競馬マニアの1人ケイバ談義

がんばれ、ドレッドノータス!

千可ちゃん改2

2014年06月13日 | 千可ちゃん改
「ただいま~」
 千可ちゃんが我が家に帰ってきました。お母さんはまたテレビを見ています。でも、今日は千可ちゃんの顔を見ました。
「千可、おかえり」
 怒ってないときのお母さんはとても素晴らしいお母さんです。でも、千可ちゃんには昨日のトラウマがあるので、何も会話しないまま、そそくさと自分の部屋に行ってしまいました。
 千可ちゃんは自分の部屋に入ると、そのままベッドにごろんとなりました。千可ちゃんが今気になってることは、さっきのビジョン。千可ちゃんは午後の授業中も、帰り道も、ずーっとそのビジョンのことを考えてました。
 そのビジョンは明日廃ホテルの中で起きる出来事を暗示してるようです。じゃあ、なんで浜崎さんは暴れる?。もっとも考えられるのは、浜崎さんに悪霊が取り憑いて、我を忘れてしまったケース。だとすると、先回りして廃ホテルに巣食ってる悪霊どもを退散させてしまえば問題は起きないはず。が、廃ホテルの場所は、千可ちゃんは知りません。しかし、千可ちゃんにはふつーの人では考えられない能力があります。千可ちゃんはふーっと目をつぶりました。

 リモートビューイング。オカルト研究会の4人がまとまって歩いてます。夜なのか、あたりは暗いようです。4人が歩いてる場所は、千可ちゃんの知ってる場所、隣の町です。千可ちゃんはどうやら、数日前のオカルト研究会の足取りを思い浮かべてるようです。
 4人が突如草ぼうぼうの場所で立ち止まりました。そこには仮囲いがあり、その向こう側に廃ホテルらしき建物が見えます。
 千可ちゃんはここでイメージを止めました。
 問題はここから。千可ちゃんが一定以上の超能力を使うと、間違いなくお母さんにバレます。バレたらまた強烈なビンタです。悪霊を追っ払うという行為は、かなり超能力を使うはずです。
 どうすればバレないのでしょうか?。超能力を使っても5時間くらい経っていれば痕跡が消えます。でも、夜外出してなかなか帰ってこないとなると、またお母さんのビンタが飛びます。いっそうのこと、正直にお母さんにすべてを話してしまいましょうか?。いい解決法が見つかりません。ともかく千可ちゃんは、ご飯を食べたら廃ホテルに行くことにしました。

 夕ご飯はふつーでした。ちなみに、千可ちゃんのお父さんは出張が多く、この日も千可ちゃんとお母さんだけで食事でした。千可ちゃんは食べ終わると、自分の食器を流し台に持っていきました。
「ごちそうさま」
 千可ちゃんは横目でお母さんを見ると、こう言いました。
「お母さん、ちょっと買いたいものがあるから、本屋に行ってくるね」
 が、お母さんは座ったまま、いつもとは違う声色を発しました。
「千可」
 千可ちゃんはその一言でドキッとしました。どうやら千可ちゃんの企みは、とっくにお母さんにバレてるようです。千可ちゃんはちょっとおびえてます。
「友達同士が殺し合いしたら困るわね。いいよ、行っておいで」
 思わぬお母さんの発言です。千可ちゃんの顔が急に明るくなりました。そしてお母さんに振りかえって、
「ありがとう、お母さん!」
 千可ちゃんは自転車に乗って、隣町の廃ホテルに向かって走り出しました。

 自転車で廃ホテルに向かう途中の千可ちゃんはとっても上気分です。お母さん公認でオカルト研究会を救うことができるからです。おまけに、お母さんはオカルト研究会のメンバーを友達と言ってくれました。つまり、オカルト研究会に入ってもいいと言ってくれたのです。お母さんのことが気になってなかなか友達を作れなかった千可ちゃんですが、やっとふつーの高校生活を送れるようです。
 しかしです。相手は悪霊です。しかも、悪霊は1体とは限りません。たとえ千可ちゃんの霊能力レベルが最高だからと言っても、悪霊に勝てるのでしょうか?。いやいや、千可ちゃんの能力をみくびっちゃあ、いけませんよ~。

 月のない夜です。近くに街灯が1つありますが、あたりは真っ暗です。そんな廃ホテルの前に千可ちゃんの自転車が到着しました。千可ちゃんが自転車のスタンドを立ててると、さっそく中レベルの複数の悪霊が寄ってきました。しかし、千可ちゃんが振り向きざまかわいいガンを飛ばすと、悪霊たちはびびってしまい、次の瞬間霧散してしまいました。
 千可ちゃんが仮囲いの隙間から中に入ると、廃ホテルの玄関の前で案の定悪霊たちが待ち構えてました。かなりハイレベルな悪霊たちです。7体はいます。中には城島さんに取り憑いていた女の悪霊もいます。何かものすごく曰くありげな廃ホテルです。
 あまりにもハイレベルな悪霊軍団なのに、千可ちゃんはなぜかニヤッと笑いました。これは余裕か?。次の瞬間、悪霊軍団は一斉に千可ちゃんに襲いかかりました。危ない、千可ちゃん!。が…、
 千可ちゃんが気合の一言を叫び白い光を発射すると、悪霊たちはその光を浴び、あっという間に霧散してしまいました。わずか1分足らずの攻防。恐るべき、千可ちゃん!。
 それから千可ちゃんは廃ホテルの中を巡って、まだ残ってる悪霊たちを追い払いました。まあ、すべての悪霊を追い払うことは不可能でしたが、残ってる悪霊はみんなザコです。浜崎さんに憑りつく悪霊はいないはずです。
 千可ちゃんは満足した表情で、自転車に乗って帰りました。かなり気分がいいようで、歌を歌ってます。

 翌日は土曜日、千可ちゃんが通う高校はお休みです。千可ちゃんが約束の時間最寄りの駅前に行くと、オカルト研究会の4人はすでに揃ってました。
「み、みなさん、早いですねぇ」
「みんな、こーゆーことが好きだからねぇ。オカルト研究会では約束の1時間前に集合するという不文律があるんだ」
 と、浜崎会長。
「あ、そうだ」
 と、千可ちゃんが入部届けの用紙を取り出しました。もちろん、千可ちゃんの署名入りです。
「会長さん、これ?」
「えっ?」
「入部届け?」
 オカルト研究会の4人はびっくりです。
「よろしくお願いします」
「あ、ありがとう」
 浜崎さんはその用紙を受け取りました。それを見てた蓑田さんは、
「こ、これでまた部に戻れる…」
 その発言に千可ちゃんはびっくり。
「ええっ?」
「あは、本当のこと言うとね、オカルト研究会はもともと部だったの。でも、4人になって部の最低人員を満たさなくなったから、仕方なく会として活動してたのよ」
 ここまでは浜崎さんの発言。ここからは福永さんの発言。
「会だと学校から活動費が出ないから、部になるとほんと助かるだ」
「あは、そうだったんだ」
 千可ちゃんはちょっと苦笑いです。
 パスが来ました。出発です。

 バスの中、オカルト研究会改めオカルト研究部は、後ろの方に陣取りました。千可ちゃんの後ろに座った浜崎さんは、なんか千可ちゃんの頭髪が気になってます。
「あなた、なんでこんなに髪の毛、短くしてるの?」
「あは、すごいくせっ毛なもので、あまり伸ばせないんですよ」
「へ~、私と一緒だ」
 と、浜崎さんは両手を後頭部に回しました。すると、なんと、美しくカールしたロングヘアが取れてしまったのです。実は浜崎さんは千可ちゃん同様くせっ毛で、そのせいで髪の毛を伸ばすことができないので、ウィッグを使ってました。千可ちゃんは関心しきりです。
「ふぁ~」
「どう、羽月さんも使って見る?」
「い、いいんですか?」
「いいわよ、入部してくれたお礼に、1つ上げるよ」
「あ、ありがとうございます」
 千可ちゃんの目がキラキラ輝いてます。実は千可ちゃんは、ロングヘアに憧れてたのです。もし自分がロングヘアだったら、男の子にモテモテになれると信じてます。ま、もともとちっちゃいんだから、ロングヘアにしてもあまり意味がないと思いますが。

 オカルト研究部の5人がバスを降りました。そこはちょっとした商店街。千可ちゃんがリモートビューイングで見た場所です。ただし、リモートビューイングで見た光景は夜でした。と、千可ちゃんは思わず口にしてしまいました。
「今日は昼間なんですね。この前は夜だったのに」
 その一言に蓑田さんが反応しました。
「あれ、なんで夜行ったこと、知ってるの?」
 福永さんも浜崎さんも城島さんも気になりました。千可ちゃんは心の中でやばいと思いつつ、ここはごまかすことに。
「この前話したじゃないですか。夜行ったって」
 浜崎さんはさらに疑問が増したようです。
「誰が言ったの?」
「城島さん」
「え、私?」
 突然の指名に城島さんはびっくり。
「ほら、2日前、城島さんの家で」
 城島さんは千可ちゃんに介抱されてるシーンを思い浮かべました。
「あの時かなあ…」
「あの時ですよ」
 城島さんはまだ疑問に思ってますが、他の4人は納得したようです。でも、城島さんはあのとき「廃ホテルに行った」とは言いましたが、「夜廃ホテルに行った」なんて一言も言ってませんよね。

 小さい商店街を過ぎると、5人は右に曲がりました。そこから約1km,ようやく廃ホテルが見えてきました。昼間見ても何か出てきそうな廃ホテルです。
「どう、羽月さん、何か見える?」
 城島さんが千可ちゃんに問いかけてきました。
「だから、私は霊能力者じゃありませんって!」
 城島さんは心底千可ちゃんが霊能力者だと思ってます。が、実は他の3人はかなり懐疑的なようです。
 蓑田さんがビデオカメラを取り出しました。
「よーし、今日こそは絶対幽霊を録るぞーっ!」
「ビデオカメラですか?」
 この千可ちゃんの質問に、今度は福永さんが答えました。
「この前ずーっとこのビデオで撮影してたんだけど、なぜか初めの部分しか映ってなかったんだ。ちゃんと録画したはずなのに」
 千可ちゃんはここでピーンとひらめきました。
「今日は私が録りましょう!」
「えっ?」
「こーゆーときは、新人が録るものですよ」
 と、千可ちゃんは蓑田さんからビデオカメラを受け取りました。そして録画方法を蓑田さんから手短に教えてもらいました。
 実はこれは、千可ちゃんの作戦です。昨日千可ちゃんが追っ払った悪霊が戻ってきているかもしれません。また、千可ちゃんの襲撃を隠れて交わした悪霊がいる可能性もあります。そんなのがビデオカメラに映るとまずいので、幽霊が見える千可ちゃんが悪霊を避けて撮影する気なのです。
 でも、廃ホテルに悪霊の気配はまったくありませんでした。5人で廃ホテルの中をくまなく歩きましたが、千可ちゃんの目には、ザコ以外の悪霊は映りません。もちろん、千可ちゃんがリモートビューで見た浜崎さんの暴走はありませんでした。
 5人が廃ホテルの玄関前に戻ってきました。
「どう、何か映ってる?」
 と、福永さんが千可ちゃんが持っていたビデオカメラを受け取りました。さっそくビデオカメラに内蔵されてるミニ液晶画面で再生。それを福永さん、浜崎さん、蓑田さん、城島さんが見てます。
「今回はちゃんと録画されてる」
 この発言は福永さん。蓑田さんがそれに答えました。
「きっと何か映ってるはず。大画面のテレビで見れば…」
 ここから別の意味でがすごいことが発生しました。バスで来たんだからバスで帰るものと思ってたら、なんと浜崎さんがスマホでタクシーを呼んだのです。しかも2台。前の1台は福永さんと蓑田さんと城島さんが乗り、後の1台は浜崎さんと千可ちゃんが乗りました。
 車中、福永さんたちはずーっと幽霊のことを話してました。が、浜崎さんと千可ちゃんは、なぜかウィッグの話をしてました。浜崎さんと千可ちゃんは話が弾んでるようです。