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ちまちま中間手続23

2024-10-13 21:54:35 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続23


拒絶理由
進歩性 36条

意見書
 本願発明の触媒は、・・・族の少なくとも一つの金属と、・・・族からなる群より選ばれる少なくとも一つの追加金属とを含有する担体を含んでおり、かつ、この担体は、リチウムおよびカリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの金属を、少なくとも一部アルミン酸リチウム(LiAl5O8および/またはLiAlO2)またはアルミン酸カリウムの形態で含有するものである。本願発明の触媒は、担体がリチウムおよび/またはカリウムの金属を、アルミン酸リチウム(LiAl5O8および/またはLiAlO2)またはアルミン酸カリウムの形態で少なくとも一部含有するので、酸素を含んだガス下に触媒を加熱する工程を含む燃焼により、金属性粒子の塊を形成するという問題を生じることなく、カーボンをほとんど全て除去することができ、これにより、炭化水素の転換操作等に使用された後の触媒を簡単に再生することができる。このような効果は、担体が含有するアルミン酸塩が他の形態であった場合には得られるものではない。また、このようなアルミン酸塩は、リチウムおよびカリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの金属を担体に担持させた後、・・・族金属および前記追加金属を導入する前に600℃超の温度でカ焼することが必須であり、この操作を行うことによってのみ得られるものであり、600℃に満たない温度でカ焼しても上記のアルミン酸塩の形態を得ることができない。

 引用文献1には、・・リチウムをアルミナ担体に担持させた後にこれを600℃超のカ焼工程に付すことについては全く触れていない。むしろ、引用文献1によると、第3頁右欄第34行には、約1000°F、すなわち538℃で加熱することが記載されており、これは、本願発明に規定する600℃超のカ焼温度よりも低い。さらに、引用文献1には、リチウムを担持させたアルミナ担体をカ焼工程に付してもよいとは教示されていない。このことは、引用文献1によると、第4頁左欄第2行~4行において「カ焼は、貴金属と錫化合物との両方が担体に適用された後に実施されるべきである」との記載から明らかである。この一文を読むと、当業者は、カ焼は、リチウム化されたアルミナを調製するために必ずしも必須ではないと理解し、リチウムが担持されたアルミナ担体を600℃超のカ焼工程に付せば非常に良好な触媒性能を得ることができることに想到することもない。本願においては、その比較例に示すように、600℃に満たないカ焼工程では、本願請求項1で示すようなアルミン酸リチウムが形成され得ず、このために、同じ元素が同じ量で存在した場合であっても、脱水素化において得られる触媒性能が600℃超でカ焼した(アルカリ金属を担持させた後のカ焼)場合に得られたものほどには良好ではないことを確かめている(本願明細書の実施例1および2を参照のこと)。これらの結果は、当業者にとって自明のことではない。

 引用文献2には、アルミナにアルカリ溶液を含浸させた後に空気カ焼することは開示されているが、本願発明の特徴である「600℃超の温度のカ焼工程に付す」ことについては記載されていない。本願発明においては、その比較例に示すように、600℃に満たないカ焼工程では、本願発明で示すようなアルミン酸リチウムが形成され得ず、このために、同じ元素が同じ量で存在した場合であっても、脱水素化において得られる触媒性能が600℃超でカ焼した(アルカリ金属を担持させた後のカ焼)場合に得られたものほどには良好ではないことを確かめている(本願明細書の実施例1および2を参照のこと)。これらの結果は、当業者にとって自明のことではない。

 引用文献3は、「アルミン酸塩」である点を教示しておらず、引用文献3のスピネルは、アルミン酸リチウムには相当しないので、引用文献3には本願請求項1と同一の組成物は存在しない。また、引用文献3は、当業者の立場からは、本願請求項1の触媒を示唆しているともいえない。

 引用文献4には、化学式LiAl5O8および/またはLiAlO2で表されるアルミン酸リチウムまたはアルミン酸カリウムを使用することが開示されていない。引用文献4で記載されている第II族金属はアルカリ土類金属に属する。したがって、引用文献4は、本願の触媒組成物を開示も示唆もしていない。

 引用文献1および引用文献2のいずれにも、アルミナにリチウムおよび/またはカリウムを担持させた後、VIII族金属および追加金属を導入する前に600℃超のカ焼工程に付すことは記載されておらず、したがって、引用文献1または2に記載された担体は、リチウムおよび/またはカリウムの金属を、アルミン酸リチウム(LiAl5O8および/またはLiAlO2)またはアルミン酸カリウムの形態で少なくとも一部含有するものではない。本願発明の触媒は、アルミナにリチウムおよび/またはカリウムを担持させた後、VIII族金属および追加金属を導入する前に600℃超のカ焼工程に付すことにより非常に良好な触媒性能を有することを得ることができる。このことは、本願明細書の実施例2において明らかである。また、併せて、本願明細書には実施例1において、上記のようなVIII族金属および追加金属導入前の600℃カ焼工程を経ない場合には、同じ元素が同じ量で存在した場合であっても、本願の触媒ほどには良好な性能が得られないことも明らかにしている。よって、VIII族金属および追加金属導入前の600℃カ焼工程を経ない引用文献1および2では、本願発明に記載するような、リチウムおよび/またはカリウムの金属を、少なくとも一部アルミン酸リチウム(LiAl5O8および/またはLiAlO2)またはアルミン酸カリウムの形態で含有する担体を有する触媒を得ることはできないので、引用文献1と引用文献2を組み合わせても本願発明に想到することは容易ではない。

36条について、省略

特許査定

「600℃超」の規定で押し切って登録を得た。数値限定は、登録可能性を下げるものであって、あまりお勧めはできないが、今回は、やむを得ない事情もあった。

本件は、物の構造的には、「少なくとも一部アルミン酸リチウム(LiAl5O8および/またはLiAlO2)またはアルミン酸カリウムの形態で含有するもの」により効果が得られるものであるが、「少なくとも一部」が明確でない、との指摘がされるおそれがあったため、温度600℃のほうが明確に限定できるだろう、との意図。プロダクトバイプロセスの考え方の適用でよいのかな、と思っている。


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