TVでビートルズ東京公演についてほんのさわりだったが放送していた。私が19歳の時
で横浜の会社に入社2年目、当時から熱狂的なファンを自負していたから、東京公演と
聞いては心穏やかでいるはずはない。しかし、例え公演があったとしても、チケットを手
に入れるのは至難の業で、行きたいのは山々なれど最初から敗戦が決まっている戦に
臨むようなものだった。
チケットは往復はがきで申し込み、当然のこと応募は多数になるから抽選で当否の結果
を貰うことになり、私も数枚は応募した。今でも外れの往復はがきを持っており、それによ
ると応募総数208,850通の申し込みがあったそうだ。
私の応募した1枚が超ラッキーなことに当選となり、夢にまで見たビートルズの歌を生で聞
くことができるのだ。この応募とは別にLPレコードを購入すると入場券が当たるかも知れな
い、ということで薄給の中からレコードも奮発して購入。当時、寮費なども引かれて手取り
が10000円ちょっとの時代で、チケット代は1500~2100円だったから、結構いい値段がし
ていた。熱意は熱くなり、やがてはこの抽選まで当選を引き当てたのだが、運はここまでだ
った。公演日が先般まで流行っていたダブルブッキングとなり、2回の観賞は露と消えた。
この券はこれまた熱狂的ファンの友人に譲ってあげたから、随分と感謝された。
1回の公演でどれくらいの入場者数か分からないが、警備上のこととしてステージと観客席
の間は随分と空いていたような記憶がある。
当日の東京駅から武道館への道のりは忘却の彼方だが、武道館近くになると要所々に警
察官の検問があり、会場入りするまでに2~3度、通行手形となる入場券の提示を求められ
た。開演まで1時間以上あったのに観客は騒然として落ち着かない様子で、スーパースタ
ーの登場を待ちわびた。当然のこと写真、録音は禁止だろうが私には秘策があり当時、未
だ普及していなかった小型のテープレコーダーを紙袋に忍ばせ、ビートルズの歌を録音す
ることにしていた。
やがて開演となり前座が何やら歌っているが眼中にないから、全く盛り上がらない。観客の
多くは、早く止めてビートルズを出せ・・・・こんな時の前座は辛いだろうと同情申し上げるも、
私もその一員だった。パンフには内田裕也、尾藤イサム、ブルコメ、ブルージーンズ、ドリフ
と記載されているが、僅かにブルーコメッツの歌を覚えている程度で、あとのことは皆無。
ここで小型テープレコーダーの確認をしておこうと、イヤホンでこっそりとチェックをすると、
いい具合に録音されているから、テープを巻き戻しておこうとしたのが悪かった。
係員に見つかってしまい一時没収の憂き目に遭ってしまった。そんな要らんことをしなかっ
たら・・・・・悔いても々・・・覆水盆に返らず
本命のビートルズはガッカリ・グリコ。観客の女性陣のキャーキャーにビートルズの声は消さ
れぎみ、ギターの音はよく聞こえるものの、コンサートバージョンだから手抜き演奏に聞こえ
る。選曲は割と新曲だったが初めてのコンサートだったから、デビュー当時のものを聞きた
いと思っていたのに僅か30分ほどのステージを駆け足で、こなしてしまったようにみえ、折角
のプラチナチケットで夢の公演は期待外れに終わってしまった。
それでも、ジョン、ポール、ジョージ、リンゴの4人を遠くからでも見ることができ満足の心持で
没収されたテープレコーダーを回収しビートルズ東京公演は幕を閉じた。
チケットと注意事項
公式の東京公演グッズ 前座の出演者
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