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ちまちま中間手続26

2024-10-26 21:11:43 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続26

拒絶理由通知
新規性・進歩性・29条の2
 引用文献1には、還元剤添加と加熱処理の併用が記載されている。 
 また、引用文献2には、還元剤を含むヒ素化合物の除去薬剤が開示されている 。

意見書
 引用文献1の還元剤としては、炭素、硫安が例示されているが、水素化物、ヒドラジン、ジイミド、アルデヒドおよび糖類は、開示されていない。 
 引用文献2には、クロム等の有害金属を封入するための組成物が開示されており、その組成物中には、砂糖、セルロース、炭水化物等の還元剤が含まれることが記載されている。 
 しかしながら、引用文献2は、還元剤による有害金属の還元作用を一部に含んでいるが、最終的には、有害金属を封入するためのものであり、ヒ素を揮散させる本願発明とは全く異なっている。 
 したがって、引用文献1および2と本願発明とは全く異なっているので、本願発明は新規性を有し、特許法第29条第1項第3号の要件を満たしている。

 進歩性
 引用文献1で用いている還元剤としては、炭素、硫安が例示されているのみであり、この記載に基づいて、本願発明の「水素化物、ヒドラジン、ジイミド、アルデヒドおよび糖類」から選択される還元剤に想到することは容易ではない。 
 引用文献2の組成物は、還元剤を含んでいるが、最終的には有害金属を封入するための組成物ものであるので、本願発明のように、ヒ素化合物を揮散させることは引用文献2に基づいて容易に想到することはできない。 
 引用文献3には、アルミニウム精錬灰を還元剤として添加するとともに、このアルミニウム精錬灰の他に、木炭、石炭、コークス等の還元剤を用いる固形廃棄物の無害化処理方法が開示されている。 
 しかし、引用文献3の方法では、固形廃棄物中に含有される有害な6価クロムを還元剤の作用により還元して低原子価クロムにすることが記載されているだけであり、引用文献3の記載に基づいて、本願発明のように「ヒ素を揮散させる」ことは容易に想到できることではない。 
 引用文献4には、水素ガスの存在下、200~400℃で触媒と接触させることにより 芳香族ハロゲン化合物を処理する方法が開示されており、水素ガスの供給源として土壌中に添加されて用いられるでんぷんまたはショ糖が例示されている。 
 しかしながら、引用文献4の方法では、土壌から揮発してくる芳香族ハロゲン化合物と、同じく加熱による分解により土壌中から発生してくる水素とを気相にて反応させるものである。これに対して、本願発明では、土壌中に存在するヒ素を土壌中にて還元剤の作用により還元させ、その後に、還元されたヒ素を揮散させるものであり、還元剤を用いる点で共通していても作用機構は全く異なっている。すなわち、でんぷん等に水素を発生させる能力が知られていたとしても、「土壌中のヒ素を還元することができる」ということは引用文献4の記載から想到することは不可能である。 
 したがって、本願発明は、引用文献1~4の記載に基づいて容易に想到することができるものではなく、進歩性を有し、特許法第29条第2項の要件を満たしている。

 本願発明では、水素化物、ヒドラジン、ジイミドおよび糖類からなる群より選ばれる還元剤を用いており、固形体であるので、引用文献5の水素等の還元性ガスとは異なっている。 
 したがって、本願発明と引用文献5に記載された発明とは同一ではないので、本願発明は特許法第29条の2の要件を満たしている。

拒絶査定
 出願人は平成18年2月1日付け補正書により還元剤を特定しているが、先の拒絶理由で示した引用文献1に記載の発明では特に還元剤を限定しているわけではなく、さらに糖類が還元剤となることは引用文献2及び4により公知であるから、引用文献1に記載の発明において、当業者が還元剤という観点から公知の糖類を採用することに特段の困難性があるとは認められない。 
 また、本願明細書の記載を検討しても、出願人が特定する還元剤を採用したことにより格別予期し難い顕著な効果が奏されているとも認められない。 
 したがって、先の拒絶理由は撤回しない。

まだまだ力不足だった時代の失敗例

発明者視点からの相違点を発明者から示してもらいながら、実務専門家視点からの攻略ポイントを示せなかった。

本件の進歩性のポイントは、文献の組み合わせによる進歩性否定

このような場合は、主文献との相違点を徹底して検討することが大事

本件の場合、主文献と本件の選択すべき還元剤に相違点があった。主文献の立場から本件の還元剤を選ばないだろう、という観点から追及すべきであった。

具体的には、本件の特徴は、還元処理後の「ヒ素」を飛散させる点にある。

本件により選択した澱粉等ならば、還元処理後に残ったもの未反応のものも加熱処理によって分解して気化するので、ヒ素の飛散の邪魔にならない。

主文献にはそういった観点はないのではないか。それならば、副文献を組み合わせる動機付けはないだろう、と結論づけることもできたのではないか。



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