先日、親しかった友人が旅だった。昨年9月に診断を受けた時、既にステージⅣの胃がんで余命宣告まであった。
近くの臓器への転移もみられ外科処置は不能、抗がん剤治療に全てを託すことになった。理論派で冷静に物事を
判断し家庭を大切にするよき男をがんは狙った。
がんと知ってからも病前と変わらずポジティブな考え方で生に対する執着を語ってくれていた。
私の願うことは只ひとつ、抗がん剤との闘いに負けない体質であってほしいという事、換言すれば追い詰められた
ステージⅣからの脱出への可能性を残す唯一の条件をクリアする。
初期段階でいい兆候もあったようだが願いとは裏腹に副作用からの攻撃を食い止めることに至らず、がんの進行と
相まって食欲減退から食を受け付けず体力を一層削いだ。結果として免疫力の低下を招き予期しない病を併発した。
1年にも満たない間に生涯分の病を抱え込むことなど考えたこともあるまい。
抗がん剤が合わない場合の副作用のことも覚悟の上での治療であったとしても、それは治療を受けてみなければ副
作用の大きさを知ることなどできないから想像以上の苦痛に折れそうにもなったことだろう。治療によって得た生の時
間は副作用とがんの進行で辛いものだったのかもしれないが家族は勿論、彼を見守る人たちにとっても彼の生は欠か
せないものだったから体力を削りながら長らえてくれたものと思う。
苦しい状況でも弱音を吐かず『生き抜く姿』を示すことは残された家族への大切な遺産であろう。
家族の悲しみ、友人の悲しみ、ともに時でしか癒すことはできないかもしれないが、ふと彼の笑顔が浮かんできて一瞬
ながら残酷な現実から解放してくれる。