理な緊張緩和が実現できるとみる。そう、オバマ=バイデン=ヌーランドといった名うての戦争屋名士たちが世界政治から消えていくことが実現するかもしれない。ソ連崩壊後1992年に驚喜乱舞していた米国ネオコン紳士たちは終焉を迎えるのであろう。
 難しいことはともかく、トランプ頑張れ!!!といったところである。(文責:吉田)
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「中国は仮想敵国」という防衛三文書の間違いを訂正し、台湾有事幻想から解放されたし

2024-10-14 | 小日向白朗学会 情報
   10月10日のYahoo!ニュースで遠藤誉氏は『石破首相、李強首相との会談で台湾問題に関し「日本は日中共同声明で定められた立場を堅持」と誓う』というタイトルでわかりやすく石破首相の対中国姿勢を解説している。さすが、中国通・遠藤氏だ、こんなオピニオンが出てくるのは、まだまだわが国もまんざらでもないなと思った次第だ。深い洞察力をがあるからこそこんな平易に語れるのかもしれない。
 ───そういうことだ。こんなに簡単なことなのに、なぜみんな「問題化」したいのだろう。台湾において日本にとっての≪有事≫などないし、あり得るわけがない。田中角栄という希代の総理大臣が52年も前に高らかかに声明を出しているではないか。こんな簡単なことを遠藤氏を除いてどこのメディアも私たち庶民に明らかにしようとしない。朝日、毎日、読売もNHKもその他もろもろ。あったら教えてほしいと思う。つまり、one China policyだ。上川外務大臣(当時)は中国向けと国内向けに二枚舌を使って逃げ通せたが、もうそろそろあけっぴろげにしなければならないだろう。日中関係は、あけっぴろげで行けばよい。そしてそのあとに、内政不干渉という姿勢で対応するのが礼儀というものなのだろう。…がんばれ、石破総理!!!とエールを送りたい。・・・れいわ新撰組の山本太郎氏に「経済オンチ」と馬鹿にされてましたが、「それなら、お前やってみろ!!」ということで山本氏を閣内に入れてしまえばよいでしょう。まっ蛇足ですが。・・・参考までに、10月11日付朝日新聞デジタルで報道している「徴兵制は違憲」との政府見解を紹介する。
 その他も簡単なことだ。石破総理の下で地位協定見直しをするなら米国の属国(植民地)という日本の立場を脱却する日も近いというものだ。国防権、電波権、航空管制権を売り渡した吉田売国総理の伝統から解放され、日本の主権も徐々に戻ってくるというものだ。それが「自民党」の政権下でできるとすれば、それこそ自民党の汚名が漱がれるというものだろう。
 ところで、防衛三文書では中国、ロシア、北朝鮮を仮想敵国としているが、これもいかがなものか。別に、仮想の敵国を想定しなくとも、いくらでも軍事は強化できるのである。「お前は俺の敵だ」と正式に宣言されちまったら、言われた方だって「この野郎!!」と反撃するのは当然のことだろう。こんな単純こと、三文書を作った筋(ほぼほぼ外務省筋か、防衛省筋ではないね、多分・・・・)は想像できないのかな。自ら敵を作ってどうすんの。(文責:吉田)
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アブラハム合意のプラットホームに立って共存の道を

2024-10-06 | 小日向白朗学会 情報
 去年2023年11月23日に「共存せよ、然らずんば破滅を」と題して筆者は旧約聖書創世記第21章を紹介し、次のように述べたことがある。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 そこでサラは身ごもり、アブラハムに、その老年におよんで一人の男子を生んだ。それは神が先に告知された頃におこったのである。アブラハムは自分に生まれた子、サラが彼に生んだその子の名をイサクと名づけた。アブラハムは神の命のように八日目にその子イサクに割礼を施した。アブラハムはその子イサクが生まれた時百歳であった。・・・・・・
 サラはエジプト女のハガルがアブラハムに生んだ子が、自分の子イサクと遊んでいるのを見た。そこで彼女はアブラハムに言うには、「この婢とその子を一緒に追い出して下さい。この婢の子はわが子イサクと一緒に跡継ぎになるべき者ではないのですから。」この言葉でアブラハムはその子のために大いに悩んだ。しかし、神はアブラハムに言われた。「あの少年と君の婢のことで悩まなくてもよい。サラの君に言うことは何でも彼女の言う通りに聞いておやり。イサクから生まれる者が君の裔とよばれるべきだから。しかし、婢の子もまたわたしは大いなる民とする、彼もまた君の裔だから。」アブラハムは翌朝早く起きてパンと水の皮袋をとってハガルに与えた。
・・・・・・・・・・・ここでいうエジプト女ハガルの子とはイシマエルのことである。
 ところで、アブラハム合意というイスラエルとアラブ首長国連邦の国交正常化協定というものがあることをご存知だろうか。または、アブラハム合意和平協定ともいうらしい。ウィキペディアによれば…『アブラハムの宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)の始祖でかつユダヤ民族(イサク)とアラブ民族(イシュマエル)の共通の父祖であるアブラハムの名に因んで「アブラハム合意」と名付けられた‥‥ということだ。つまり、ヤハウェの神は異母兄弟であるイサクの末裔もイシマエルの末裔も等しく「大いなる民」として栄えていくと言っているのである。さらに言えば、イスラエルの民もアラブの民もともに栄え、共存していくと言っているのである。(以上引用)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ガザのハマス、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派、そしてその依って立つところのイラン、これら全部を相手にしてイスラエルのネタニアフ氏は何をしようというのだろうか。ユダヤ内部からも厳しい批判を受けているシオニストたちは思考停止に陥ってしまい、の衣を着せたジェノサイドから手を引く契機を道徳心もろともに見失っているように見える。あの戦争屋バイデン氏さえ、全面的に支援すると云いながらその実イスラエルに手を引くように必死の様相を呈し始めている。ネタニアフ氏はほかのアラブ諸国がなぜ手を出してこないのかさえも全く理解していないらしい。仏教でいう無明の世界である。
 江村洋氏はその著書「ハプスブルグ家」の前書きの中で次のように述べている。「ふつう国家が近隣国の領地をかすめ取るときには、武力が用いられる。相手が弱いとみれば、強引に侵略する。世界市場の戦争のほとんどが、この部類である。ところがハプスブルグ家はそのような野暮な、武骨者の用いる手段はとらない。もっと雅な方法で、もっと穏和に、もっと効果的に、他人が苦心惨憺して作り上げた国家を、まるでつまみ食いでもするように頂戴する。すなわち愛の力によって、結婚によって。」と書かれている。宿敵フランスに愛娘アントワネットを嫁がせたマリアテレジア、世界がサライェヴォの銃声をきっかけにして大戦争を展開しているときにさえもシェーンブルン宮殿から一歩も出ずに朝5時に起き夜11時に就寝しその間はせっせと書類に目を通して死の直前まで国家を思い政務に従事していたあの最後の皇帝フランツ・ヨーゼフ帝、などなど、ハプスブルグ家の愛すべき国家運営術、と私は感じている。ハプスブルグ家の爪の垢でも煎じて飲ませたいと思ってしまうのである。そう、あのネタニアフ氏に。ちなみに、ハプスブルグ家は敬虔なカトリックだが。(文責:吉田)

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Google AI で「1972年9月29日」を検索すると‥‥

2024-09-29 | 小日向白朗学会 情報
    AIは次のような文章を提示してくれました。
『1972年9月29日は、日本と中国が国交を正常化した日です。田中角栄首相と周恩来首相が日中共同声明に署名し、両国間の国交が途絶えていた状態を終わらせました。

日中共同声明には、次のような内容が盛り込まれています。
  • 日本は中華人民共和国を中国の唯一の合法政府と承認する
  • 中国は日本に対する戦争賠償の請求を放棄する
  • 両国は主権や領土保全を相互に尊重し、内政への干渉をしない
  • 両国は平和共存の原則に基づいて恒久的な平和友好関係を確立する
  • 両国は平和友好条約の締結を目指して交渉を行う
日中共同声明の締結後、日本は台湾との断交を表明しました。』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 そうです。石破総裁様、そうなんです。今から52年前の本日、わが国歴代総理のなかでピカ一の総理である田中角栄が中国周恩来と日中国交正常化文書に調印したのでした。「台湾有事」などという戯言を吐いている場合ではないですよ。頑張ってください。第二の田中角栄が鳥取から生まれたと歴史に刻みましょう。応援していますから。(文責:吉田)
PS・・・方法は簡単です。朝鮮戦争終戦です。トランプと組めば即可能ですし、現在の諸悪の根源・地位協定はすっ飛んでしまいます(まっ、新しい地位協定は必要でしょうが)。米軍基地ができる心配がなくなればロシアは北方領土を返還してくれるでしょうし、極東の安全は確立するでしょう。今がピカ一総理になれる大チャンスでしょう。外務省筋当たりの与太話に耳を貸すことはありませんし、利権屋集団の屁理屈文書で、いたずらに仮想敵国をデザインしている・防衛三文書は見直し決定ですね。いわんや、イギリスやらなんやらにとやかく言われる筋合いはないですよ。


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大野芳取材資料(大野芳文庫)の中から安重根関係写真をいくつかご紹介

2024-09-21 | 小日向白朗学会 情報
 伊藤博文公は明治42年10月26日哈爾濱駅に降り立った後、暗殺された。露国大蔵大臣のココフツェフ氏と「世界のその後を分ける会談」が行われる予定であったが、まぼろしの会談となってしまった。その意味は極めて重いが、犯人とされる安重根はもちろん、裏に隠れたままの真犯人もその意味するところに思いが至らなかったと言わざるを得ない。写真は、哈爾濱駅に降り立ちココフツェフ氏と挨拶をしようとしている伊藤公、犯行日の哈爾濱駅ホーム、旅順駅より獄舎へ移される安重根(2枚)、刑死前の安重根、安重根の家族写真。これらは当学会が預かっている大野芳氏の取材資料の中にあるものである。



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統一教会は自民党の裏選挙対策本部

2024-09-19 | 小日向白朗学会 情報
 2024年9月18日、朝日新聞デジタルは『比例候補の当落協議、支援を確認 安倍首相と旧統一教会会長らの面談』とする自由民主党と統一教会に関係する記事を配信した。
『……
 安倍晋三首相(当時)が2013年の参院選直前、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の会長らと自民党本部の総裁応接室で行ったとされる面談では、自民党比例区候補の当落について協議があったと複数の関係者が取材に証言した。両者は選挙支援を確認。安倍氏は教団の歴史や活動の解説も受けたという。
 関係者によると、面談は参院選公示4日前の13年6月30日にあった。この日は日曜日で、首相動静欄には「(午後)1時9分、自民党の萩生田光一、岸信夫両衆院議員」とある。安倍氏は1時45分に別の日程があり、面談はこの間だった。
 面談で、安倍氏と教団の徳野英治会長や教団の友好団体で保守系政治団体「国際勝共連合」の太田洪量(ひろかず)会長らは、自民党比例区候補の北村経夫・現参院議員の当落予想のやりとりをした。安倍氏は教団側に支援を要請する言葉を伝えたという。
……』
 この記事に登場する北村経夫であるが参議院に登録されている経歴には『…昭和30年1月5日山口県田布施町生まれ。中央大学卒業、ペンシルベニア大学大学院国際関係論学科修士課程修了。産経新聞政治部長・論説委員、編集長、執行役員。平成25年参院選挙(全国比例)初当選、令和3年参院補欠選挙(山口県)当選……』とある。北村と統一教会との関係だけでも十分に怪しいのに、さらに北村の出生地が「山口県田布施町」とあることから、まさしく陰謀論に近い話となってしまう人物なのである。さらに萩生田光一と岸信夫は統一教会とはただならぬ関係にある国会議員である。
 そのほかに記事に登場する人物として徳野英治と太田洪量がいる。徳野英治は元統一教会会長であり、かつ、悪名高い「日韓海底トンネル」を実現するための上部組織「一般財団法人国際ハイウェイ財団」元会長なのである。また太田洪量は元国際勝共連合会長である。つまり、2023年6月30日、統一教会の大幹部は、安倍晋三首相がいる官邸に入り込み真っ昼間から首相と国政選挙の打ち合わせを行っていたという、とんでもない話なのである。
 その後の統一教会であるが、徳野英治や太田洪量は第一線を退いて、現在では第12代会長梶栗玄太郎の長男の梶栗正義が組織を掌握している。そのような梶栗正義であるが、おとなしく蟄居していたわけではない。安部晋三とは関係の深い統一教会であったが、安倍の後を引き継いだ岸田とはまだ親密な関係性を築けないでいたのか、岸田が2019年に訪米時にギングリッチ元米下院議長の仲介で面談を果たしている。
 これについては(2023年12月11日)『2019年に岸田首相が米国で面談したのは『日韓海底トンネル』の最高幹部であり、2020年設立の岸田熊本会長及び「日韓トンネル推進熊本県民会議」議長は閔妃暗殺事件主犯の末裔』で紹介した。これらからもわかる通り、自由民主党総裁は統一教会とは切っても切れない深い関係にある。この点を紹介したのが上述の記事なのである。
 
 ところで、筆者はこれまで多くの統一教会に関する問題点を示して来た。
その結論としては、自由民主党は憲法改正に必要な三分の二の議席を確保するため「宗教法人という仮面をかぶるテロ集団統一教会」を国政選挙で利用してきた。その見返りとしてテロ集団統一教会が求めたものは、日本国内で違法の活動を行っても警察や司法に追及されることのない超法規的な地位を自由民主党に保証してもらうことであった。その結果、自由民主党は、衆議院では定数465名中 257 名、 参議院では248名中 115 名、計 372 名を確保することができたのである。更に自由民主党が行ったことは、改憲に必要な議員数を確実に確保するため公明党、国民民主党、日本維新の会、立憲民主党執行部には連合を通じて懐柔して改憲に必要な議員数を確保するにいたった。
 安倍晋三自民党総裁のものとで、自由民主党は改憲に必要な議員数を確保する道筋が見え始めたころ、今度は、地方議会でも統一教会を利用した選挙システムの構築を開始した。それが「日韓トンネル推進全国会議」であった。統一教会の見返りは教祖文鮮明の悲願であった「日韓海底トンネル」を日本政府の資金で完成させることであった。つまり、安倍晋三自由民主党総裁は、地方議会選挙にも統一教会を利用して国政選挙並みの集票力を持つことであった。統一教会を地方選挙でも活用することにしたのは、水などの公共インフラを民営化するためには地方選挙でも自由民主党が主導権を握る必要があったからである。従って公共インフラの私物化のために地方議会も統一教会を利用して掌握しようとしていたのだ。
 ところが2022年7月8日に安倍晋三元自民党総裁は山上容疑者に暗殺された。
 これ以降、世論は統一教会と自由民主党の関係を厳しく追及することになり、ついに、自由民主党は統一教会と絶縁することを宣言することになった。
ところがこれは自由民主党にとって「両刃の剣」なのである。
 自由民主党は、これまで統一教会の選挙支援を基本として国政選挙を組み立ててきた。そのため、自民党所属議員は数だけは多いものの、その実は、まともな選挙活動を行ったことのない二世議員や三世議員、稼ぎの良い副業程度のタレント議員等々、政治家とは無縁のグロテスクな利権集団となってしまった。
 裏返して言うならば、統一教会の選挙支援は「箸にも棒にもかからない」輩を国会議員として当選させる術を知るプロフェッショナルな集団であったという見方もできる。
 ところが、自由民主党は、そのような選挙活動のプロフェッショナル統一教会と絶縁してしまったのである。
 その結果、如何なる現象が起きたのかといえば、2024年4月28日に行われた統一補欠選挙が島根一区の選挙結果が如実に物語っている。
 自由民主党は、これまで統一教会が中心になっておこなっていた「どぶ板選挙」で得票数の底上げを図ってきたが、それが、全く機能しなくなったのである。
 これまで統一教会は国政選挙に多くの要因を投入してきたとされている。これが突然消滅したのである。したがって、次の国政選挙で自由民主党は、一人区、それも前回得票数が二位候補とわずかな差の選挙区では、次々と取りこぼすであろうことは十分に予想されることなのである。その影響は、現在行われている自由民主党総裁選挙にも大きな影響を及ぼしている。
 次回の統一教会の支援のない国政選挙では苦戦することが予想される現職国会議員が、こぞって自由民主党総裁選挙に出馬して地元の基礎票を固める戦術に出た。このことが今回の自民党総裁選挙では多くの候補が出馬した原因であると考えている。            以上(寄稿:近藤雄三)

【参考】
・(2024年05月24日)『日韓トンネル推進全国会議
・(2023年11月26日)『宗主国アメリカからみた現地政権「自由民主党」の衰退と荒廃 -アメリカの意向は「自衛隊海外派兵を可能にする」政権に再編すること-
・(2023年09月28日)『自民党はいよいよ総選挙に打って出るが、いまだ、統一教会の「禊」は済んでいない!
・(2022年11月30日)『映画『アンタッチャブル』を地で行く統一教会という犯罪者集団(2) ―統一教会を犯罪者集団と断定した「フレーザー委員会」報告書―
・(2022年11月28日)『映画『アンタッチャブル』を地で行く統一教会という犯罪者集団(1) -「内部告発者を裏切り者として刺殺未遂」、脱税、国体破壊等の犯罪-
・(2022年11月29日)『『文藝春秋』1984年7月号( 134-151頁) これが『統一教会』の秘部だ  世界日報事件で『追放』された側の告発
・(2022年11月24日)『自民党総裁と統一教会が連携して行った選挙運動
・(2022年11月14日)『統一教会と「日韓トンネル推進全国会議」
・(2022年11月07日)『統一教会が秘蔵する「御言選集」が流出していることが確認された
・(2022年10月21日)『文鮮明が決めた統一教会系国会議員となる条件(続き)
・(2022年10月20日)『統一教会と同教会認定国会議員の巨大利権
・(2022年10月17日)『文鮮明が決めた統一教会系国会議員となる条件
・(2022年10月12日)『寄稿文   統一教会製空気散弾銃「鋭和B3」
・(2022年11月10日)『統一教会製空気散弾銃「鋭和B3」の使用が疑われる朝日新聞襲撃事件
・(2022年10月07日)『寄稿文  統一教会と系列国会議員の「日韓海底トンネル」という巨大利権
・(2022年10月03日)『寄稿文  ≪統一教会と萩生田光一政調会長≫
・(2022年09月08日)『(続)統一教会って? 51年前の国会で   えっ? 銃を輸入していた!!
 ・(2022年09月05日)『(続)統一教会って? 昭和51年の国会でも…46年前

(参考 1)

(参考 2)



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「水資源」簒奪に蠢く与野党国会議員(第三回) -自由民主党、統一教会、環境省、インフラ劣化、民主党、連合、建設国債、財務省、日米地位協定、PFAS- 目次

2024-09-04 | 小日向白朗学会 情報
-、環境省マイク切り事件
二、環境省大臣出身選挙区と統一教会
三、水道民営化を進めた宮城、浜松と統一教会
1.宮城県と統一教会
2.浜松市と統一教会
3.広島県と統一教会
4.長野県小諸市と統一教会
四、インフラ整備に必要な資金と建設国債
五、統一教会による選挙支援を失った自由民主党の国政選挙
六、国富簒奪政治からの脱却


四、インフラ整備とPFI法
1.水民営化とPFI法
 水民営化に付いてその概要について要領よく纏められているものとしてPresident Online『最重要インフラ「水道」の民営化は本当に必要なのか』 (2022年07月1日)[1]がある。この記事に沿って水民営化の問題点を挙げてみる。それによれば水道民営化が話題になったのは、2013年4 月、麻生太郎氏のアメリカのCSIS(米戦略国際問題研究所)での発言である。
『……
「水道というものは、世界中ほとんどの国ではプライベートの会社が水道を運営しておられますが、日本では自治省(自治体)以外ではこの水道を扱うことはできません」「(日本では)水道はすべて国営もしくは市営・町営でできていて、こういったものをすべて民営化します」
……』
 この麻生発言から5年後、平成30(2018)年に「改正水道法」案が国会で議論されることとなった。ところが公共事業の民営化を担当する「民間資金等活用事業推進室」(別名「PPP/PFI推進室」)の政策調査員とし水メジャー・ヴェオリア社(Veolia)社員が2017年から在籍していたことが判明した。これは、2018年11月29日、参議院の厚生労働委員会で福島みずほ参院議員が明らかにしたものである。そもそも政府は、公共インフラの在り方について利害関係を有する業者の協力で水民営化法制化を進めるという利害相反を行っていたのである。
 ここで水民営化の問題点をさらに進める前に、しばしば登場する専門用語を説明しておくことにする。
 「PPP」とは「官民連携」(Public Private Partnership)の略語で、公共サービスの運営に民間を参画させその事業を独占させる手法である。ついで「PFI」(Private Finance Initiative)とは、「公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う新しい手法」である。(参考1「PFI(Private Finance Initiative)とは」)。
 さらにもう一つ重要な手法が「コンセッション方式」である。この「コンセッション」というのは施設の所有権を自治体に残したまま、民間事業者に運営権を包括的に委託するやり方だ。これは、東日本大震災が発生した2011年にPFI法が改正され、「公共施設等運営権方式」(コンセッション方式)が初めて登場した。この改正によって、議会の議決で公共施設等の「運営権」を民間企業に売却し、その維持管理や運営を包括的にさせることが可能となった。この点について『民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律』(PFI法)ではつぎの様に定めている。
『……
目的
第一条 この法律は、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用した公共施設等の整備等の促進を図るための措置を講ずること等により、効率的かつ効果的に社会資本を整備するとともに、国民に対する低廉かつ良好なサービスの提供を確保し、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
……』
 PFI法の目的は「国民に対する低廉かつ良好なサービスの提供を確保」なのである。次いで同法で最も特徴的な「運営権」の規定がある。「運営権」は単なる契約上の地位ではない。法によって設定された物権(財産権)を指す。そのため、「運営権」を取得した企業はこの権利を別の企業に売りわたすことができる。また、担保権としても機能するため「運営権」を担保として金融機関に差し出せば融資を受けることもできる。
 そのうえPFI法では「株式会社民間資金等活用事業推進機構による特定選定事業等の支援等」という金融に関する条項がある。これを根拠に「民間資金等活用事業推進機構」を準備していて「コンセッション方式」で実施するために必要な事業資金を政府が保証をつけて提供までしている。これは「コンセッション方式」で民間資本の活用を謳いながら、その実、政府が民間資本に資本を融資するというもので、政府は事業を民間でやるようにしながら、その実、事業体に政府が資金を提供するという実に大きな矛盾を含んだものである。
また、「運営権」であるが、最初に同権利を取得した企業は、より高い価値を提示する業者に「運営権」を販売しても問題がないだけではなく、水道料金の設定は「運営権」を取得した会社の都合だけで決定することができる。極端な話、「運営権」を中国の会社に売ることも可能なもので、その裁量は最初に運営権を獲得した事業体に任されることとなる。したがって最初に運営権を獲得したところは、最初の契約金に契約期間内に得べかりし利益を加えたうえで他の事業体に売却した場合、次の事業体が残りの期間で投下資本を回収しようとすると必然的に水道料金は上昇することになる。そのため「国民に対する低廉かつ良好なサービスの提供を確保」という趣旨とは程遠いものとなる。それもこれも政府が、日本国憲法第25条第1項にある「すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」である生存権に影響を及ぼす公共インフラ水事業に私有権に近い権利を付与したことに起因する。極端な話、水メジャーが日本国民の生存権を所有してしまうという話でもあるのだ。しかし同法には本質的な問題があることは国会で論議とならなかった。それは、水民営化については法整備が進められた当時の与党だけではなく野党も同法に賛成していたからである。
 それだけではない。PFI法には公共インフラを民営化した後に低廉なサービスを担保する条項はない。したがって『民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律』(PFI法)は、実は憲法違反の可能性もある欠陥法なのである。
 本質的な問題を抱えるPFI法であるが、PRESIDENT Online『最重要インフラ「水道」の民営化は本当に必要なのか』[2]では同法に付いて次のようにまとめている
『……
たとえば水道事業では、民営化で料金が安くなるという水メジャーのセールストークに反して、逆に料金の高騰するケースが各国で続出している。
なかには企業側が四倍もの水道料金を通告してきた事例もある。ポルトガルの人口五万人のパソス・デ・フェレイラ市だ。
二〇〇〇年に市は民営化の契約を結んだ。前市長は、実際よりも多い水需要計画にもとづいて企業に収益を約束していたが、人口が減少する町で水需要が拡大するはずもなく、企業側は予想した収益が得られないとわかると、水道料金を四倍に値上げした。そのうえ、企業側は、約束された収益を補てんするため市に一億ユーロ(約一二〇億円※)の補償請求書まで送りつけてきた。
小さな町が企業を誘致するために現実にそぐわない楽観的な予測を立て、企業はそれを知りながら料金収入でまかなえなかった分の収益を自治体に請求する。企業にとってはなんのリスクもなく、結局このようなずさんな契約のツケを払うのは住民である。
……』
 上記記事の結びで述べていることは、単なる脅し文句ではではない。すでに外国では危惧されることが行われていて、日本でも同様の問題が発生することは確実である。というのも「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(いわゆるPFI法)には次のような規定がある。
『……
(公共施設等運営権者に対する補償)
第三十条 公共施設等の管理者等は、前条第一項(第二号に係る部分に限る。以下この条において同じ。)の規定による公共施設等運営権の取消し若しくはその行使の停止又は前条第四項の規定による公共施設等運営権の消滅(公共施設等の管理者等の責めに帰すべき事由がある場合に限る。)によって損失を受けた公共施設等運営権者又は公共施設等運営権者であった者(以下この条において単に「公共施設等運営権者」という。)に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。
……』
 つまり「コンセッション方式」で民営化した水事業は「運営権」を取得した企業が、如何に悪辣な運営を行っても、そのことを理由に契約を解除することはできないのだ。さすがに日本政府も、同法に不備があることに気が付いて「契約不適合責任」という考えを織り込んだ改定を行っている。しかし「運営権」を取上げて賠償請求するところまでは踏み込んでいない。したがって事業者を排除したい場合は、同法三十条にある「運営権」を事業者から買い戻す以外に方法がない。つまり「泥棒に追い銭」なのである。
 上記の結びで述べている通り、民営化で料金が安くなるというのは真実ではない。それも各市町村が持つ水道事業をうりとばすために、県知事や県会議員そして市長を選ぶ選挙に反社集団「統一教会」を利用した選挙で民意を捏造して「民営化という聞こえの良いようにした売却」を実行していたのだ。つまり、政府自由民主党がいう水民営化とは『国富』である「公共インフラ」を合法的に売却するための手法のことなのだ。

2.改正PFI法と民主党政権
 ここで全て公共インフラ民営化の責任を自由民主党が負うかといえば、それも違う。実は「改定PFI法」を成立させたのは民主党政権なのである。そのことを、平成23年3月11日、つまり「三陸沖地震」当日、内閣府広報に「蓮舫内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年3月11日」[3]で確認することができる。
『……
 2点御報告があります。
……
また、今日はPFI法改正法案が閣議決定をされました。
これは昨年6月の閣議決定の新成長戦略において、2020年までの11年間で、従来の事業規模の2倍以上の拡大を目指すと決められておりましたので、それを受けて作業をこれまで進めてまいりました。「コンセッション方式」として、公共施設等運営権、運営権制度の創設です。あと対象施設を拡大する。総理を会長とする民間資金等活用事業推進会議の設置を行うものとなっています。
この改正によりまして、効率的で質の高い公共サービスを提供するとともに、新成長戦略の実現を推進、我が国の成長をしっかりと後押しするものになると確信をしております。
……』
 と蓮舫大臣は、コンセッション方式で公共インフラ民営化が可能となることを高らかに宣言しているのだ。したがって水の民営化は平成23年以前から公共インフラの民営化のための法制化は進んでいたのだ。その証左として、やはり内閣府広報に『前原内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成22年3月12日』でも確認することができる。
『……
 私の方から2点まずお話をいたします。まず、駐車場整備推進機構、財団法人でございますけれども、道路特定財源の議論のときに私もこの問題について取り上げてまいりまして見直しをということでありましたけれども、なかなか方向性が固まっていなかったということで、これにつきましては一年以内に解散をするということで今日皆さん方に発表させていただきます。この駐車場整備推進機構というのは全国で14箇所の駐車場を持っておりますけれども、こういった駐車場管理というのは民間で十分出来ますし、むしろ民間でやってもらった方が上手く経営出来るかもしれないということでありまして、民間にやってもらうことになります。方針と言いますかその方法といたしましては、国が民間会社に委託をすると、コンセッション方式というものを取らせていただくということになります。つまりは営業権を譲渡して、そしてPPPである一定期間自由に営業してもらうということでその営業権の譲渡を国がもらうということで負債の返還もしていきたいと思いますし、返済が終われば利益が国に入ってくるということになろうかと思っております。
……』
 前原誠司氏は「コンセッション方式」で多くの公共インフラを民営化する準備を平成22年にはすすめていたのだ。その後の同氏は、小池百合子東京都知事と組んで民主党を解体したうえに、防衛外交問題では「防衛三文書」作成に積極的に協力するという野党にいながら与党を補完するという最も危険な政治家となっていった。
 ところで「コンセッション方式」をすすめたのは蓮舫氏や前原誠司氏よりももっと危険な大物民主党政治家が存在する。それは野田佳彦元内閣総理大臣である。その様子は「民間資金等活用事業推進会議(第3回)議事要旨」[4]に余すところなく見ることができる。
『……
民間資金等活用事業推進会議(第3回)議事要旨
日時:平成24年8月1日(水)(15:15~15:25) 場所:官邸2階小ホール
出席者: 内閣総理大臣 野田佳彦
    内閣官房長官 藤村修
    内閣府特命担当大臣 中川正春
その他全閣僚(代理出席含)
内閣府大臣政務官 園田康博
〔議事の経過〕
1 冒頭、野田総理から挨拶
○ PFIについては、昨年、公共施設等運営権や民間提案制度の導入等の法改正を行い、また、現在、官民連携インフラファンドの創設を内容とするPFI法 改正法案を国会に提出し、制度面の整備を着実に進めているところ。こうした 中、昨日閣議決定した「日本再生戦略」の中でも、PFIの具体的な案件形成 等を促進することとしたところ。
○ それぞれの所管分野で一つでも多く目に見える形でPFI事業を進捗させることが重要であり、各大臣におかれては、政府一体となってPFIを推進するため、本日ご議論いただく取組方針も踏まえ、引き続きリーダーシップを発揮していただきたい。

2 政府一体となったPFI事業の一層の推進に向けた取組方針(案)について
○ 中川大臣から趣旨の説明 ・ 極めて厳しい財政状況の下、財政負担の大幅な縮減や自由度の高い民間の事業機会の創出につながる独立採算型事業の拡大など、新たな方向性について、全 閣僚間で認識を共有し、PFI事業を一層推進するというのが本取組方針の趣旨
○ 園田政務官から取組方針案の要点を説明
・ PFI事業の一層の活用と普及促進の必要性、
・ コンセッションやインフラファンドを活用した独立採算型等のPFI事業の具体化、新たな分野でのPFIの活用等に関する政府横断的な取組の必要性、
・ PFI事業の掘り起しのため、事業モデルの具体化・提示等を通じた案件形成 の積極的な推進に努めること、
・ 防災や再生エネルギーなど特に政策ニーズが高い新たな分野における事業化促進への重点的取り組み、PFI法改正法案成立後、官民連携インフラファンドの金融面における支援等による案件形成の促進、
・ 副大臣レベルでの連携・調整の場を設け、具体的な取組を進めること
・ 通常の公共事業とのイコールフッティングや関係各省におけるPFI推進体制の充実等への取組を図ることや、 公共施設整備を行う際にまずはPFIの実施の可否を検討する制度につき、内閣府と関係省庁が連携・協力して検討を進めること。
・ これらの取組により、インフラ事業への民間投資の促進を通じてモノへの需要を顕在化させ、デフレ脱却と経済活性化の実現を目指すこと等につき記述。
 →推進会議決定とすることにつき了承

中川大臣から
○ 取組方針に従って各々PFI事業の案件形成促進のために必要な取組を協力に推進すること。
○ 今後とも推進会議の場を通じ、PFI事業の一層の推進に政府を挙げて取り組むこと。
について、閣僚各位に協力要請

3 民間資金等活用事業推進会議幹事会の設置について
○ 概要につき、園田政務官から説明 ・関係行政機関相互の緊密な連携の下、PFI施策の実施の推進等に資すること等を目的として、内閣府審議官を議長とし、関係各省の官房長等を構成員に設置すること
 →幹事会を設置することにつき了承
……』
 ところで、この議事録から野田内閣とPFI法との関係が見て取れるだけでなく、これまで問題としてきた統一教会の関係も併せて浮かび上がってくる。それは会議に出席していた中川正春元内閣府特命担当大臣である。中川氏と統一教会の関係であるが、立憲民主党泉健太代表が2022年07月22日の記者会見で、同党の篠原孝(衆院比例北陸信越)、小宮山泰子、中川正春の3衆院議員が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)もしくは関連団体が開いた会合に祝電を送っていたと明らかにしている[5]。民主党も自民党と同様に公共インフラ民営化には統一教会が結びついていたのだ。
 もう一つの民主党政権には水事業に関して深刻な問題を抱えている。それは当時の全日本水道労働組合が強く反発していたにもかかわらず強行した経緯があった[6]。2019年1月16日、全日本水道労働組合が書記長名義で出した文章が次のものである。
『……
週刊ダイヤモンド2019年1月19日号掲載の記事について(談話)
1.表記雑誌は第197回臨時国会で成立した、改正水道法に盛り込まれた公共施設等運営権方式の導入を中心にしながら、人口減少社会の中で水道料金の値上げが危惧されるとして危機を煽り、あたかも公共施設等運営権方式がコスト削減に寄与し、財政難に苦しむ水道事業体の救いになるかのような印象を与えるものである。
 あわせて、我々全水道が「組合員の仕事が奪われる」と危機感なるものを募らせ、立憲民主党とタッグを組んで反対運動を行ったなどと、一方的に全水道を「反対派」などとして、わが組織の役員の個人名まで列挙して賛成派と反対派の対立構造を印象付けようとする卑劣な内容となっている。
……
3.記事では水道事業について「水道事業の案件は行政から高く受注できる甘い汁」などという具体的根拠に基づかない誤った表現がされているが、現在では工事案件などでも入札または落札に至らない「入札不調」案件が増えており、耐震化工事などが進まない一つの要因となるなど、水道事業に係る案件は決して「甘い汁」などではない。
 また、「水道事業体で働く公務員の数は業務量や収入額に対して多過ぎる」などとする表現に至っては、何らの学術的あるいは統計的根拠に基づいたものでなく、もはや使い古された公務員バッシングのための陳腐な語句でしかない。さらには全水道が既得権益を守ろうとして法案に反対した旨の表現があるが、事実と相違がある。全水道は健全な水循環と、それをもって安全な水を安定的に供給・処理することを求めており、そのために市民の水道を支える職員の処遇改善を訴えてきた。そもそも公務員に既得権益なるものは存在せず、むしろ公共施設等運営権方式の導入により既得権益を得る者がこの方式を推進しているのは明白である。
4.改正水道法の国会審議では、先の通常国会で成立した改正PFI法とともに改正法案の立て付けに重大な疑惑が存在している。内閣府民間資金活用事業推進室には、公共施設等運営権方式の導入によってそのビジネスチャンスが増加するとみられる巨大水企業・ヴェオリア社日本法人からの出向職員が在籍していることや、内閣府大臣補佐官の突然の辞任と、その補佐官を中心とした欧州出張における利害関係者からの便宜供与など、多くの疑惑にまみれている。こうした既得権者による水の商品化から市民の水を守るため、持続可能な水道事業・下水道事業を追求していく。
  なお、全水道は考え方の違いで二極対立を煽り、一方を敵視する旧態依然とした古き手法に与しない。すべての人々に関わる『水』の問題について異なる意見を排除せず、常に対話を望むものであることを申し添える。
……』
 民主党政権は、政党の支持基盤である労組が反対するにも関わらず改正PFI法を強行してしまったのである。つまり公共インフラを民営化するということに関して、与党と野党という区分けは全く意味をなさない。公共インフラの民営化に関して対立軸は「小さな政府」vs「大きな政府」ということであり、経済体制でいうならば「新自由主義経済」vs「ケインズ政策」、経済思想でいうならば「グローバリズム」vs「反グローバリズム」、という根本的な違いなのである。
 更に問題を複雑にしているのは、日本の選挙制度が小選挙区制である。そのため与党と野党が公共インフラを民営化することで一致していると、選挙民は「民営化反対」であるということを投票に反映させることができない。その結果、投票しても無意味であるという意識が芽生え投票率は下がってくことになる。
 これと同様なことが「消費税」についてもいえる。与党も野党も増税に賛成している候補者の場合、増税反対の意思を表すことができなくなってしまう。そのため二大政党制とは、単なる「政権転がし」であり、茶番となってしまうのである。
 現代日本の閉塞感と民営化が急速に進んだ原因に、小選挙区制度だといっても過言ではない。また日本の小選挙区制と同じ問題が各種の政治動向調査でも生じていて、政治動向調査母体は恣意的な動向を作り上げるため、反対の立場が選択できない質問項目の設定となっていることが往々にして起きているなど、同様の問題が起きている。

3.公共インフラ民営化と国家財政
 日本の水事業を買い取る側である水メジャーの市場性について検討してみる。世界各国で上下水道ビジネスを160年以上まえから繰り広げてきたのがVeolia、Suez、GE、Siemens等の水メジャーである。
 ヴェオリアの2019年の年間売り上げは約271億ユーロ(約3兆3200億円)、スエズは同約180億ユーロ(約2兆2100億円)である。この2社はフランス国内の水道経営を160年以上続けてきた経営ノウハウ・技術を持って、世界の水ビジネス市場を席巻してきた。近年、テムズ・ウオーターが英国内ビジネスに専念する方向性を打ち出したことで、ヴェオリアとスエズが国際的な水メジャーとなったが、2022年、2社が合併したことで売上高5兆円を超える「スーパー水メジャー」が誕生することになった。
 この水メジャーから日本の水市場を見るとどうなるかかと云えば「宝の山」なのである。
その理由は、
(1)水道料金収入が日本全体で年間2兆3000億円と巨大であること
(2)漏水率が全国平均7%以下(東南アジアでは漏水率30~40%)、東京都に至っては3%以下で今後の「漏水対策費」が他国に比べ非常に少額で済む
(3)“請求書が来たらキチンと払う日本人の国民性”が反映され、水道料金の回収率99・9%と他国では見られない高い数値という世界的に珍しい理想的な市場だかである。
また汚水処理として支払われる下水道使用料総額は年間約1兆5000億円である。したがって上下水道事業を一貫して行うとすれば、日本の上下水道の市場規模は約3兆8000億円(毎日100億円以上)ということになる。これだけの金額であるということは、日本が滅びない限り永遠に継続するビジネスであるということなのである。

 ところで、長期に渡り安定して利益を確保できる公共インフラである水事業を民営化することについて行政が住民を説得する際のキーワードが「老朽化」である。しかし水道事業は、水道法第6条第2項により市町村が経営することが原則となっている。また、地方財政法第6条により独立採算が原則となっている。
 そして、水事業収入は、事業収入の約9割を占める水道料金収入であって、節水機器の普及や使用水量の減少などにより減少傾向にある。一方で、高度経済成長期に建設した水道施設が耐用年数に達し、今後それら施設の更新や耐震化が急務となっていて、それら事業の実施に必要な資金、人員の確保が必要となっている。つまり公共インフラが劣化し更新する場合の費用が問題となっているのだ。それまでは各自治体が更新費用を工面して実施してきたが、それにより自治体の負債はふえるが資産も増える。したがって「老朽化」した公共インフラに再投資すれば済む話なのである。しか現在の日本では、再投資が出来ない、もしくは、再投資をしたくない、の何方かの理由があるはずでる。つまり、この話は資金の問題なのだ。
 水道事業費を実施するために必要な資金は、国庫補助金、公営企業債、一般会計出資金から構成されている。その中の公営企業債という地方債は、地方公共団体が財政上必要とする資金を外部から調達することによって負担する債務で、その履行が一会計年度を超えて行われるものをいう。
その性格として次のような側面を有している。
  • 地方公共団体が負担する債務であること
  • 資金調達によって負担する債務であること
  • 証書借入又は証券発行の形式を有すること
  • 地方公共団体の課税権を実質的な担保とした債務であること
  • 債務の履行が一会計年度を超えて行われるものであること
であった。
 つまり市町村が水事業実施をするにあたって政府が多額の財政投融資をしていたのである。したがって設備が老朽化した場合は、既に償還が終わった部分の公営企業債を再度発行できるようにして残債部分の利息が問題とならないように留意するだけで大部分の問題が解決する。さもなければ公共インフラ整備と維持のため国庫補助金を投入する方法もある。残債部分の利息に付いては二重払いという問題があるため水道事業民営化の際にも残債利息を政府が補填する方法は行われていることから公営のままでも同じことをしても問題は起こらない。
 その結果、財政投融資は、郵便貯金や厚生年金の積立金、簡易保険などの調達部門を通じて、598兆円の資金を調達していた(2000年3月末現在)。
そしてこれら資金は資金運用部の仲介等を経て、運用部門へ提供されていた(同535兆円)。
財政投融資の資金は大きく分けて、(1)国債の引受けや地方公共団体への貸付および財投対象機関の累積損失に対するファイナンス相当分(全体の約36%)、(2)政府系金融機関が行う民間部門向け貸付のファイナンス(同28%)、(3)公的企業が行う公共投資向けファイナンス(同15%)、(4)調達部門による自主運用(同19%)、の4つの分野に配分されていた。
順調にすすんでいた公共インフラに対する政府の投資は順調に推移していた。

 ところが平成13年度に財政投融資改革で財政投融資の資金調達のあり方を大きく変更してしまった。
 それまで財政投融資に必要な資金を調達していた郵便貯金、年金積立金を全額義務預託することで成り立っていたが、それらをすべて廃止して、財投債(国債)の発行中心に大転換すること等を柱としにしたのであった[7]。具体的には、平成13年度の資金運用部資金法等の改正で次のようになった。  
  • 郵便貯金、年金積立金の資金運用部資金への預託義務を廃止  
  • 特殊法人等が行う財政投融資対象事業については、民業補完の観点から事業を見直し
  • 資金調達については、真に必要な資金を財投債(国債)または財投機関債によって市場から調達することとする
それを図示したのが参考2(「財政投融資の概要2022」[8]から抜粋)である。その結果、平成13年度の財政投融資改革は国債発行価額が以上の伸び率を示すことになるのだ(参考3「普通国債残高の累増」)。
 つまり、財政投融資改革の経緯は平成12年4月5日に始まった第1次森内閣のころであり、それを実行に移したのは、第二次小泉内閣の時なのである。
その時、小泉が行った財政投融資改革の最も重要な財政投融資の資金源である郵便貯金を廃止するために行ったのが「郵政民営化」なのである。
具体的には、平成16年9月10日に閣議決定した「郵政民営化の基本方針」で、以下の3つの目的を掲げている[9]。
『……
郵政民営化の基本方針
平成16年9月10日
 閣  議  決  定
明治以来の大改革である郵政民営化は、国民に大きな利益をもたらす。
  • 郵政公社の4機能(窓口サービス、郵便、郵便貯金、簡易保険)が有する潜在力が十分に発揮され、市場における経営の自由度の拡大を通じて良質で多様なサービスが安い料金で提供が可能になり、国民の利便性を最大限に向上させる
  • 郵政公社に対する「見えない国民負担」が最小化され、それによって利用可能となる資源を国民経済的な観点から活用することが可能になる。
  • 公的部門に流れていた資金を民間部門に流し、国民の貯蓄を経済の活性化につなげることが可能になる。
こうした国民の利益を実現するため、民営化を進める上での5つの基本原則(活性化原則、整合性原則、利便性原則、資源活用原則、配慮原則)を踏まえ、以下の基本方針に従って、2007年に日本郵政公社を民営化し、移行期を経て、最終的な民営化を実現する。
……』
そして郵政公社の4機能(窓口サービス、郵便、郵便貯金、簡易保険)が分割された。それと共に財政投融資の財源が絶ち切られて戦後日本の経済発展をささえた投資と財源として郵便貯金と年金を組み合わせた「建設国債」方式は放棄されることになった。
そして2007年10月1日に日本郵政株式会社と4つの事業会社として再出発することになった。

4.公共インフラ民営化の先進国であるイギリスの現状
 PFIの現状については難波悠『イギリスはなぜ、PFIを止めたのか』[10]が詳しい。同氏によれば、イギリスが90年代にPFIを始めた時代背景や目的は大きく3つあった。
  1. サッチャー政権下、小さな政府を目指していたこと。
  2. EUの仲間入りをする前提として、借金が認められなかったことだ。そこで、民間資金で公共インフラを整備し、そこから提供される公共サービスを購入するという手法を発明した。これがPFIだ。あくまでも官側はサービスを購入しているだけなので、施設はオフバランス化でき、借金ではないというロジックである。
  3. 公共工事の遅延と予算オーバーが顕著であったこと。発注者側の能力不足と、工事業界の体質が背景にある。PFIで民間に借金をさせれば返済しないといけないというプレッシャーが民間側に生まれ、きちんと工事を終わらせるだろうと期待された。
 しかしPFIを始めた90年代の動きは鈍かったものの2000年代になるとPFIは急速に拡大した。ところが、PFIを実際に動き始めると民間が儲けすぎとか民間は何をやっているのか分からないという声があがった。また、公共インフラ施設は資本と資産部分から外されてしまったことから、つまりオフバランス化したことから、公共事業体は民間会社からサービスを購入しているだけという形になったが、長期間にわたってサービス代金の支払を続けるということは、やはり長期借金と同じではないかという見方が出るようになった。自己資産であれば設備保守のことを含めて考えることが常識であるが、運営権が民間に移っていることから設備保守につい公共事業体が介入することはできない。そのため民間の設備保守の考え方は、利益を出すために設備保守を切り詰めるか、もしくは料金を値上げする以外にないなどの問題が発生した。
 イギリスで水民営化した結果に付いては『「民間に任せても万事うまくいくわけではない」を証明したイギリスの民営水道テムズ・ウォーター』[11]がある。
『……
民営化後10年の実績を見ると、技術面などの改善で上水道で18%、下水道で9%の経費が削減され、そのほかに人員削減などによって人件費が17%削減されました。
 2002年、テムズ・ウォーター社のピーター・スポイレット環境技術・環境品質マネージャー(当時)は新聞インタビュー(「京都新聞」2002年12月25日)に「われわれは民営化に成功した」と以下のように答えています。
(水道料金について)「公社時代から水料金は60%値上がりになったが、アップは抑える努力をしているし、施設への投資で水質は向上した。毎年、施設や家庭から200万サンプルの水を採取し、検査を実施している。それに、ヨーロッパ諸国の水道料金を比較して、ロンドンの水は安い」
(施設老朽化について)「漏水が悩みの種だ。パイプが老朽化しているのが大きな原因で、粘土質の柔らかい土質のところではパイプが折れやすい。工事が難しく、工事をすれば水道料金に跳ね返る。漏水率は30%前後で、改善していないのが現状だが、徐々に対策を打っている」
 「民営化に成功した」とはいうものの、実態はさまざまな合理化策が行われたものの、水道料金は上昇し、水質は低下し、漏水件数も減少することはありませんでした。その一方で、株主配当や役員報酬は多額な金額が支払われたことが指摘されています。
……』
水民営化の結果、水道料金は上昇したうえに、設備は老朽化が進み、水質は低下していたのである。
(第三回終了)(寄稿:近藤雄三)
 
参考1「PFI(Private Finance Initiative)とは」
出所:「民間資金等活用事業推進機構」HP


 

[1] 『最重要インフラ「水道」の民営化は本当に必要なのか』https://president.jp/articles/-/59230

[2]  PRESIDENT Online『最重要インフラ「水道」の民営化は本当に必要なのか』 https://president.jp/articles/-/59230?page=1

[4] 「民間資金等活用事業推進会議(第3回)議事要旨」https://www8.cao.go.jp/pfi/kaigi/3kai/pdf/gizigaiyou_03.pdf

[5] 信濃毎日新聞「旧統一教会側に祝電 立民・篠原氏ら3人」 https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2022072201004

[6] 「週刊ダイヤモンド2019年1月19日号掲載の記事について」http://zensuido.or.jp/wordpress/press-release/%E9%80%B1%E5%88%8A%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%892019%E5%B9%B4%EF%BC%91%E6%9C%8819%E6%97%A5%E5%8F%B7%E6%8E%B2%E8%BC%89%E3%81%AE%E8%A8%98%E4%BA%8B%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84/

[7] 「財政投融資改革関連資料」https://www.mof.go.jp/policy/filp/reference/reform_report/index.htm

[8] 「財政投融資の概要2022」www.mof.go.jp/policy/filp/publication/filp_overview/FILP_overview2022.pdf

[9] 首相官邸「郵政民営化の基本方針」https://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2004/0910yusei.html

[10] PPP公民連携.COM『イギリスはなぜ、PFIを止めたのか』https://toyo-ppp.com/infra/110/

[11] 『「民間に任せても万事うまくいくわけではない」を証明したイギリスの民営水道テムズ・ウォーター』 https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/3479be9aa9a9e0ce7fb164fe81d6ae4fbd4a1f61

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