ゆらぎつつゆく

添島揺之歌集。ツイッター感覚で毎日つぶやきます。色調主義とコラボ。

ながめわびぬ秋より外の宿もがな野にも山にも月やすむらむ

2018-01-21 03:05:45 | 古今抜粋

ながめわびぬ秋より外の宿もがな野にも山にも月やすむらむ    式子内親王


新古今からもってきた。式子内親王は感性の優れたかなりの詠み手である。

物思いに凝りてさみしくてたまらない。秋のほかのやどが欲しい。空の月が野にも山にも安らいでいる。

昔も今も、秋というものは人の思いを誘うものらしい。月のように澄み渡った心でいればこんなに思い悩むこともなかろうということだろう。


月影の野にたゆたひてたまゆらのやすらひをこふ寂静の夜    揺之






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凡庸を嘆くもならずその闇に巣をかく蜘蛛に食はれけるかな

2018-01-20 03:06:19 | 

凡庸を嘆くもならずその闇に巣をかく蜘蛛に食はれけるかな    揺之






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あき風の

2018-01-19 03:05:46 | 資料

The autumn wind,
Gusting, reveals the underside
Of trailing creepers’ leaves;
Catching a glimpse into your turncoat heart
How bitter I do feel!

あき風の吹き裏がへす葛の葉のうらみても猶うらめしき哉    平貞文


あき風の吹き裏がへす葛の葉の、までは「うらみ」を呼ぶ序詞だ。
枕詞もあるが、こういう場合は序詞になる。
どういう風に訳してあるか興味を持った。

秋風
一陣の風が葛の葉の裏側を見せる
そのように君の裏切りの心を垣間見た
なんと苦いのだろう!

訳せばこういうところか。おもしろい。
秋風は心変わりをにおわせる。葉の裏を見るようにその心変わりを見る。
原文の技巧の成分が抜けて率直な男の恨みになっている。


花心散らむちぎりもみぬ人の行く末おもふわがうらみかな    揺之







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酒の香に

2018-01-18 03:06:13 | 添削

酒の香に黒髪の香のまじるときふと悲しみを覚えけるかな    吉井勇


よくあることだ。
何かに自分が酔っているかのような時、ふとさみしくなることがある。
それは神のささやきだ。
人間が馬鹿なことをしていると、神がつっこんでくるのである。
それを感じる時、人はふと悲しくなったりさみしくなったりする。
そこで思い直し、酔いから覚めることができるものは幸いであるが。
この作者はそうではないようだ。


杯を持ちて酒宴のかたすみに穴のごとくにわれは目を閉づ    揺之






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六月の風景

2018-01-17 03:05:44 | 絵画


ブルース・クレイン(1857-1937)、アメリカ。

季節は合わないが、麗しい景色だ。
みずみずしく明るい緑が心地よい。
風の匂いすらしそうだ。
毎年、盛り上がっていく初夏の景色を経験できることは、人生の甘い恵みだと思う。


透くほどに明かき緑をあふぎつつ鳥鳴き渡る初夏の空    揺之





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紅梅に

2018-01-16 03:05:52 | 添削

紅梅にみぞれ雪降りてゐたりしが苑のなか丹頂の鶴にも降れる    前川佐美雄


乱雑だ。破調とも言えない。
情景は思い浮かぶが、歌にするならもっと整えるべきである。
何らかの効果を狙っているのかもしれないが、詳細な描写が必要ならば他の形の詩文にするべきである。
短歌はすっきりと整っていることが望ましい。


みぞれ雪降る紅梅を越え見れば苑の鶴にも降りにけるかな    揺之






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刈麦の

2018-01-15 03:05:31 | 添削

刈麦のにほひに雲もうす黄なる野薔薇のかげの夏の日の恋    芥川龍之介


うまい感じがするが、どこか怪しい。

いかにもよいものだという感じがして、痛いものがうごめいている。
おそらく本人の作ではない。

霊的盗作か、それともそれよりもっとひどいものか。
感覚を澄ませて感じてみようとすると、妖気さえ感じて途中でやめてしまう。

背徳が匂う。


夏の野にむごく茂れるのいばらの影にたふれし痴れ者の恋    揺之






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草の穂は

2018-01-14 03:09:33 | 資料

宮沢賢治に興味を持ってみた。

草の穂はみちにかぶさりわが靴はつめたき露にみたされにけり    宮沢賢治


なんということはない歌のように見えるが、読後に鮮やかな感覚が残る。

実際、冷たい露に満たされた靴を履いていた時の感覚がよみがえる。それはさわやかなほどだ。

言葉だけではない。作家が感じた霊魂の感動が染みわたっているのだ。

露に濡れた靴を感じた作者が、そののちに空をも見るような動作さえ思い浮かぶ。この人はこれから試練の道に踏み込んでいくのだ。

作者の大きさを感じる作である。


露むすぶ荒野の草を分けつつもゆふべの空に照る星を見る    揺之




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なつかしい

2018-01-13 03:05:52 | 添削

なつかしい風景のせゐ「まだ好き」と朽ちかけの橋渡つてしまふ    小川真理子


歌の情趣と作者の情感があっていない。

言葉の意味は通るのだが、それに入っているべき本人の情感がないか、うすいのである。

要するに作歌の活動を作者がやっていないのだ。

盗作とまではいかないが、本人が作っているのではないと思われる。

こういうことはもう、だれにでもわかることだ。


苦しきと捨てしこひをもひろはむと朽ち橋を見る昼の静けさ    揺之





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ヴァン・ゴッホ

2018-01-12 03:05:52 | 添削

耳を切りしヴァン・ゴッホを思ひ孤独を思ひ戦争と個人をおもひて眠らず    宮柊二


意趣はわかるが破調がうるさい。

効果的とは言えない。

もう少し整えるべきである。それは技術的に可能だ。


戦場にゴッホの耳はよろづ落ち孤独の群れが野に殺しあふ    揺之






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