夕方、用があって知人宅に出掛けると『急ぎの用がなければ、隣の風呂の下にいる
物が何物か確かめて』と頼まれる。昔、狩猟をしていたから闖入者の素性くらいは分
かるのではとのこと。
ユニットバスのバスタブ横に取り外し可能の改め口のようなものがあり、それを取り外
し下の方を覗いて見ると幅40cm、奥行50cm位の黒い物が見える。薄暗いから電池で
よく照らして見ると、たまごを並べたように二つの物体が並んでおり、動物の背中だと
分かった。声を出しても素知らぬ顔で動かないから、大声で騒ぐと、やわら目を覚まし
起きてゆっくりと、その場を離れた。
その時にはっきりと顔が見え、つがいの狸だと判明。声を出しても起きないから、てっ
きりアナグマが冬眠しているのか思った。バスタブの下だから温かく快適に過ごせそう
な場所でもある。そこは2匹の狸が入れるくらいの穴が掘られており、壁の間に入れて
あった断熱材で敷き詰められたデラックスな寝室に作り上げられていた。家の人の話
では、夜に壁の間でガサゴソと大きな音をたてることもあり、猫が爪を研ぐような様だっ
たと言われる。恐らく、断熱材を集めていたのだろう。
狸は野生動物の中でも珍しく夫婦で暮らしている。イノシシは母子暮らし、野ウサギは
単身、アナグマは一家で穴の中で冬眠、この辺りで見かける動物の暮らしぶりだ。こう
して、狸などが棲家にした場所にはダニがいるものだ。野生の動物につくダニの体調
は1mm位の小さいものだが獲物に食いつくと、血を吸えるだけ吸い4~5mmの濃い紫
色の球体のようになる。そうなるとポトリと動物から離れ落ちてしまい、消化後は元のサ
イズに戻り、次の獲物を辛抱強く待つ。縁の下などから床上に上がり今度は人間を標
的にするから始末が悪い。
家の人には、断熱材をきれいに始末しておかないと、こんなことがありますよと知らせて
おいた。町内のもっと奥の方では、床下にイノシシの瓜坊が住み着き、人にすっかりと
慣れてしまったなどの例もあり、野生動物と人との垣根は崩れつつあるようだ。この間の
利害関係はシビアだから、単に慣れているとか可愛いだけでは済まされない。山や田か
ら人が去り、奥地の荒廃は野生動物を里に誘い込む結果となっている。
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