競馬マニアの1人ケイバ談義

がんばれ、ドレッドノータス!

千可ちゃん改3

2014年06月15日 | 千可ちゃん改
 2台のタクシーが豪邸の前に停まりました。ここは浜崎さんの家のようです。なんとも立派な家です。千可ちゃんはその豪邸を見て、思わずぽか~んと口を開けてしまいました。
 しかし、浜崎さんはすごい人です。身長は170cmはあるし、美人だし、ウエストは細いけど胸は立派だし、家は大金持ちだし、髪の毛以外は完璧女性です。
 オカルト研究部の5人が豪邸の中にある部屋に入りました。ここは浜崎さんの部屋のようですが、10畳はありそうな広い部屋です。千可ちゃんはまたもやぽか~んとしてます。しかし、福永さん・蓑田さん・城島さんはそんなことはてんで興味がないようです。さっそく部屋の隅にあるテレビにビデオカメラをつなぎました。60インチくらいはありそうな巨大なテレビです。この巨大な画面で幽霊を探すようです。再生開始。
「こ、これ、霊じゃない?」
「ただの染みよ~」
「あ、これは?」
 と、3人は忙しいようです。
 一方浜崎さんは、千可ちゃんにたくさんのウィッグを見せてます。
「これはどうかなあ」
 浜崎さんはウィッグを順番に千可ちゃんに被せてます。そのたびに千可ちゃんは目をらんらんと輝かせてます。しかし、これでは千可ちゃんは着せ替え人形です。ま、千可ちゃんが喜んでるんだから、いいのかもしれませんが。
 浜崎さんが一通り千可ちゃんの頭にウィッグを被せたようです。
「どう、羽月さん、どのウィッグがよかった?」
「ええ。え~と…」
 千可ちゃんは黒髪で艶のあるストレートの超ロングヘアのウィッグを選びました。
「これがいいです」
「えっ? それでいいの」
「はい!」
 浜崎さんは個人的にはカールした髪が好きなので、これは意外に感じたようです。浜崎さんは千可ちゃんが選んだストレートのウィッグを千可ちゃんに被せました。
「う~ん、こんなものかな?」
 長身の浜崎さんがこのウィッグを被ると肩甲骨あたりで髪が止まりますが、ミニミニな千可ちゃんが被るとお尻くらいまで伸びてしまいます。でも、ロングヘアに憧れていた千可ちゃんには、夢のアイテムになったようです。

「会長、幽霊いないみたいです」
 この福永さんの発言で浜崎さんの目がようやくテレビの方に向きました。
「もう、私、部長になったんだってばさぁ!」
 浜崎さんもテレビの前に座りました。で、早回し、コマ送りと、ビデオカメラを操作しました。
「あ~、やっぱりいないのかなぁ~」
 ここで千可ちゃんが城島さんの横に座りました。いきなり長髪になった千可ちゃんに気付いて、城島さんがびっくりしてます。
 浜崎さん・福永さん・蓑田さんの会話が続いてます。まず、福永さんの発言。
「私,この前行ったとき、何かを感じたんだけど、今日は何も感じなかった。やっぱ夜じゃないとダメなのかなぁ…」
 浜崎さんはビデオカメラを床に置きました。
「そんなことはないと思うけど…。もしかしたら誰かが来て、追っぱられた…」
 ここで城島さんが大声で発言しました。
「わかった、羽月さんだ!、羽月さんが悪霊を追っ払ったんだ!」
「ええ~」
 千可ちゃんはびっくりです。先日除霊したときと同じ、見事な的中だったからです。しかし、福永さんと蓑田さんは呆れてます。
「城島さん、それはいくらなんでもムリよ!」
 これに千可ちゃん自身が追い打ちをかけました。
「そうですよ。私、あの廃ホテルに行ったのは、今日が初めてなんですよ!」
 と、ちょっと城島さんは反省してるようです。
「そ、そっか…」
 しかし、城島さんも意外と負けん気が強いようです。
「で、でも、羽月さんには霊能力が!」
「だから~、私には霊能力はありませんって!」
「ま、このへんにしておきましょっか」
 と、浜崎さんの一言でこの話題は終了しました。でも、城島さんは内心、まだ納得がいってないようです。
 このままオカルト研究部の会合はお開きとなり、みんなが部屋を離れました。福永さんと蓑田さんと城島さんは、なんとここまで自転車で来てたようです。この3人はそのまま自転車で帰路につきました。千可ちゃんは浜崎さんがタクシーを呼んでくれると言いましたが、遠慮し、バスを乗り継いで帰ることにしました。
 最後に、浜崎さんは千可ちゃんに紙袋を手渡しました。
「はい、これ」
 中にはあのウィッグが入ってます。
「ありがとうございます!」
 と、千可ちゃんは輝いた目でそうあいさつしました。
「いえいえ」
 こうして千可ちゃんも帰路につきました。

 しかし、です。実は帰路につかなかった人が1人いました。城島さんです。城島さんはビデオに悪霊が映ってなかったことに合点がいってないようです。で、あの廃ホテルに自転車を走らせてます。でも、心霊スポットには1人でいかない方がいい場合もあります。待ち受けてるのは幽霊だけとは限りませんからね。
 陽がかなり傾きかけたころ、城島さんが廃ホテルに到着しました。さっそく仮囲いの隙間から侵入。やはり人気はありません。城島さんは玄関の壊れた自動ドアから中に入りました。
 廃ホテルの廊下、ケイタイの動画機能を使いながら歩く城島さんの姿があります。で、撮影が終わると、さっそく再生。それを凝視する城島さん。
「いない…」
 やはり何も映ってないようです。と、その城島さんの背後に人影が?。その人影がいきなり右手を伸ばし、城島さんの口に。城島さんは一瞬抵抗しようとしましたが、すぐに気を失ってしまいました。この右手の持ち主は20歳くらいの男です。右手には何か液体を染み込ませたハンカチを持ってます。何かすごく嫌な予感がします。

「ただいま~」
 千可ちゃんが自宅に帰ってきました。千可ちゃんは急いで自分の部屋に入ると、さっそく紙袋の中からウィッグを取り出しました。艶やかでロングな黒髪のウィッグ。もう千可ちゃんの目は輝いてます。
「憧れのロングヘア…、オカルト研究部に入ってよかったっ!」
 さっそく千可ちゃんは、そのウィッグを頭に装着しました。そして姿見の前に。右を向いてポーズ。左を向いてポーズ。正面を向いてポーズ。千可ちゃんはとっても上機嫌です。
 しかし、どうもどこか変です。そう、ちょっとずれてるのです。千可ちゃんは一度ウィッグを外し、もう一度装着。でも、まだずれてます。で、もう1回外して、また装着。が、今度はひどく不格好になってしまいました。髪の毛が千可ちゃんの顔に被ってます。
「う~ん…」
 千可ちゃんはちょっと困ってしまいました。浜崎さんにもっとウィッグの付け方を教えてもらえばよかったなあと後悔してます。その瞬間、千可ちゃんの身体に嫌な衝撃が走りました。
「な、なに、この嫌な感覚は?」
 千可ちゃんはその嫌な衝撃の正体を知ろうと、ふーっと目をつぶりました。リモートビューイングです。

 ここはちょっと高級なマンションの部屋のようです。ベッドの上に城島さんが寝かされてます。しかし、口はタオルのようなものでふさがれ、両手両足はそれぞれロープでベッドの端に結ばれてます。つまり、大の字状態。城島さんはなんとか逃げようと身をよじってますが、まったく動けません。
 ドアが開き、男が1人入って来ました。廃ホテルで城島さんを拉致った男です。男の手には大きなナイフがあります。男はそのナイフを城島さんに見せつけました。
「へへへ」
 城島さんは恐怖で顔がひきつってます。
「う…、ううぅ…」
「さぁて、いただくとしますか」
 と、男は城島さんのスカートの中に手を入れました。抵抗しようと激しく身体を捻る城島さん。と、口を覆っていたタオルが外れました。
「や、やめてーっ!!」
「うるせーよっ!!」
 男は城島さんの顔面を1発殴りました。これで城島さんは抵抗をやめてしまいました。覚悟を決めてしまったようです
「へへ」
 男は城島さんの両足を縛るロープを2本、ナイフで切りました。
 千可ちゃんはこの光景をリモートビューイングで見てます。
「き、城島さん…。な、なんとかしないと…」
 ここで千可ちゃんはレイプ魔を呪い殺すことを考えました。千可ちゃんは普段からお母さんに人を呪うなと散々言われてますが、今はこれしかないと自分に言い聞かせました。
 千可ちゃんは一心に祈り、そして一言つぶやきました。
「死ね!」
 ドックン。その瞬間、男の心臓に衝撃が走りました。
「うう?」
 が、男にそれ以上の変化はありません。
「なんだ、動悸か?」
 千可ちゃんはとても残念がってます。
「く…」
 千可ちゃんは再び「死ね」とつぶやきました。が、今度はまったく何も起きませんでした。もう千可ちゃんにできる手は何もありません。千可ちゃんは両手を合わせ、祈りました。
「神様、お願い、城島さんを助けて!」
 と、千可ちゃんの部屋のテレビがふいにつきました。そこには今城島さんをレイプしようとしている男の姿が映ってます。
「城島さん!?」
 千可ちゃんは反射的に城島さんを助けようと、その画面に触れました。すると指先が画面の中に入ったのです。その瞬間まるで池の中に手を突っ込んだような波紋が画面に広がりました。千可ちゃんは一瞬はっとしましたが、今はためらってる隙はありません。このままテレビの中に突入することにしました。

 ついに男が城島さんのパンツが脱がし、スカートの中から引きずり降ろしました。
「へへへへ。
 ん?」
 男がふと何かを感じ、そして振り向きました。すると、ついてないはずのテレビがついてるのです。しかもそこには、長髪の女の子がどアップで映ってます。そうです、これは千可ちゃんです。でも、ウィッグの長髪が顔を覆っているので、かなり不気味な状態です。
「ひゃあ~…」
 男は腰を抜かしました。なんとテレビ画面から千可ちゃんの指が出ているのです。さらに画面から両手がぬーと出てきました。
「うわ、は…」
 男は腰を抜かしたまま、後ずさりしました。ついには千可ちゃんの前頭部が画面から抜け出てきました。かわいい千可ちゃんは睨んでもあまり怖くはないのですが、このときは長髪の隙間から目が見えてる状態。これは凄味があります。
「うぎゃあ~!!」
 ついに男は駆け出し、そのままドアを開け、部屋を出ていってしまいました。この悲鳴を聞いて城島さんははっと我に帰りました。
「な、何が起きてるの?」
「城島さん…」
 城島さんがその声のした方向を見ると、そこにはテレビから上半身まで身体を出した千可ちゃんがいました。ただし、長髪のウィッグが千可ちゃんの顔を隠してるので、悪霊の襲撃にしか見えません。
「うぎゃあ~!!」
 城島さんは泡を吹いて失神してしまいました。
「ああ、城島さん!!」
 と、千可ちゃんが目の前にある床に手をつきました。しかし、この部屋のテレビはラックの上にあります。千可ちゃんは床に手をついたつもりが、そのまま落下。顔面を真実の床にしたたかに打ちつけてしまいました。ああ、千可ちゃんの両目がなると状態。魂も抜けて行ってしまいました。が、千可ちゃんはすぐに目を開けました。
「そ、そうだ、城島さん!」
 千可ちゃんが城島さんがいるベッドに行くと、城島さんはまだ泡を吹いて失神したままです。千可ちゃんは城島さんの両肩を揺らしました。
「城島さん!」
 が、城島さんは目を開けません。千可ちゃんは足元に落ちてるナイフを拾い、城島さんの両手を縛っているロープを切りました。そしてまた、ナイフを握ったまま城島さんの肩を揺さぶりました。
「城島さん!、城島さん!」
「う、う…」
 やっと城島さんは目を覚ましてくれました。が、ナイフを握った長髪の千可ちゃんを見て、また暴れ出しそうです。
「うぎゃ~!!」
 千可ちゃんは慌ててウィッグを取り、
「私ですよ!。羽月です!」
「は、羽月さん?…」
 と、城島さんの目にうるうると涙があふれてきました。そして、わ~と泣きだしました。千可ちゃんはそんな城島さんを抱き締めました。
「大丈夫です。ちゃんと貞操は守られてますよ!」
 でも、城島さんはしばらくは泣きやむことはありませんでした。

 遠くの方でサイレンが鳴ってます。パトカーと救急車のサイレンのようです。そのサイレンがどんどん近付いてきます。千可ちゃんはカーテンを開け、下界を見ました。ここは10階くらいの位置にありますが、このマンションの下の方にパトカーと救急車と消防車が集まって来てます。あたりはすでに夜です。
 城島さんはベッドに腰掛けてます。なんか、ちょっと震えてます。
「な、何が起きてんの?…」
「わかりません。私たちを助けに来たのかも」
 と、いきなり玄関の呼び鈴が鳴りました。はっとする千可ちゃん。
「だれ!?」
「私よ。開けて!」
 それは千可ちゃんのお母さんの声です。
「お母さん?」
 千可ちゃんは玄関のドアを開けました。そこには千可ちゃんのお母さんが立ってました。お母さんは千可ちゃんのほおに1発ビンタを与えました。ただ、この前みたいな勢いはなく、千可ちゃんの身体は床を転がることはありませんでした。千可ちゃんは張られた頬を押さえ、
「ご、ごめんなさい…」
 お母さんはそんな千可ちゃんを無視して、部屋の中に入りました。お母さんは城島さんの前で腰を降ろし、城島さんと視線の高さを合わせました。
「私は羽月の母よ。立てる?」
「はい」
 城島さんは立ちました。